ケーススタディから考える診療報酬
第6回
診療報酬の独自解釈〜ケア編

冬の到来を感じる季節になりました。この秋は診療報酬改定における経過措置対応や看護職員の処遇改善に係る届出、外来機能報告(提出期限は延期になりましたね!)など事務職が業務に追われる医療機関が多かったように思います。病院では事務職が主として診療報酬を読み解き医療従事者とともに経営改善に取り組んでいると思いますが、その解釈が適切に行われないことで収入の機会を逃してしまうケースは少なくありません。今回はケアに関連する加算について、実際にあった“独自解釈”を紹介します。

ケース:本当にあった診療報酬の独自解釈
①認知症ケア加算

算定対象患者を病院独自に解釈していたケースです。「認知症」という名称がつくため、高次機能障害の患者には当該加算を算定できないと思っていた脳疾患の専門病院の話です。他にも、認知症ケア加算のフローを確認したところ、認知症の薬を投薬しているかどうかで認知症ケア加算の算定対象を判断していた例もあります。診療報酬では認知症ケア加算の対象患者は以下と定義されています。

「『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』の活用について」におけるランクIII以上に該当すること。ただし、重度の意識障害のある者(JCS:Japan ComaScaleでII-3〔または30〕以上、またはGCS:Glasgow ComaScaleで8点以下の状態にある者)を除く。

「認知症と診断されたもののうち」や「認知症に対する薬物療法を行っているもののうち」という文言はありません。認知症の症状に対するケアに対する加算なのですが、特定の診断がなされている患者しか算定できないと思い、算定件数が伸びていない病院がありました。
改めて対象患者を共有し、その次の月から算定件数は徐々に増えていきました。

②排尿自立支援加算

排尿困難者に対するケアであるこの加算は、指導が終了した場合には加算も終了することが明記されています。この加算算定のフローとして、カテーテル抜去後に少量でも自尿が確認された時点で加算算定を終了としているという病院がありました。しかし、加算が終了した後も排尿ケアに関する記録(残尿測定など)を行っていた症例もあったのです。
なぜそのようなルールとなったのか確認すると、担当者が「自尿が確認できたら終了したほうがいい」と思い込んでいたためということがわかりました。診療報酬制度では、自尿の有無が終了に関係するという記述はありません。包括的な排尿ケアのあり方を見直し、改めてどのような場合に終了となるのかを見直すことで算定件数が伸びていきました。

③薬剤総合評価調整加算

ポリファーマシー対策の加算です。6剤以上を内服している患者に対して処方内容の検討を多職種で行うと100点、実際に2剤以上内服薬が減少した場合に150点がさらに加算される仕組みになっています。
ある病院では、病棟配置されている薬剤師が減薬の可能性について医師や看護師と話し合っていたにもかかわらず加算算定はされていませんでした。理由は、薬剤部が作成した薬剤総合評価調整加算のための細かな記録用紙の存在です。診療報酬上では決められた記録様式はありませんが、独自に作成していた細かな記録用紙は使い勝手が悪く、誰も使いたがらなかったのです。この独自用紙を使わないと加算算定ができないと思い込んでいた皆さんはびっくり!翌日から記録用紙が見直されて加算算定が進んだのでした。

*今回とりあげたテーマについて、実際に現場で起こっている問題を提起します(特定を避けるため実際のケースを加工しています)

左ページのケースを知って、どのような感想を持ちましたか。日々の業務に追われて診療報酬を正しく読み込むことができない場合、認知症ケア加算のケースにある通り、名称から「こんな加算だろう」と解釈をしてしまったり、制度を確認せずに「こうしないと加算が算定できないと聞いていたから……」という思い込みが発生するケースは少なくないと感じています。加算算定状況を見直すことで、「あれ、うちの病院ならばもっと対象患者さんがいると思うが、なぜこんなに算定件数が少ないのだろう」という発見があると思いますよ。(『最新医療経営PHASE3』2023年1月号)

結論

診療報酬を正しく読み解き
独自解釈をなくすことで
算定件数は伸びていく!

上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、総合病院での勤務の傍ら、慶應義塾大学大学院にて人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。2010年には心理相談員の免許を取得。医療系コンサルティングを経て13年、フリーランスとなり独立

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