マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.16
人事の立場から考える
LGBTQ看護師への対応
<今月のご相談>人事課で仕事をしています。看護師の採用面談に同席することもあるのですが、今回、看護部長が「ジェンダーアイデンティティが異なる看護師」の採用を決めました。その後、「院内での対応について相談したい」と声をかけられ、正直、少し戸惑っています。どのように考えていけばよいのでしょうか。
性のあり方は人それぞれ
相談しやすい体制を整える
多様性が尊重される社会へと歩みを進めるなか、LGBTQの職員が看護の現場で働くことも、もはや特別なことではなくなってきています。でも、実際の現場では、「患者さんや他のスタッフにどこまで公表すべきか」「誰にどう伝えるか」など、悩みや戸惑いの声も少なくありません。まず大切にしたいのは、「性のあり方」は人それぞれだということ。そして、そのことを誰に、どこまで話すかは本人が自由に選べるべきだという視点です。「カミングアウト」するかどうかはその人の権利であって、義務ではありません。人事課として考えるべきは、「公表しているかどうか」ではなく「安心して働けるかどうか」です。
一方で、看護の現場には、患者の身体に直接触れるケアが多く含まれていますので、配慮が必要な場面もあります。
たとえば、トランスジェンダーの看護職員が自身の性自認と外見の性にギャップがある場合。すでにホルモン療法や手術を終えて外見も性自認に近づいているなら本人も周囲も受け入れやすいことが多いのですが、そうではない段階では患者側が戸惑うことも少なくありません。「見た目が男性の看護師に清拭や着替えで身体に触れられるのはちょっと……」という申し出もあるでしょう。
そうした場合、職員の尊厳を守りながら、患者さんの気持ちにも配慮しなければなりません。このとき重要なのは、どちらかを優先するということではなく、「双方に配慮した対応」を職場全体で考えることです。本人の希望を尊重しつつ、どの業務をどう担ってもらうかを事前に話し合い、無理のない範囲で業務を調整する。そして、その判断や対応を個人に委ねるのではなく、職場全体で丁寧に支えていくことが大切です。
LGBTQの職員が不安や孤立感を抱えずに働けるよう、相談しやすい体制を整えることも大切です。人事課や管理者たちが正しい知識を持ち、必要に応じて外部の専門家とも連携できる体制を整えることで、職員が「自分らしく」働ける安心感につながります。
職員間での対話
相互理解と傾聴が大切
一方では、患者さんからの相談を受けつける体制を整えておくことも必要でしょう。患者さんの戸惑いなどに丁寧に対応するのはもちろんですが、患者さんから職員に対し、尊厳を脅かすような差別的な言動や要求”があった場合には、毅然とした対応を取ることも必要です。
職員は、医療倫理に基づいた判断を行い、医療者としての専門性を活かした業務を行っていることを、患者さんにも丁寧に伝えていきましょう。
そして何より大切なのは、職員間での「対話」です。LGBTQについての理解は一方的に教えられるものではなく、お互いの思いを共有するなかで深まっていくものです。研修や勉強会ももちろん有効でしょうが、それ以上に、現場での「わかろうとする姿勢」と「聽く力」こそが、信頼関係を育んでくれます。
医療者が専門性を十分に発揮し、「その人らしさ」を大切にしながら患者に寄り添うケアを提供していくために、働く環境を整えるのが事務部門の仕事です。多様性を支える体制を整えていきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2025年9月号)

