マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.12
「職場でのことは口外しない」を
病院全体で意識づけしていく
<今月のご相談>病院から3駅ほど離れた街の居酒屋で友人と食事をしていたところ、隣席の会話が聞こえハッとしました。当院の医師や看護師についての苦言で、話しぶりからパート職員さんのようでした。患者さんのことなども話していて、とても嫌な気持ちになったのですが、どうすれば良いでしょうか。
患者さんはもちろん職員にも守秘義務はある
年度替わりには歓送迎会などもあり、会食の機会が増えます。でも、たまたま入ったお店でこんな場面に出くわすとドキッとしますし、嫌な気持ちになりますね。
仕事帰りに仲間たちと面白おかしく職場での出来事を話したくなる気持ちもわかります。でも、病院の話、それも患者さんのことを外で話すのは、医療従事者として絶対にしてはいけないことです。
会話の内容も「○○先生、アイツダメだよね〜、この前もクレーム入っていたよ」「え~、まじで、また呼び出しじゃね」、「△△師長ってさ、◇◇(患者名)の家族に冷たいよね」とか、酒席での気の緩みもあるのでしょうけれど、個人名を出して話すことではないですね。その場で注意しようか迷ったとのことですが、知らない人にいきなり注意をするのは勇気がいるものですし、相手の受け取り方によっては、余計なトラブルになってしまう可能性もあります。
病院に勤める私たちにとって、守秘義務はとても大切なものです。患者さんの情報を外で話さないのは当然ですが、職員のことについても同様に守秘義務があるのです。
職場の人間関係だけでなく地域の信頼を損ねることも
飲食店や電車のなかなど、私たちが「気を抜いてしまいがちな場所」には誰がいるかわかりません。すぐ近くに患者さんやそのご家族がいるかもしれません。自分のことを話されているのを偶然聞いてしまったら嫌な気持ちになるでしょうし、患者さんの気持ちを傷つけてしまいます。また、地元の病院の医師や看護師などの医療従事者が同じ病院の職員から粗雑な扱いを受けていたら、聞いたほうはどう感じるでしょう。「あの病院は大丈夫なのかな」と不安になったり不信感を抱いたりするかもしれませんし、病院の評判にもかかわる問題になります。
また、職場の人間関係にも影響が出ることもあります。病院で働く以上誰もが忙しく、それぞれの立場で悩みやストレスを抱えていますが、その場にいない人のことを話してしまうと、後で「こんなことを言われていた」と耳に入ってしまうこともあります。それが原因で職場の雰囲気が悪くなってしまうのは、とても残念なことです。
こういう場面に遭遇したときに、その場で「ここは公共の場なので、会話の内容には少し気をつけたほうがいいかもしれませんね」とやんわり伝えるのも一つの方法ですが、なかなか言いにくいことだと思います。
必要なのは「病院全体で意識を高めること」です。たとえば、朝礼やミーティングで「公共の場での会話に気をつけましょう」と改めて確認する時間をつくるのもいいかもしれません。また、職員が見る掲示板(更衣室や職員食堂など)や院内メールなどで「最近、こういったケースがあったようです」と具体的な事例を示して注意喚起するのも良いでしょう。
単に「気をつけましょう」だけでは、何をどのように気をつけ、何がダメなのかが伝わり切らないこともあります。週に数時間だけ働く非常勤の方々にも確実に伝達するには、わかりやすい掲示も必要です。
病院は日々多くの患者さんが利用しますし、近隣の方々も多いです。街中には思っている以上に病院関係者(職員、その家族など)もいますので、「ここなら大丈夫という場所はない」ということを今一度確認し、「職場でのことは口外しない」という意識を高めていきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2025年5月号)