ケーススタディから考える診療報酬
栄養情報の医療・介護連携と
「栄養情報連携料」

2024年度同時改定のキーワードとして「リハビリ・栄養・口腔ケア」があり、特に病院のなかでは数の多くない栄養士さんにとって、活躍の場面が増えることになりました。栄養管理は入院中だけ気をつけていればいいわけではなく、退院後も継続したケアが欠かせないことは言うまでもありません。今回は、2024年度改定で新設された「栄養情報連携料」についてとある病院のケースを紹介します。

ケース:真面目な栄養士さんはキッチリしたい

*今回とりあげたテーマについて、実際に現場で起こっている問題を提起します(特定を避けるため実際のケースを加工しています)

海に面する県にある300床を超えるケアミックス病院(急性期病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟を有する)のお話です。この病院の管理栄養士は7人。外来・入院患者に対する栄養指導や栄養サポートチーム(NST)の活動に一生懸命取り組んでいます。

今次診療報酬改定を受け、栄養科では新設された「栄養情報連携料(70点)」について算定件数の目標値を掲げることになりました。以前あった「栄養情報提供加算」は、入院中に栄養指導を行った患者のみが対象となる退院後の施設等への栄養に関する情報提供の加算であるため、同院の栄養科では加算算定件数の伸び難さを感じていました。そのため新しい栄養指導を行っていない患者も対象になる「栄養情報連携料」を積極的に取っていこうと、改定の行方を見守っていました。

新加算では、入院中に栄養指導を行っていない患者の場合の要件に「入院中の栄養管理に関する情報を示す文書を用いて当該他の保険医療機関等の管理栄養士に情報提供し、共有した場合」という文言が含まれており、この情報提供方法が通知で「対面又は電話、ビデオ通話が可能な情報通信機器等により説明の上、情報提供し、共有した場合」と明らかになりました。

先日、栄養科の科長であるAさんからこんなご相談が届きました。

Aさん「栄養情報連携料の算定準備を進めています。相手先への情報提供は電話でも良いとなりましたが、電話でどの程度、どういった内容を伝えたら良いのか……。何分くらいお話をしたらいいのか、正解がわからないのです。所定の様式を見ればだいたい内容はわかると思うので、電話で直接話をする意味は何なのか。相手先も突然電話されたら困ると思うのでこの制度について事前に伝えておいたほうが良いということなのか。この制度とどう向き合ったら良いか悩んでいます」

■栄養情報連携料70点について
〈注釈1・2について一部抜粋〉

注1:入院栄養食事指導料を算定する患者に対して、退院後の栄養食事管理について文書を用いて説明し、これを他の保険医療機関等の医師又は管理栄養士に情報提供し、共有した場合に、入院中1回に限り算定する。

注2:注1に該当しない場合であって、当該保険医療機関を退院後に他の保険医療機関等に転院又は入所する患者であって栄養管理計画が策定されているものについて、患者又はその家族等の同意を得て、入院中の栄養管理に関する情報を示す文書を用いて当該他の保険医療機関等の管理栄養士に情報提供し、共有した場合に、入院中に1回に限り算定する。

〈通知※注2について一部抜粋〉

「注2」は、患者又はその家族等の同意を得た上で、当該保険医療機関の管理栄養士が入院中の栄養管理に関する情報を別紙様式12の5又はこれに準ずる様式を用いて、入院または入所する先の他の保険医療機関等の管理栄養士に、対面又は電話、ビデオ通話が可能な情報通信機器等により説明の上、情報提供し、共有した場合に、入院中に1回に限り算定する。

病院のみならず施設にとっても、ただでさえ人数の多くない栄養士さんたちにとって電話などで先方と直接お話をする必要性については、さまざまな声を聞いています。しかし、新制度では、図に示した新様式のとおり「説明日」と「管理栄養士名」を記す欄がつくられており、記録として残さねばならないことに注意しましょう(説明日は入院中に栄養指導を行っていない患者の場合)。

図 栄養情報連携料の書式(別紙様式12の5)

「管理栄養士への説明日」と「担当医師または管理栄養士」名を記載する欄があることに注意

また、このケースのAさんが心配していたように、6月から制度が変わったことを受けて「施設等の管理栄養士に電話連絡をした際に驚かれてしまった」という話は実際、耳にしています。患者・利用者のために「施設等とより良い関係性を築くため、診療報酬改定による必要な連絡」である旨は事前にお伝えしていたほうが、より丁寧であると思います。

この加算は「医療機関間の有機的連携の強化」「継続的な栄養管理の確保等」を目的としたものであることが、制度上謳われています。制度の趣旨を理解し、病院経営の質向上のため、新加算を活用していきませんか。

結論

良好な連携のためにも
決められた様式に則って
正しく記録を残そう!

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

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