ケーススタディから考える診療報酬
第41回
「特別食加算」に注目しよう

8月21日に行われた中央社会保険医療協議会(中医協)分科会で食事療養に関する議論が行われ、そこで特別食加算の対象として新たに「嚥下調整食」が検討されていることが俎上にのぼりました。食事療養にかかわる加算が少ないなか、新たな加算が検討されていることに対して一定の評価をされている経営者の皆さんは多いのではないでしょうか。今回は、「特別食」が正しく採用され、加算されるように奮闘する医療機関の事例を紹介します。

ケース:特別食加算の算定は適切に行えているか

*今回とりあげたテーマについて、実際に現場で起こっている問題を提起します
(特定を避けるため実際のケースを加工しています)

日本の南にある中規模総合病院(ケアミックス)のお話です。
2024年度診療報酬改定でもあったとおり、近年、栄養管理の重要性が増していることから管理栄養士の採用を増やしました。これまでは栄養士の数の少なさから必要な患者に十分な栄養管理を行ってこられなかった栄養部門は、特に「特別食加算」に対する取り組みが少ないと感じていました。

管理栄養士「昨年から管理栄養士が増員されて、新人だった若い職員も育ってきました。長年課題だった特別食加算の適切な算定に意欲をもっています」

筆者「特別食加算の課題をどのように認識されていますか?」

管理栄養士「実は、病院全体での特別食加算の算定割合は20%ほどなのです。特別食加算の算定については、医師の指示された食事内容を確認し、指示されたとおりに提供しています。忙しいなかでも余裕があるときは患者さんそれぞれの病名を丁寧に確認し、特別食加算の指示が抜けていると思われた患者さんについては、医師に『特別食の指示』を依頼していました。そこで気がついたのですが、医師の“病名入力”が少ない気がするのです」

その後、筆者がデータを確認したところ、入院患者の約2割弱に“入院時併存症名”の入力が全くないことが判明。もちろん、併存症のない患者はゼロとは言い切れませんが、この病院は高齢者が多い総合病院であるため、併存症のない患者はかなり少ないはずです。

管理栄養士「やはりそうでしたか……。管理栄養士も増えましたので、栄養部門の努力が反映されるように医局会で発表してきます!」

この病院では現在、医師の病名入力が特に意識されるようになったとのことで、特別食を算定している患者の割合は半分を超えたという嬉しい報告が寄せられたのでした。

今回のケース、どのような感想をもちましたか。病院で提供される食事は治療の一部であり重要な意味があります。食事に対し特別な対応が必要なケースは、当然、それ相応の対応をしてしかるべきもの。もちろん、病院によっては提供できる特別食の範囲が限られているために、一部対応していないということもあると思います。塩分制限食で食事摂取量が激減してしまうケースなどでは、場合によっては特別食ではない対応をとることも考えられます。
いずれにせよ、病院による事情を考慮しつつ、食事で対応できる療養を最大限行うことは、加算算定以前に重要なものです。

また別の事例では、「栄養部門と医事課とで『特別食加算』に対する理解の違いが原因で、栄養部門から特別食の指示を出していても医事課が算定していないケースが多くなっている」という話も耳にしました。
25年度診療報酬改定で特別食の対象となる項目が増える前に、現行制度上の算定ルールを再確認し、必要な患者に対して適切に、特別食を提供していきましょう。

参考として、中央社会保険医療協議会分科会でも採用された統計データを用いて作成した、年齢分類別の特別食加算の算定割合を紹介します()。(『最新医療経営PHASE3』2025年11月号)

結論

病院における食事は
療養であり治療の一環

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

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