Dr.相澤の医事放談
第27回
地域における「病院機能」を
踏まえた議論が求められる

2022年度診療報酬改定の議論が決着し、新年度に入ったが、病院はこれからの大きな変化に対応していかなければならない状況にある。24年度は医療・介護報酬ダブル改定だけでなく、第8次医療計画がスタートするなど大きな節目を迎える。相澤孝夫先生は、「いろんなところにほころびが生じた制度、病床機能について今から議論すべき」と指摘する。

2024年度に向けた検討は今すぐ始めるべき

――新年度がスタートしましたが、2022年度をどのように位置づけていますか。

24年度から第8次医療計画が始まり、診療報酬・介護報酬の同時改定があります。介護保険事業計画も変わります。医療費適正化計画が新しくなり、第4期がスタートします。さらに、医師の働き方改革は「労働時間の上限規制」の適用が開始されるなど、これらのことが一斉に始まります。大きく制度が変わることから、逆算すると、24年度に向けて今から何をどうしていくのかを決めていかなければなりません。
その議論をどう進めていくのかが大事で、以前から指摘していますが、一つは診療報酬をどうしていくのかという医療費の問題があります。もう一つは、医療計画という医療の提供体制をどうしていくのかということです。

在宅医療に関しては、介護保険事業計画と医療計画のどちらに何が盛り込まれているのかが明確にされていないため、現場が混乱するといった事態は変えなければならなりません。また、医師の働き方改革については、単に労働時間を減らすだけでいいのか、そこに内在する基本的な問題は何なのかを考える必要があります。要するに、医師は医療を提供するところで働くわけですから、医療の提供場所をある程度コントロールするということ。それを医療計画に組み込んで今後議論していかなければならないと思います。そして推進していく際は、二次医療圏が現状のままでいいのかという議論もしなければならないでしょう。

病院類型は実質2つで地域医療の検討は困難

――二次医療圏の現状と問題点を踏まえたうえで、あるべき姿を考えなければならないのですね。

医療計画では、複数の市町村で構成する二次医療圏で通常の医療が完結できるとしていましたが、新型コロナウイルス感染症では二次医療圏で完結できないことがたくさんあり、混乱を招きました。二次医療圏についての議論では、医療提供の基本である外来在宅医療をどうするかを考える際、いくつかの圏域をどうネットワーク化していけばいいのかを検討していくことになります。

地方自治法では、圏域全体で必要な生活機能を確保する「定住自立圏」、近隣の自治体で連携協約を締結し、持続可能な社会をつくる「連携中枢都市圏」が導入されています。圏域を越えたネットワークについては、必要であれば組むべきだとも明記されています。実際、地方自治では圏域を超えたネットワークによる計画が策定されていますが、厚生労働省がつくる医療はそれとは別扱いというのは、果たして正しいのかを考えるべきです。

今度の新型コロナでは重症患者、中等症、軽症それぞれの患者を診医療機関、ある程度回復した人を受け入れる医療機関が地域のなかにバランスよく確保されてないから混乱してしまったことがわかりました。圏域を決め、そこにはない機能を新たにつぎ込むのか、それとも、今ある病院の機能を分析し、それを踏まえたうえで新たな圏域を設定していくのか、よく考えていくべきでしょう。
そういった地域の状況は、医療計画に書き込まなければいけません。今の医療計画の問題は、地域医療構想と言いながら、単なる病床数と病床区分をどうするかという話になっていて、病院機能については触れられていないことです。地域の状況から、多機能をもつ病院では院内、病棟間の機能分化連携が必要になります。地域包括ケアシステムのなかで自院完結型を批判する風潮がありますが、どうしていけないのか、そうであればどんな機能を持てばいいかを、もう一度話し合わなければならないと思うわけです。

現在の病床機能分化は、地域内での役割分担をどうするのかという話になっていません。精神科病院は別にして、病院の類型は一般病院、特定機能病院、地域医療支援病院の3つ。地域医療支援病院は、もともとは病院と診療所との外来機能分化が目的で、実際には病院機能ではないのに、病院類型のようにとらえられていて役割が曖昧になっています。実際の類型としては一般病院と特定機能病院しかなく、それでどうやって地域医療を進めればいいのでしょうか。
約7000ある一般病院の機能分化、主な役割となる入院機能をどうするかを考え、医療計画にどう入れていくかを議論すべきです。(『最新医療経営PHASE3』2022年6月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

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