医療経営士からの実践報告!病院改善ケーススタディー
地域医療連携センターの強化で
入院依頼を増加し入院患者獲得を
医療法人恒昭会藍野病院で地域医療連携センター長を務める梅本豊氏は、病院の生存戦略として入院依頼の増加と入院患者獲得に取り組んだ。2024年度の第7回「医療経営に関する研究助成」における懸賞論文「日本医療経営実践賞」の優秀賞を受賞した梅本氏による記念講演より紹介する。
病院が淘汰される時代
地域医療連携センターの役割
当院は大阪府北部茨城市と高槻市の市境に位置しており、一般病床356床、精神病床552床の計908床を有しています。新規入院患者の割合は外来患者24%、紹介患者76%で、入院依頼割合は病病連携が約7割、そのほとんどが急性期病院で占められており、当院は、急性期病院の後方支援病院に位置づけられます。
地域医療構想による病床削減や平均在院日数短縮による医療費削減が推進され、今後、病院が淘汰されていくことが予測されるなか、当院が競争を生き残っていくためには入院患者を獲得していかなければなりません。
しかし、当院の主な入院経路の一つである外来患者の新入院患者数は、新型コロナ感染症の影響で月平均84件から52件と大きく減少。さらに、2024年4月からは働き方改革の影響で土曜日の外来診療が休診となったため、今後、外来からの急激な入院患者の増加は見込めません。
こうした状況下で当院が存続していくためには、紹介患者の入院依頼の増加を図りながら入院患者獲得につなげていかなくてはなりません。
そのために、地域医療連携センターは何をすべきか。まず、入院依頼の増加や集患に向けては、地域(外部)への働きかけが必要と考え、業務のデータベース化と渉外戦略の構築を行いました。次に、入院患者獲得においては院内(内部)へのアプローチが不可欠であることから、入院決定率向上を目的とした入院受入判定会議および病床管理会議を設置しました。その具体的な内容と結果について報告します。
適切なアプローチで具体的成果につなげた軌跡
地域医療連携センターには、地域の診療所・病院・施設等から入院依頼を含めた多くの声が寄せられます。その情報をデータベース化するため、外部の企業と共同でシステムを開発。これにより入院の詳細を明確に分析することが可能となり、戦略的な渉外活動を行うことができました。
入院目的別件数や診療科別依頼件数といった指標を分析することで、当院に求められている役割を正確に認識。依頼元別件数からどの機関と連携が多いのかを可視化し、連携の再構築、新規開拓など重点的に関係を深めるべき対象を見極めながら渉外活動を実施しました。
特に、主要連携機関とは症例ごとに「連携機関から当院入院までの調整日数」を共有・分析することによって、従来の「紹介をお願いする渉外活動」から「情報を共有し、ともに課題を解決する渉外活動」へ進化させ、入院依頼の増加と入院までの日数短縮に努めました。
こうした渉外活動件数は21年度の534件から23年度では802件まで増加、入院依頼件数もビフォーコロナの月平均179件からアフターコロナの月平均218件まで増加しました(図1)。自院の強みを理解し、地域のニーズを分析し、連携強化を図るべき対象機関を見極めながら戦略的に渉外活動を行ったことがこの結果につながったと考えています。
図1 入院依頼件数がコロナ前以上に増加

一方で、入院依頼が増加しても受け入れ不可となるケースが増えれば地域からの信頼低下を招き、結果として逆効果となります。そのため、入院患者獲得を効率的に進めるためには院内連携の強化が不可欠。そこで、医局とは入院受入判定会議、看護部とは病床管理会議を開催する体制を整えました。
入院受入判定会議では各診療部長が参加し、「入院受入基準の明確化」「入院受入可否の判断」「主治医・共観医の決定」を行うことで医師個人の入院決定率を上げ、入院受入不可件数の減少を図りました。
また病床管理会議では、看護部に加え医局・管理部・地域医療連携センターなど多職種が参画することで看護の視点と経営的視点を融合させ、効率的な病床運用をめざしました。
その結果、入院受入判定会議開催前には70%であった入院決定率が、開催後には147%まで上昇し、さらに入院患者獲得も、ビフォーコロナの月平均45件からアフターコロナの月平均129件と、約2倍近く増加しました(図2)。
図2 内部への働きかけで入院患者数は倍増

こうした成果は、地域医療連携センターが中心となり、医局・看護部・管理部との直接対話を重ね、病院上席者を巻き込みながら入院決定率向上に取り組み、入院患者獲得までの道筋を構築した結果であると考えています。
今後も地域の声に耳を傾け、社会環境の変化を的確に捉えながら、病院を未来につなぐ役割を果たしていきます。
地域医療連携センターは、入院患者獲得の戦略を通じて病院経営を支え、地域から選ばれ、信頼され、必要とされる病院であり続けるために、挑戦を続けてまいります。(『最新医療経営PHASE3』2026年4月号)
医療経営士3級
梅本豊さん

