Dr.相澤の医事放談
第34回
かかりつけ医機能を定義づけて
医療機関はそれに沿って運用すべき

第8次医療計画に関する検討が進むなかで、かかりつけ医の機能をいかに明確にするかが注目されている。日本病院会では2022年11月、厚生労働大臣宛てに「かかりつけ医機能」に関する提言を提出した。相澤孝夫先生は、「かかりつけ医機能の概念を一致させ、患者さん自身が医療機関を選択できるようにしなければならない」と主張する。

医療法施行規則でかかりつけ医機能を定義

かかりつけ医、あるいはかかりつけ医機能については医療機関、医師、国民の皆さんのなかで、残念ながら意見が一致していません。現状でいくら議論したとしても、恐らくすれ違いに終わるだろうというのが懸念材料の第1点。
第2点は、いろいろ調べてみると、医療法施行規則のなかにかかりつけ医機能が書かれているという事実がありました。それは、①日常的な医学管理および重症化予防、②地域の医療機関等との連携、③在宅療養支援、介護等との連携、④適切かつわかりやすい情報の提供、⑤地域包括診療加算の届出、⑥地域包括診療料の届出、⑦小児かかりつけ診療料の届出、⑧機能強化加算の届出――の8項目です。このかかりつけ医機能を発揮している医療機関は、都道府県知事に報告することが定められています。
法令で定められているにもかかわらずしっかりと運用されてこなかったため、残念ながらかかりつけ医機能を発揮している医療機関がどこに、どれぐらいあるのかが明らかにされていないという状況です。都道府県に報告されていないのか、報告されているが都道府県が公表していないのかといったこともわかりません。これは、きちんと運用してこなかった医療機関側の問題であり、かかりつけ医機能、あるいはかかりつけ医ということに関して周知、認識が不十分で考え方がバラバラであったためです。

日本病院会では「かかりつけ医機能を持つ医療機関はどのような役割を果たすべきか」について議論を重ねてきました。医療機関側がもう一度、かかりつけ医機能を運用するならばどうすべきか、現行のかかりつけ医機能として決められている内容を協議しました。前述の8項目は大臣告示であり、訂正が容易となっています。
医療機関側が見直すことで、「かかりつけ医機能とはこのようなものである」という概念を一つにして、決められていることをきちんと行っていくべきだと考えました。つまり、かかりつけ医機能を発揮しているという医療機関はきちんと報告をするということです。報告したら、医療法の規則ではそれ都道府県が国民にわかりやすい形で公表することになっていますから、患者さんは地域のどこにかかりつけ医機能を発揮している医療機関があるのかがわかるようになります。
現在、自分が通っている医療機関がかかりつけ医機能を発揮する医療機関であるかどうかを患者さんが認識できるわけですから、患者さんはそのかかりつけ医機能を発揮している医療機関を受診しようとした場合、自身で選択できるわけです。
かかりつけ医機能の議論のなかで、その機能の担い手が1人の医師を中心に考えられていること、新型コロナウイルス感染症の蔓延でその機能が十分に発揮されていないことが露呈したと言われていることなどが、問題として上がりました。かかりつけ医機能の概念をみんなで共有できれば、受け皿となる医療機関ができ、かかりつけ医機能が日本で定着するでしょう。まずは、みんなで共有できる概念をつくらなければならないと考えました。

定義は包括的な概念に
定期的な見直しが必要

日本病院会では、改正案を厚生労働大臣に提言しました。内容は、①診察時間内外を問わず自院で地域住民に対応する、もしくは他の医療機関と連携して対応する、②特定の領域に偏らない広範囲にわたる全人的医療を行う、③総合的医学的管理を行う――の3項目としました。
「総合的な医学的管理」というのは、検診に対する対応や相談を行い、在宅患者さんの継続的な健康管理を行うといったことです。「特定の領域に偏らない広範囲にわたる」というのは、ある臓器しか診られないのではなく、広範囲にわたる全人的医療を提供することです。患者さんの背景、家庭、社会環境といったものを含めてみることが求められます。また、自分の医療機関だけで対応をするのが原則ですが、それができない場合は「他の医療機関と連携して役割分担する」ことで、かかりつけ医機能を確保するというものです。

かかりつけ医機能をもつ医療機関とその文化を育てていくことが重要です。そのために、医療機関の役割の範囲を狭めることなく、包括的な概念として示しました。定期的に機能の成果、実施状況を見直していくべきでしょう。(『最新医療経営PHASE3』2023年1月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング