マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.22
病院の社会的使命と働き方の多様性

<今月のご相談>年末年始の長期休暇の後、1月の3連休と休みが多くシフト組みに苦労しました。休日はローテーションで出勤するルールはあるものの交代希望も多く、希望どおりにならないと不満の種になることも。結局、一部スタッフと役職者が勤務することに。5月の連休も、今から憂鬱です。

人の善意や思いやりで組織は成り立っている

24時間365日稼働する病院には「休み」はありません。入院患者さんはもちろんですが、外来診療が休診でも、救急外来での対応はありますし、年末年始も連休も、医療提供体制を維持するのが病院の役割ですね。そうした体制があってこそ、私たち病院職員は「いつでも医療を受けられる」という安心を社会に提供できているのだと思います。

医師や看護師などの専門職だけでなく、医療提供を支える事務職員も交代で休日出勤するのは、病院という職場を選んだ時点で“織り込まれていた前提”だったのではないでしょうか。
通常の土日・祝日でも、子どもの学校行事や家族の都合で休日勤務の交代希望が出ることはあると思いますが、やはり、年末年始はちょっと特別な期間です。なので「休みたい」と思う方も多く、その期間の勤務者に対して「特別手当」を支給して心の負担への労いを表す病院も多いようです。お年玉のようで、ちょっと嬉しいですよね。

一方で最近は、お金よりも「自分の時間」を優先したいと考える人が増えてきました。休みの希望や休日勤務の交代を求める声が増えているのも、自然な流れなのかもしれませんね。
働き方の価値観が変わってきているなか、そうした声が出てくること自体を否定することはできません。ただ、365日稼働する病院という現場ではすべての希望を叶えることが難しい場面もあります。
どこかで調整が必要となり、誰かが勤務に入らなければ現場は回らない……。それもまた現実ですよね。かつては、こうした調整の場面で「仕事なんだから」「みんな平等に」という言葉ですごしてきましたが、それは、納得というよりも現実を飲み込むための言葉だったのかもしれません。

今は、同じ言葉をそのまま口にするのが少し難しく感じられますが、だからといって、「支え合い」を人の善意だけに頼り続けるわけにはいきません。誰かの我慢や無理の上に成り立つ体制は、長くは続きません。
本来、「みんなで支える仕組み」とは、誰かが常に我慢し続けることでも声の大きい人の希望だけが通ることでもないはず。時には譲り合いながら、少しずつバランスを取っていく――。そんな、思いやりの上に成り立つということをみんなで改めて共有していくことが大切なのかもしれません。

仕事とプライベートの両立を考え続ける

今後、事務作業の多くはICTの導入やロボティクスによって軽減されていくので、事務職員の業務には少しずつ余力が生まれ、その分、休みを取りやすくなる可能性もあります。それでも、医師や看護師がいつでも医療を提供できる体制、患者さんを受け入れる体制を整えるためには、どれだけ効率化が進んだとしても、病院という職場は365日、動き続けるのです。
働き方の多様性を認め合う時代ですから、平日・休日の区別だけでなく、たとえば「休日の午前中のみ」とか「15時以降からシフトに入る」など、柔軟な勤務時間を設定するなどの工夫も必要になってくるのだと思います。

「仕事である」という大前提と「生活を大切にしたい」という思い――。その両方をどう両立させるのかを現場ごとに考え続けていくことが、これからの病院には求められているのかもしれませんね。(『最新医療経営PHASE3』2026年3月号)

いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民問企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に「医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」「経営企画部門のマネジメント」(ともに日本医療企画)ほか

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