マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.9
事務部門のKPI設定で注視したい
誰に、どのような価値を生んだか
<今月のご相談>総務課長として次年度の事業計画をまとめています。病院の売り上げ目標に対して各部門の業績指標を設定するのですが、次年度から事務部門も設定するように言われています。総務課としては直接売り上げ貢献できるような仕事ではないので、残業時間の削減くらいしか思い浮かびません。他に何かあるでしょうか。
一年はあっという間
KPIで業務をモニタリング
「歳を重ねるごとに一年があっという間に過ぎてしまう」と感じるのは、それまで生きてきた時間(年数)に対する1年の割合が小さくなっていくからだと思っています。5歳児の一年は人生の20%ですが、50歳の人にとって一年はわずか2%です。さらに100歳になれば、一年なんてあっという間です。
もちろん、1年間の過ごし方も変わってきますし、責任ある立場で仕事をしていると、先々のことを考えながら日々の仕事を行っていますから、いっそう早く感じるようになるでしょう。
病院の事業計画達成のための各部門の業績指標(KPI)の設定を行うのであれば、年間を通してしっかりモニタリングできるような指標を設定したいものです。病院の収支構造はシンプルで、収益額は患者さんに提供した医療によって得られる診療報酬がほぼすべてです。
どれだけの患者さんに病院を利用してもらったか、どのような医療を提供したかという要素が収益に直接影響しますので、その目標となる数値が業績指標になります。
業績指標は必ずしも金額に換算されるものでない
確かに、メディカルスタッフ部門であれば、手術件数〇件実施、指導料▽件算定、廃棄食◇%削減など、指標を考えやすいです。では事務部門はどうでしょうか。
医事課であれば診療報酬を漏れなく正確に算定する、算定に必要な施設基準を確保するといった項目で目標値を定められると思いますが、後方支援を行う事務部門はどうでしょう。直接診療報酬の算定にかかわる業務を行うことはあまりないかもしれませんが、医療を提供する「人」「モノ」などにかかわる管理は行っていますので、その視点を持つと良いと思います。
たとえば、看護部が診療報酬上必要な看護師の人数を維持するためには、離職を防ぐことと採用活動の両方が必要です。働きやすい職場づくり、悩み事を相談しやすい環境を整えるなどの施策を考えると、その業績指標としては、「職員ご意見箱からの提案の実行=年間☆件」、「セルフカウンセリング利用率=□%アップ」などが考えられますし、採用活動であれば「採用説明会への参加=年◎回」、「応募者=△人確保」などが具体的な業務と目原値として見えてきます。
総務課として当たり前にやっている業務の多くは職員と患者さんのための活動です。その業務の先に、利用する職員、患者さんにとっての「価値」をしっかり見据えることで、一つひとつの業務に経営貢献の意味を見出すことができるはずです。
おそらく、各部門の事業計画のなかには事務部門へのタスクシフトが盛り込まれていると思いますので、受け入れる側でもその対応策が必要です。「他職種からのタスクシフト=☆時間分受け入れ」という目標があれば、その時間分の業務改善を行うことになるので、その一つひとつにも指標を設定できるのではないでしょうか。
もちろん、経費削減も大きな経営貢献の一つですから、病院全体での残業時間縮小のための働きかけ、削減時間も指標になるでしょう。業績指標は、必ずしも金額に換算されるものでなくても、その環境を整える施策、質を担保する施策に対しても設定できますので、日頃の業務が誰に、どのような価値を生んでいるかを考えてみると良いと思います。(『最新医療経営PHASE3』2025年2月号)