Dr.相澤の医事放談
第31回
病院やサービスの質向上に貢献
運営や生産性向上などを担う人材

病院マネジメントには、運営を縁の下で支えている事務職の存在が不可欠である。このことは多くの病院トップが理解している一方で、専門性の高い医療職の優位性が揺るがないため、現場では事務職の立場が弱いのが現状だ。相澤孝夫先生は組織体系、人事制度体系によって、職種に関係なく能力が適正に評価される仕組みを自院で築いている。

職員が同じ立ち位置の文鎮型組織を採用

事務部門は、医療職のように国家資格がない集団になります。これが病院においては、時に肩身の狭い思いをせざるを得ないことがあります。しかも、現在は医療職によるチーム医療で動くことが多く、受付などは例外として、患者さんと直接接する機会が少ない事務職は仲間として加わるのが難しいというのが現実だと思います。そのため、モチベーションの維持は難しいことだと思います。
個々の病院が、事務職の位置づけをきちんとすることが肝要です。

私は、組織が「自分たちはこういう考え方で、こういう思いで病院を運営していく」ということを形で示すことがすごく大事だと思っています。そこで採用したのが、ピラミッド型ではなく“文鎮型”組織です。
文鎮型の一番いいところは、経営者が組織のトップにいて、それ以外の職員は同じ立ち位置にいるため、情報や指示が正確に伝わるのと、決定から実行されるまでが早いことです。コミュニケーションが十分にとれていれば、各部門、職員が現場の困り事を直接トップに伝えられます。

病院のさまざまな問題解決の答えは現場にあるというのが私の考え方なのですが、慈泉会では現場から直接拾うことができます。一方、現場との距離が近い分だけ、組織を一枚岩にすることにはものすごいエネルギーと努力が必要なのです。しかしそれにも勝る配属決定、実行の速さには代えられません。
相澤病院には法人本部組織があり、統括する本部長のもと財務、購買、総務、人事、情報システムといった事務部門が位置づけられています。一方、病院にも別に事務部門があり、診療報酬の請求を行う医事請求課などが置かれているというのが、ほかの病院とは少し違った組織体系といえます。

人事制度は1997年に、年功序列から能力主義に移行しています。個々の職員が能力を上げていかないとダメだと考えたのと、能力を適正に評価し、給与に反映させていくことが必要だと考えたからです。
人事制度体系に合わせた能力開発をめざすという当法人独自の教育・研修システムをつくりました。特徴的なものとして、「職能要件書」があります。個々の職員の能力を評価し、能力開発を促進するもので、キャリアラダーのように、ステップごとに必要とする能力やスキルを設定しています。事務職は5年経てば一とおりのスキルが身につき、通常業務はこなせるようになります。そのレベルに達するとキャリアパスを選択し、働き方を選ぶことができます。

たとえば、医事のスペシャリストとして、青本や白本といわれる診療報酬点数表を丸暗記したいという人もいれば、病院全体のマネジメントにかかわりたいという人もいます。専門的知識と専門領域の経験を積んだスペシャリストである「高度専門職」になれば、医療職ともほぼ対等に話ができるようになります。一般職を選ぶという選択肢もありますし、本人の希望により途中でキャリアパスを変更することもできます。どのパスを選ぶかは個人の自由です。自分で働き方を決められる、一人ひとりの評価をきちんと行う、評価に応じて給料を支払うというのが基本的な考え方です。

事務職と医療職は役割分担をする仲間

病院は専門性を有する多職種の人材がいる組織であり、専門性が高いゆえに専門性をもって権威を持つことができます。それが冒頭で話したような、明らかなヒエラルキーとなってしまっています。事務職はただ自分の仕事を行っていればいいのではなく、病院やサービスの質向上に貢献してもらいたい。それによって病院の社会的な地位を高めたり、患者としてだけなく、地域住民として病院に足を運んでいただく人を増やすことができます。
また、病院への信頼感向上、病院がしっかりと運営できるようにサポートすることや生産性を高めるといったことも、事務職が担っていかなければならないと思います。こういったマネジメント力は、専門性が高い医療職は軽視する傾向があるのですが、マネジメント力がなければ病院運営はできません。

事務職は、医療職と上下関係にあるわけではなく、病院という組織を回すために役割を分担していると考えるべきです。“大切な仲間”という位置づけですね。(『最新医療経営PHASE3』2022年10月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

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