ケーススタディから考える診療報酬
第15回
認知症ケア加算の改善策②

2024年度診療報酬改定の施行時期が2カ月後ろ倒しにする議論が8月2日の中央社会保険医療協議会総会で了解されましたが、NDB(ナショナルデータベース:レセプト情報の集計)の更新は今までよりも前倒しとなる7月末に行われたことをご存じでしょうか。毎年9月位に公開されてきたNDBが7月末に公開されました。今回は、前回も取り上げ、24年度診療報酬改定の議論の1つに上がっている「認知症ケア加算」について、現場が正しく理解することで正しい算定に繋がった事例を紹介します。

ケース:件数が上がらないのはなぜ!?

*今回とりあげたテーマについて実際に現場で起こっている問題を提起します
(特定を避けるため実際のケースを加工しています)

地方都市にある199床のケアミックス病院のお話です。この病院では「認知症ケア加算2」を届出ており、疾患構成として高齢者の割合が高いことを踏まえて認知症ケアに対して日々改善の努力を進めてきました。

ある月、ずっと身体拘束の割合が病院全体で5割を超えていたこの病院の身体拘束の割合が4割台になりました。現場で改善努力を続ける看護師の皆様は喜ばれたのですが、データの詳細を見ると表の状態でした。
同院は200床未満のため地ケアにおける院内転棟に制限はありません。そのことを踏まえても、データから考えるに急性期から回復期病棟(回リハ・地ケア)に転棟すると、認知症ケア加算の算定対象者が増えているように見えることが判明しました。そこで現場で認知症の評価を行う看護師の皆様とヒアリングを行うことに。

筆者 急性期病棟の25%くらいが対象患者というデータになっていますが、実際に病棟見学を行うともっと対象患者がいてもおかしくないと思いますがいかがですか

急性期看護師 確かにそうですね……。最初の評価が厳しいかもしれません

筆者 評価の見直しは行っていますか

急性期看護師 見直しは……行っている看護師とそうでない看護師がいると思います

回リハ看護師 転倒した際に見直しを行っています

地ケア看護師 私の病棟では転倒した際と週に1回見直しをするルールにしています

そこで改めて「どういう患者が認知症ケア加算の対象になるのか」を全病棟の評価者を対象に勉強会を行うと、「認知症という診断か薬が出ていないと加算対象ではないと思っていた」「高齢者でないと対象ではないと思っていた」といった誤った認識を持つ看護師か複数いることがわかりました。
その後、徐々に身体拘束の割合だけではなく算定件数も踏まえた改善が行われています。

こちらのケース、どのような感想を持たれたでしょうか。認知症ケア加算の改善というと、①減算になる身体拘束割合を下げる、②加算算定の漏れをなくす――という2点が考えられます。現場目線で考えると「医療・看護の質」を上げるための改善行動に働きやすいため、身体拘束を下げるほうに重きが置かれがちです。ところがデータをより詳細に見てみると、加算対象となる患者数が驚くほど少ないことを発見することは少なくありません。

認知症ケア加算の対象患者は「『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』の活用について」(平成28年4月3日老発第0403003号)(「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別添6の別紙12参照)におけるランクIII以上」〈重度の意識障害のある者(JCS(Japan Coma Scale)でII-3(または30)以上またはGCS(Glasgow Coma Scale)で8点以下の状態にある者)を除く〉となっています。
この「ランクIII以上」という定義と、いつ評価をするのかが病院内でも差があるケースがあります。極端な例でいうと、ある病院の内科病棟のスタッフステーションには「現在の身体拘束率30%」と掲げられていたのですが、認知症ケア加算の算定対象における身体拘束の割合は、60%を遥かに超えていたという例がありました。
この病棟の看護必要度のB項目における認知機能に関係する評価(診療上の指示が通じる、危険行動)2つを見ると、ほとんどの患者の認知機能に何らかの課題があることが確認できるにもかかわらず、認知症ケア加算の算定患者は20%ほどだったのです。

入院時にだけ確認をしていたこの病棟では、評価が看護師個人により基準が異なっていたこと、評価の振り返りを全くしていなかったこと――の2点が理由だったことがわかりました。当然、該当患者という母数が増えれば、収入だけでなく身体拘束の割合も変わってきます。他病院と同じように意識をして身体拘束の対策を行っているにもかかわらず、明らかに全国平均と比べて身体拘束割合が高い場合、算定件数を確認することで課題が見つかることもあります。制度を正しく理解することで正しい評価(収入)を得られるようにしていきましょう。

最後に、冒頭で紹介した最新の第8回NDBから認知症ケア加算算定患者における身体拘束の割合について都道府県別の結果を紹介します(図)。より良い改善が進むことを祈ります。(『最新医療経営PHASE3』2023年10月号)

図 2021年度認知症ケア加算身体拘束算定率

診療年月:令和3年4月~令和4年3月(第8回NDBより)
*加算1・2・3、14日以内・15日以上いずれも合算している ©Mediflora2023

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング