ケーススタディから考える診療報酬
第39回
入退院支援加算は
効率的に算定すべき
6月に行われた中医協「入院・外来医療等の調査・評価分科会」にて入退院支援関連加算のあり方について議論されました。「病棟別の課題を整理しより中身のある連携が行われるようにすべき」という、入退院支援体制の質を求める議論が行われたようです。ただし、入退院支援は院内の理解はもちろん専門部隊の設置が必要で、業務時間割合は年々増加しているのではないかと考えます。今回は、最新NDBから入退院支援加算の都道府県別算定状況を紹介し、改定前に行っておきたい入退院支援に関連する業務整理について考えたいと思います。
ケース:そのチェックリストは本当に必要?
*今回とりあげたテーマについて、実際に現場で起こっている問題を提起します
(特定を避けるため実際のケースを加工しています)
日本海側に位置する200床ほどのケアミックス病院のお話。この病院では在院日数を適正化することで収入改善を行いたいと考え、改善指標の一つとして入退院支援関連加算の算定件数を定期的に確認しています。在院日数の適正化は徐々に進み、入院期間を超える症例の割合は少なくなっているのですが、入退院支援関連の加算の算定件数が伸び悩んでいます。
入退院支援室長「当部署には看護師2人、医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)4人、事務担当が1人所属しています。入退院支援加算1を届出ていますが、毎月の入退院支援加算の算定件数は20件程と、目標から考えるとかなり少ないです。入退院支援室の人員も十分ではないので入院時のスクリーニングなど病棟看護師にも協力を仰ぎながら取り組んできたのですが、病棟看護師が業務の忙しさを理由に『これ以上の工夫は難しい』と話し合いができない状態です……」
筆者「それは困りましたね。『業務の忙しさ』が理由で算定できないとのことですが、業務の見直しができるのは看護師さんにとっても良いはず。入院時に行わなければならない手続きなど書類関係は減っておらず、むしろ増えている印象があるのはわかります。増えていくことは診療報酬改定など外的要因によりあり得ますが、職員がエ夫をしなければ減っていくことは考えにくいものです」
入退院支援室長「ただ、おっしゃることはよくわかるのですが、減らすといっても勇気がいることですし、何かしら理由があってつくられた仕事のはずですので……」
筆者「わかりました。では実際に入退院に関係する書類関係すべて拝見しても良いですか?」
入退院支援室、入退院支援のリンクナース、医事課と筆者が集まり、入退院に関係する書類をすべて見直すことに。すると「これは何のために行ったんだっけ」「私が入職したときにはあったので」との声が上がり、改善の方向性が見えてきました。そのとき、紙運用している「入院時チェックリスト」の項目数に驚愕!話をうかがうと「同じものが電子カルテにもあり、ダブルチェックしている」とのこと。かつて入力ミスが多発していたために苦肉の策として導入されたようですが、対策後も入力ミスはなくなってはいないとのこと。会議中黙っていた最年少の看護師さんが声を上げました。
看護師「これ、なくしませんか?」
全病棟での急な変更はリスクがあることから、1部署から試験的に始めることに。徐々に入退院支援室と病棟看護師との関係にも良い変化が見られ始めています。
今回のケースについて、どのような感想を持ちましたか。記載のとおり、入退院支援をはじめ改正のたびに新設加算など業務が増える印象がある医療従事者の方は多いと思います。どの病院の方に話をうかがっても「減らせるものなら減らしたい」と語るものの、実際に減らすために重い腰を上げて話し合いに挑むことは大きなハードルと感じられているようです。
主な理由として「減らして良いと言える根拠がわからない」という意見を多く耳にします。つまり、診療報酬制度の理解が十分ではないため「疑問を持ったとしても言われたままの業務をするしかない」という状況に陥ってしまっているところも少なくないようです。
ケースでは医事課の方を交えて業務改善を行いましたが、医療従事者だけで業務改善の検討を行うよりも、診療報酬上必要な業務かどうかを確認するために医事課を巻き込むことをお勧めします。
効率的作業は誰にとっても幸せなもの!それぞれの職種が安心できるよう、2026年改定の前に、業務改善を検討してみませんか。(『最新医療経営PHASE3』2025年9月号)

*入退院支援加算1・2算定件数:診療年月:令和5年4月~令和6年3月第10回NDBより
*人口推計:都道府県、年齢(5歳階級)、男女別人口-総人口、日本人人口(2023年10月1日現在)より
結論
紙のリストなど既存の業務整理を行い
次期診療報酬改定に備えよう!
株式会社メディフローラ代表取締役
うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

