マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.11
議事録作成への生成AI活用を
病院DXに踏み出す小さな一歩に
今月のご相談 院内のタスクシフトで各委員会の議事録作成が事務部門の担当になりました。そのため、自分たちの業務が圧迫されて総務課の残業が増えています。わからない言葉も多く、思った以上に時間がかかっていてメンバーの不満も溜まっています。
タスクシフトは業務改善の好機
簡単なAI活用も視野に
タスクシフトにより、医療専門職が行っている事務的な作業が事務部門にシフトしてくる機会は増えてきました。そういうときこそ、業務改善活用のチャンスなのですが、これまでのやり方をそのまま引き継ぐと、単に作業が増えるだけになってしまいますよね。
委員会の議事録は「作成しなければいけないもの」ですから、もちろん「削減」はできません。委員会に出席してその場である程度メモを残し、録音データを後から聞きながら書き起こし、さらに、それを要約して議事録として整えるとなると、委員会出席時間の3倍くらいの時間をかけることになり、業務負荷は増えてしまいます。
病院DXを進めるには業務整理を行い、重複業務が発生しないようにプロセスを変えていくという一連の準備が必要なので、なかなか進まないかもしれません。まずは、議事録作成のような単純な作業についてはAIを活用することをお勧めします。
せっかく「録音」しているのですから、まずは音声認識技術を活用して文字起こしを行い、次に、その内容を「要約」し、あとは委員会のアジェンダに沿って整理をすれば議事録の形にまとめることができます。
そのうえで、委員会の参加者に内容確認をしていただき、加除・修正・訂正などを行って完成させれば、かなり省力化できると思います。病院によっては、委員会や会議、カンファレンスなどの記録をすべて自動文字起こしと要約ツールを使って下書きするようにしたところ、作業時間を70%程度削減できたという事例もあります。
もちろん、AI議事録作成ツールのようなものもありますが、通常使っている文書作成ソフトでもある程度できるようになっているので、試してみてください。
生成AI議事録は「校正」が大事
上手に使いこなそう
文字起こしや要約ツールは、まずは使ってみることが大事です。たとえば、院内の稟議書の下書きや職員向けの案内メールの下書きなども、音声入力である程度行ってみて、誤変換や句読点の修正、レイアウトの整理などを行うという作業手順で実践してみるだけでも練習になると思います。
AIの活用と聞くととても難しい印象を受けるかもしれませんが、日常生活のなかで、スマートフォンでもテキスト入力を音声で行ったりオンラインミーティングやセミナーでの自動文字起こしなどを利用したり――といった機会は増えてきているのではないでしょうか。
電子カルテシステムにサマリーや診療情報提供書の自動作成を行う機能がついているものが増えてきましたし、今後、さまざまな場面で生成AIを活用する機会が増えてきますので、少しずつ慣れていく必要があります。
そして、何より大切なことは、この生成AIで作成された文章を「校正」する力です。文章のつなぎは自然か、漢字は正しいか、主語と述語が明確かなど、文章として読みやすく、メッセージが伝わるかどうかを確認する力が必要となるのです。
こうした校正作業が面倒で「最初から自分で書いたほうがいい」と考えがちですが、論文やメッセージ性の高い文書などの作成は別として、議事録やサマリーなど、すでにあるものをまとめる作業では、生成AIを使いこなすほうが効率は良いと思いますので、この機会に、ぜひとも挑戦してみてください。(『最新医療経営PHASE3』2025年4月号)