マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.23
病院一丸で取り組む
カスタマーハラスメント
<今月のご相談>カスタマーハラスメント対策が義務化されるとはいうものの、患者さんからの苦情・苦言がすべてハラスメントにあたるわけでもなく、線引きが難しいです。今日も受付のスタッフが怒鳴られていましたが、ハラスメント対応の依頼をすべきかどうか悩んでしまいます。
信頼関係構築がポイント
強烈な事案となっては遅い
2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策がすべての企業に義務づけられ、20年12月10日までに施行される予定です。もちろん、病院もこの対応を行うことになりますから、カスハラ発生時の相談体制の整備、方針の周知・啓発など、職員を保護するための体制を整え、利用者への周知を行っていることと思います。
カスハラは「単なるクレーム」ではありません。職場におけるカスハラは、顧客等の言動によって労働者の就業環境が害されることが問題の中心にあります。そして判断は、被害者本人の感じ方だけでなく、同様の状況で「平均的な労働者が看過できない支障を感じるか」という観点が基準になると整理されています。さらに「強い精神的苦痛を与える言動は1回でも就業環境を害し得る」とされています。
しかし、病院ではそこが難しい。医療には「不安」や「焦り」がつきもので、患者さんやご家族の感情が強く出る場面があります。そこに「命にかかわる現場だから」「相手は患者さんだから」と職員が思い込み、“かなり強烈な事案”になって初めて動くというのが現状かと思います。
受付で「いつまで待たせるんだ、お前のせいでますます具合が悪くなっただろう」と怒鳴ったり、名札を凝視して「名前を覚えたからな、SNSで言いふらすぞ」と脅したりするのは“説明不足へのクレーム”ではなく、人格否定・威嚇という要素が混ざり、職員の就業環境を壊し始めていますので、カスハラ対応に動く案件ですね。
医療の提供は患者さんと病院職員との信頼関係の上に成り立つものですから、暴言や暴力、他の患者さんへの迷惑行為など、診療を受けるにあたり医療者との信頼関係を損なうような行為があった場合、診療の継続は難しいと判断して対応すべきです。
安心して医療を提供するため利用者への周知も必要
一方で、カスハラを起こさせない工夫も大切です。患者さんの不安に寄り添う一言を添える声かけや丁寧な案内表示などで患者さんが困らない環境を整え、“火種”を小さくすることもできるでしょう。待ち時間の見える化、待っている時間のすごし方の工夫、遅延理由の簡潔な掲示、説明の標準化、相談窓口の利用しやすさなど、すでに取り組まれていると思いますが、その運用の徹底が効果的でしょう。
迷惑行為などに対する病院としての対応を掲示し、利用する方々に周知することも必要ですね。
何より、職員一人ひとりがカスハラにあたるかどうか、もし発生した場合、どのように対応するかをしっかり理解しておくことも重要なポイントです。患者さんの急変などで医療者を集めるサイン(ドクターコールやコード・ブルーなど)があるように、「カスハラかも」と感じたときにすぐに応援を呼べるサインがあると良いですね。一人で対応せず、病院として対応できるように工夫していきましょう。
応召義務も、患者さんと医療者との信頼関係が喪失していてはその義務を果たせません。ときには、「ご不安なお気持ちは理解します。一方で、職員への侮辱や威嚇にあたる言動はお受けできません」という明確な態度を示す必要もあります。
患者さんに必要な医療を提供するために、職員が我慢し続けるのではなく、安心して医療を提供できる環境を守ることが大切であることを、この機会に再確認しておきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2026年4月号)

