ケーススタディから考える診療報酬
第42回
適切な「受け入れタイミング」
~必要なデータを収集しているか

レセプトデータやDPCデータ(データ提出にかかわるデータ)、病床機能報告のデータ等、公的機関へ提出する必要のあるデータは各データを蓄積する担当者が管理されていると思います。これらを病院経営に活用されている病院は多いと思いますが、上記以外のデータについて独自に収集・集計しているものはどれくらいあるでしょう。今回は、公的機関などへの提出に必要ではないものの、病院戦略に活用できる「地域連携室のデータ」を紹介することで、経営改善に有効なデータについて考えていきたいと思います。

ケース:そのデータはなぜ集めているのか

*今回とりあげたテーマについて、実際に現場で起こっている問題を提起します
(特定を避けるため実際のケースを加工しています)

地方都市にある300床程のケアミックスA病院(急性期、地ケア、回リハを有する)のお話。この病院の課題は地ケア・回リハの高稼働化。地域に急性期病院はいくつかあるのですが地ケアや回リハ病床は多くなく、転院相談は少なくありません。しかし、稼働率は高くならないとA病院の地ケア・回リハの看護師長は言います。

師長「上村さん開いてください!転院相談はあるのに受け入れまでに時間がかかるため他院に決まっているみたいなのです。どう思いますか」

上村「それは問題ですね。医師としてはどのように把握されていますか」

医局長「医師側もできるだけ早く受け入れようとしていますし、連絡が来てからすぐに対応していると思います。現に、1週間以内に受け入れている例もありますし」

上村「双方で認識に差があるようですね。転院相談から受け入れまでの日にちと、転院相談からキャンセルまでの日数についてデータとして記録していますか。課題を具体的な数字で把握し、検討しましょう」

看護師・医師「どこかにと言われると……。多分、地域連携室では把握しているのではないでしょうか」

地域連携室に問い合わせると、必要なデータを発見!そのデータを用いて分析を行うと下図のような結果となりました。

上村「基本的に、転院相談から入院まで1週間から2週間で行われているようですね。ただ、キャンセルされた例では1週間以内が多いようです。ちなみに、このキャンセル事例はすべて『他院に決まった』ことが理由です。つまり、1週間以内に受け入れることで地ケア・回リハの回転が高まる可能性があるということです」

師長・医局長「データにしてみるとよくわかりますね。受け入れまでの目標日数は決めていませんでしたが、何となく1週間くらいが目安だと思っていました。しかし、データを見ると1週間では遅いのですね。分析してみると目標とする日数が決められ、何を検討すべきかよくわかりました」

地域連携室「日々の業務記録としてただデータを集めていましたが、このように活用できるのですね……。集めていて良かったと思いました」

この後、解決しなければならない課題が院内で検討され、少しずつですが受け入れまでの日数を短くするための取り組みが始まったのです。

今回のケース、どう感じられました?このケースのように、それぞれの部署は経営戦略を立案するために役立つ情報をたくさん持っているはずですが、活用されていないことは少なくないようです。
たとえば今回のケースでは、キャンセルとなった日付がデータとして残っていたので分析できましたが、別の病院では「キャンセルになったことは記録として残すが電話がかかってきた日にちまでは残していない」というところもありました。当然のことながら、必要な情報が蓄積されていなければ経営戦略を考えることはできません。

ある病院にA病院の事例を紹介したところ「自院でも分析してみよう」とデータを収集したことで、A病院とはまた違った改善内容が検討されたということです。

病院を取り巻く環境により、課題を抽出するために必要となる情報や課題解決の方法は異なります。
まずは、自院にはどのようなデータが蓄積されているか、把握されてみてはいかがでしょう。(『最新医療経営PHASE3』2025年12月号)

結論

病院の経営戦略策定に必要なデータは
すべて自院のなかにある!

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

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