マネジメント カウンセリング・ルーム
vol.15
自己評価が「最高」の先輩と
向き合う際に大切にしたいこと
<今月のご相談>主任になって初の人事考課面談です。メンバーには年長者で、看護師としてのキャリアも長い先輩もいるのですが、その先輩の自己評価シートにはすべての項目に「S(最高評価)」の文字が。実際はコミュニケーションに課題があり、職場の雰囲気を悪くする傾向のある方です。どのように面談すれば良いでしょうか。
頭ごなしに否定せず別の視点をそっと差し出す
人事考課は、職員の成果や能力を公正に評価し、適切な報酬を与えるための仕組みです。一人ひとりの役割に応じた業務の成果や、組織の一員としての期待に対する適切なフィードバックの提供は、職員のモチベーションを高める効果もあり、人材育成における重要な取り組みと言えるでしょう。
一般的には、評価基準に則った自己評価と上長評価をもとに個人面談を行い、今後の改善点や期待する成果を示します。そして、この評価面談が昇給や昇進などを検討するきっかけにもなります。
主任として初めての上長評価とのこと、緊張もあると思います。さらに、今回のような場面に直面したら悩んでしまうのも無理はありません。自分よりも経験豊富な方を前にして真正面から意見を伝えるのは、誰にとっても簡単なことではありません。それでも、主任という役割を任されているからには、その責任を、少しずつでも果たしていくことが大切ですね。
すべてに「S評価」の自己採点をつけてくる方には、いくつかの傾向が見られます。その一つが「自分の視点だけで自分を評価している」ということ。ある意味では、自信や自己肯定感の現れとも言えますし、過去の実績に誇りを持っている証しとも言えるでしょう。
だからこそ、面談の場では「間違いを正す」のではなく、「別の視点をそっと差し出す」ような姿勢が大切です。いきなり「すべてが『S』ということはないですよね」と言ってしまえば、相手は否定されたと感じてしまい、態度が頑なになる可能性もあります。
“減点”ではなく“成長”を面談の目的に据える
そんなときは、こんな言葉でスタートしてみてはどうでしょう。
「S評価をつけられたということは、お仕事に対して手応えや充実感を感じていらっしゃるということですよね。私の立場から見える職場の様子についても、少し共有させてもらってもよろしいでしょうか」
相手の自己評価をいったん受け止めたうえで、「別の見え方もある」ということを穏やかに伝えていくことがポイントです。
その際には、抽象的な言葉よりもできるだけ具体的なエピソードを添えると伝わりやすくなります。たとえば、「後輩とのやりとりのなかで少し距離があるように感じているスタッフがいるようです」とか、「ミーティングの場で、他の人が意見を出しにくい空気になってしまうことがあるようです」といった、“誰かを責めるのではなく、チームとしての空気感”に注目したフィードバックが効果的です。
また、面談の目的は“減点”ではなく“成長”のための対話です。ゴールは「評価を下げること」ではなく、「未来への期待を伝えること」だととらえてみてください。
たとえば、こんなふうに言葉をかけてみるのも良いかもしれません。
「これまでのご経験をぜひ、後輩たちに伝えていただきたいと思っています。そのためにも、もっと後輩たちが気軽に話しかけられるような空気をつくっていただけたら嬉しいです」
主任として役割を担うということは、評価を「つける人」になるというだけではありません。多様な視点をもって対話を重ね、チーム全体を育てる人になる――ということでもあります。
あなたの言葉によって先輩に小さな気づきが生まれ、チームの空気が少しずつ変わるかもしれません。今回の面談が、あなたにとっても「話してよかった」と思える時間になることを願っています。(『最新医療経営PHASE3』2025年8月号)

