マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.8
同じメッセージでも
伝え方で受け止め方は変わる

<今月のご相談>手術のために入院した患者さんの付き添いのご家族に「面会時間ではないから病室に入れない」ことを伝えたら、後日、クレームのメールがきてしまいました。病院のルールなので看護師は間違ったことは言っていませんが、言い方に引っかかりがあったようです。どうすれば良いでしょうか。

ちょっとした配慮不足で不快感を招いてしまう

新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として、入院患者さんへのお見舞いをお断りしていた期間が3年ほどありましたし、今でも、面会時間や人数制限を設けたりしている病院が多いと思います。しばらくお見舞いのご家族への対応をしてこなかったことや、この期間に入職された職員は初めての経験かもしれませんので、対応への不慣れや配慮不足でご不快な思いをさせてしまうことがあるようですね。
私も、面会制限がある時期に家族が手術入院をしたのですが、入院当日の病棟への付き添い(荷物運び)だけは許可されましたが、すぐに病室を出るように言われ、その後は退院の日まで会うことはできませんでした。もちろん、当時はそれが当たり前でしたし、看護師さんからも事前に丁寧に説明されていましたので嫌な思いはしませんでした。

今回のケースは、入院時の付き添いで病室まで荷物を持ってきた家族に対する看護師の注意の仕方に、配慮不足があったようですね。
当日の午後1時からの手術予定で午前中に入院されたということですから、ご家族は一日中病院で過ごすつもりだったと思います。手術の付き添いのご家族のためにはラウンジがあるとのことですから、手術時間にはそちらにご案内するのでしょう。午前10時に入院して午後1時の手術までの時間、患者さんは術前の処置などがありますが、ご家族は待っているだけです。しかも手術前ですから不安な気持ちがあったのだと思います。
どうして良いかわからずに病室で待っていたご家族に、「今は面会時間ではないので部屋を出てください。ここにいてはダメです。手術は午後ですから」と看護師が声をかけたとのこと。確かにルールどおりの「注意」をしたので間違っているわけではありません。しかし、その言い方にご家族は心を痛めたようです。

病棟には他の患者さんもいますから、面会時間外に家族がいれば、他の患者さんから「なぜ」と言われることもあるでしょう。術前の処置をするために看護師が何度も病室を訪問しますから、家族がいるとやりにくいのかもしれません。ルールを守ってもらうようにご家族に伝える必要がありますが、その伝え方が「注意、指摘、指示」的になると、正しいことを言っていても不快に感じてしまいます。

不安な気持ちの患者や家族に気配りの言葉を添えてみよう

入院案内は事前に読んできていると思いますが、今回の方のように「どうして良いかわからず……」というケースもあるでしょう。
ちょっとした気配りの言葉を添えることで、ご家族の不安も和らぐのではないでしょうか。たとえば、「今は面会時間ではないので」という病院側の事情説明から入るのではなく、「朝からの入院で慌ただしかったですね。手術までの時間はどうされますか」という気遣いの言葉をかけてみてはどうでしょうか。そうすれば、ご家族が「このまま病室で待ちたい」と言われたとしても、本来は病室に入れない時間帯であることを説明して、外来エリアや院内のレストランなどでお待ちいただくことをお願いしやすくなるでしょう。また、「○○時くらいまでに病棟に戻ってください、手術室前までは一緒にご案内します」など、その後の動きも一緒に説明できれば安心していただけると思います。
患者さん以上にご家族は不安な気持ちになっていることもあります。面会者対応をしなかった期間もあり少し感度が鈍っているのかもしれません。今一度、気持ちに寄り添う言葉かけを心がけていきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2025年1月号)

いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民問企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に「医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」「経営企画部門のマネジメント」(ともに日本医療企画)ほか

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