ケーススタディから考える診療報酬
第45回
そもそも……診療報酬制度って

2年に1度の診療報酬改定、3年に1度の介護報酬改定、そして6年に1度の同時改定を経験し続けているわれわれですが、この「改定」は、社会情勢に応じて見直されていることを経営者の皆さんは十分に理解されていることと思います。2026年度診療報酬改定でも、改定率が1年ごとに段階的に異なることが示されたり、「メリハリのある改定」をめざしていたりなど、現代の社会情勢に応じた内容が検討されています。しかし、経営者にとっては身近でも現場の職員にどの程度周知されているかというと、進んでいる医療機関は多くないようです。今回は、診療報酬改定を前に、制度に対する理解不足を嘆く管理職の事例から、「職員に対する診療報酬制度の理解のススメ」について考えていきたいと思います。

ケース:診療報酬制度を職員に説明している?

*今回とりあげたテーマについて、実際に現場で起こっている問題を提起します
(特定を避けるため実際のケースを加工しています)

関東圏にある200床未満のケアミックス病院でのお話です。この病院の看護部長からご相談がありました。相談内容は、経験年数の浅い職員の離職率が高いとのこと。

看護部長「また先日も、経験年数3年目の看護師Aさんから退職の相談がありました。Aさんにはこれから伸びることを期待していたので本当に残念だったのですが、それ以上にAさんの退職理由がとても残念でした」

筆者「Aさんは何とおっしゃったのですか?」

看護部長「それが、『管理職に思いやりがない」というのです。Aさんが家庭の事情で急きょ休みの希望を管理職に伝えた際、管理職から『誰か代わりを探すように』と冷たくされたというのです。でもね、そんなの当たり前じゃないですか。そんなこともわからなかったのかと悲しい気持ちになったのです」

筆者「管理職側からするととても残念な言葉でしたね。さて、少し違った角度からこの件を考えてみましょう。休みの希望を出した際に、希望を出した側がなぜ代わりの人を探す必要があるのですか?『当たり前」ではなく、説明するとしたらどう伝えますか?」

看護部長「それは、やっぱり様式9の話になるでしょうか。必ずしも希望を出した側がすべきという話ではないのですが、入院料には施設基準がありますから、施設基準に則った人員配置がなされていなければ病院の存続にかかわるくらいの影響があるわけです。病院の存続は管理職だけでなく職員全体にとって大切な使命だと思うので、職員一人ひとりにその点を意識してもらうために希望者が代わりの人を探すルールを基本としています……ということでよろしいでしょうか?」

筆者「なるほど、よくわかりました。その話は管理職全員が、新人を含めた職員全体に説明することができますか?」

看護部長「それは……。思い返すと、私も一般職員時に理不尽さを感じていたと思います。師長レベルでも説明できるかな……。恥ずかしながら、私は看護部長という立場になってはじめて制度のことを知り、正しい看護配置のことを理解することができました」

筆者「確かに、制度のことを正しく職員全員が知らなくても、病院は運営し続けることができると思います。ただし、組織の成り立ちにつながる制度のことを知っていると、『なぜこんなルールがあるのか』という意味が、自分の仕事に結びつくことになります。反対に、『なぜこんなルールがあるのか』ということに意味がないなら、効率を考えたルールに変更することも検討できるわけです。2026年度診療報酬改定を目前に、まずは、管理職から制度の理解を進めていける環境を整えてはいかがでしょうか?」

看護部長「キャリアラダーはあっても制度についてしっかり伝えられる人材が育っていないため、一から管理職同士で学び合うために研修を検討したいと思います」

今回のケース、どのような感想を持ちましたか。
ケースで取り上げたとおり、看護部門はラダー制度を作成されている医療機関が多いため、職員教育のなかで「医療制度」に関する内容を含めていくところはあるようですが、その内容がどの程度充実されているかというと、十分ではないところも少なくないようです。
また、看護部門以外の部門については、それぞれの部門の管理職が自分にかかわると思われる部分を自らの視点でピックアップし、それだけを学んでいるというケースも結構多いのではないでしょうか。

言うまでもないことですが、診療報酬制度は日本全国、どこでも同じものです。この制度に則って医療機関の収入が決まっていくのですが、その制度について、忙しい等のいろいろな理由のもと「知らない」、または「知ろうとしない」医療従事者の方は多いのではないでしょうか。
そして、今回紹介したケースのように、ご自身が管理職になってからはじめて「ああ、これってそういう理由だったのか」と理解され、気がつくことも多いのだと思います。

診療報酬改定は、制度を知る良い機会でもあります。改定そのものの内容はもちろんですが、それだけでなく、診療報酬制度について組織全体で学ばれてはいかがでしょうか?適時調査の際にも必ず役に立つはずです。
まずは、自院で届出されている施設基準の正しい理解から行っていかれることを、お勧めいたします。(『最新医療経営PHASE3』2026年3月号)

結論

診療報酬制度を職員全体で理解し合い
業務改善につなげよう

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

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