Dr.相澤の医事放談
第29回
効率的・効果的に医療を支える
「地域型」「近隣型」病院

地域包括ケアシステムを支える中小病院のさらなる機能の発展を目的にこのほど、「日本在宅療養支援病院連絡協議会」が設立した。超高齢社会の医療ニーズに応え、地域包括ケアシステムの担い手となる病院について、相澤孝夫先生に語ってもらった。

在支病など裾野が広い足下を固めるのが大事

――日本在宅療養支援病院連絡協議会がこのほど設立しました。相澤先生も監事として参加されています。

在宅療養支援病院(在支病)は病院の役割、機能を規定するものではなく、在宅療養をサポートする病院を診療報酬上で評価するための位置づけです。どのような病院なのかがイメージしやすく、ほかに適切な名称がなかったということもあり、協議会の名称にしました。
めざすのは診療報酬だけではなく、これからの地域包括ケアシステムに深くかかわっていく病院をどう位置づけしていくのかを検討していきます。
私の個人的な概念からすると、在支病に限らず、いわゆる地域密着型だったり地域に根ざした「地域型」、病院を中心に30分圏内を診療圏とする「近隣型」を想定しています。そのなかには、かかりつけ医は連携する診療所に任せて、自分たちは一切やらないといった病院があってもいいと思います。高い頻度で一般的な急性期の患者さんを診る、ごく普通の身近な病院といった感じでしょうか。
こういった病院は今後の超高齢社会において、ますます必要となってきますし、働き手世代が減っていくことを考えると、効率的・効果的に日本の医療を支えていくためのキーとなる病院です。

地域包括ケアシステムの中核を担う病院はどういった病院なのか、今こそイメージをしっかりつくっていかなければならないと考えます。地域内での各病院の役割分担については、これまで議論されてきませんでした。病院類型についてもできていないため、役割が曖味になっています。どちらかと言えば、国は、高度急性期医療の話ばかりをしてきたように感じます。本来は在支病を含む、裾野のほうがずっと広いですし、足下を固めることのほうが大事です。毎回のように申し上げていますが、国が病院をどうしていこうかという、グラウンドデザインがないのです。

地域ケア病棟は「病院」機能でなく混乱招く

――以前から、地域における「病院「機能」を踏まえた議論が必要とご指摘されています。地域包括ケアシステムを支える病院の位置づけを、どうお考えですか。

各地域には、ご自宅で暮らしながら在宅療養をしている人たちがいらっしゃいます。何らかの疾病にかかった場合、必要に応じて入院することになりますが、入院先を決めるのが大きな問題です。
地域包括ケアシステムでは生活の場から病院へ、病院からまた生活の場へといった円滑な流れをつくっておくことが大事です。それが滞るから、高齢者の入院期間が長くなったり、普段から密着した連携が取れてないから、そこにいろんな齟齬や問題が発生したりするのです。ですから、私は「地域包括ケアの核となる病院」と言っているのですが、地域包括ケアシステムに即した病院をはじめからつくっておけばいいと考えています。
このような病院は前に述べた「近隣型」であり、人口規模でいうと3~5万人程度のところに1病院ぐらいあるイメージです。高齢者を支える病院として地域医療の核となり、診療所や介護、生活支援などと連携していきます。
また、病院には管理栄養士やリハビリスタッフ、薬剤師など、さまざまな専門職がいます。こういった人たちが高齢者を支援するために、病院から地域に出て行くことで、より質が高い地域づくりができるのではないかと思っています。このような病院をつくっていくと、どうやっても集約化・集中化ではなく、多極・分散化していきます。

地域包括ケアシステムを支える病床機能として、地域包括ケア病棟がありますが、あくまでも病棟であり、病院機能ではないことが混乱を招いています。本来は地域における病院の役割、機能があって、そのなかでどういった病床が必要なのかを話し合うべきなのに、病棟の機能を先に決めてしまうから、7対1の看護配置を維持するために大規模病院が開設するといったことが、当初起きました。
現状では、一般の方が聞いても全然わからない話になってしまっています。国民的合意を得るためにも、「在宅療養で困ったときにはA病院に行けばいい」「A病院で診られない大きな病気のときは、少し離れたB病院に行く」といったように、わかりやすく、病院の役割を示す必要があります。(『最新医療経営PHASE3』2022年8月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング