マネジメント カウンセリング・ルーム
vol.14
安心して意見を出し合い
ストレスを減らしていく

<今月のご相談>ICTによる業務効率化の流れから、患者さん用の説明動画やイラスト入りの説明書、SNSへの配信コメントなど、これまでとは異なる仕事が増えてきました。年配の職員は「できない」の一点張りで若手職員の仕事になっているのですが、できばえに対してあれこれダメ出しをしてくる「先輩」がいて、困っています。

「傷ついた」「イラッとした」は無理に抑えず受け止める

「自分では何もしないのに口だけ出してくる人」というのは、どこにでもいるものですが、あまりありがたい存在ではありませんね。
総務課内でのお困り事ということですが、掲示物作成や動画編集、SNS用のスタッフ紹介のコメントづくりなど、最近はITを活用した“クリエイティブ”な仕事にかかわることが増えてきています。
もちろん、ITスキルやデザインセンスが求められる仕事ですが、それを専門にしているわけではないので知恵を絞り、AIアシスタントの力を借りたり、他院の事例を見て研究したりして工夫を凝らしていることでしょう。

成果物に対して「その文言、センスないよね」「この患者さん用の冊子、ちょっと読みづらい」「もっと見やすい動画にすればいいのに」などといちいち言われれば、嫌な気持ちになるのは無理もありません。しかも「では、次はお願いします」と頼んでも「私にはできないから」と平然と断られ、「できない人はアドバイスもダメなの」「一緒に考えてあげているのに」と開き直られたら、なかなか対応に困りますね。
こんなときはまず、自身が「ちょっと傷ついたな」「イラッとしたな」と感じた気持ちを無理に抑えず、そのまま受け止めてみましょう。業務とはいえ、何かを生み出す作業には自分のアイデアや工夫が詰まっています。それを一方的に否定されるのはやはり、つらいものです。

とはいえ、感情的になるとその後の人間関係がこじれてしまう可能性も。そんなときは、相手の言動の背景を少しだけ想像してみるのも一つの方法です。
たとえば、「アドバイスしてあげているのに」「一緒に考えているつもりなのに」という人は、自分の関わり方に対してある種の“正当性”を感じているのかもしれません。本当は「自分の存在を認めてほしい」「役に立ちたい」という気持ちがあるのに、それをうまく表現できず、結果的に上から目線のような言い方になってしまう、そんな不器用さを抱えている場合もあるのです。

クリエイティブな業務こそ「プロセスと合意形成」が大切

余裕があれば、「なるほど、そこが気になったのですね。具体的にはどんな表現だったら伝わりやすくなると思いますか」と、一歩踏み込んで尋ねてみてください。もし、答えが曖昧だったり「いや、何となく」と返ってきたりするようであれば、それは「単なる印象にすぎない」ということがわかりますし、場合によっては、意外と良いヒントが得られることもあるものです。
また、仕事として行っている以上、成果物は個人のものではなく組織としての品質を担保する必要があります。そのためには、クリエイティブな業務こそ「感覚」ではなく、「プロセスと合意形成」が大切です。
総務課内で意見を出し合うなど、ブラッシュアップする場をしっかりと持つようにしていきましょう。

たとえば、週に一度でも制作物に関するミニ打ち合わせを設け、進行中のものを共有して意見や感想を持ち寄る場を設けると、後からの一方的な批判を防ぎやすくなります。
あらかじめ話し合いの機会をつくっておくことで、「言いたいことがある人」はその場で建設的にかかわれるようになり、意見と責任が曖昧にならずにすみます。

ちょっとした一言に心がざわつくこともあるでしょうが、気持ちへの対処だけを行うのではなく、安心して意見を出し合える仕組みをつくることで、チーム全体のストレスを減らしていくことができます。働きやすい顔場づくりをしていきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2025年7月号)

いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民問企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に「医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」「経営企画部門のマネジメント」(ともに日本医療企画)ほか

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