経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第23回
メディカルスタッフを活性化させ
新加算の取得をめざそう

2022年度診療報酬改定の全貌が明らかになりました。経営企画室や医事課を中心に、新しい施設基準の届出の整理などお忙しい日々を送られていると思います。今回は、22年度改定のカギの1つと考える、「チーム医療」に注目し、新加算を取得する方法をお伝えします。
*本連載は3月18日時点の情報を元にしております。最新情報も併せてご確認ください。

「ベッドコントロール」「看護必要度」「チーム医療」がカギ

2022年度診療報酬改定は、入院基本料の抜本的な見直しといった大きな改定とは言えませんが、小さな操作が複数行われた印象を持っています。
私は、この改定を乗り越える力ギは3つあると考えています。1つ目は、地域包括ケアの細かな改定に代表される「ベッドコントロール」。2つ目は、心電図モニターが削除となった「重症度、医療・看護必要度」。3つ目は、メディカルスタッフの活用による加算が数多く新設されたことに代表される「チーム医療」です。
ちなみに、22年度の目玉となる改定内容というならば、3月4日の告示・通知で明らかになった、「急性期充実体制加算」の新設でしょう。求められる実績の高さに驚かれた病院関係者も多かったと思います。

チーム医療に必要なのはメディカルスタッフ

ひと昔前までは「医師がいないと患者が集まらない」と考える経営者が多かったと思いますが、近年の診療報酬改定の流れを見ると、重要視されるべきはメディカルスタッフと言えます。医療従事者の働き方改革の流れもあり、タスク・シフトを考えても、メディカルスタッフの役割は重要であるはずです。
22年度診療報酬では、メディカルスタッフに関連する主な改定内容を示しています(表)。今までの改定を振り返っても、今回のメディカルスタッフに関連する改定内容はさらに充実したと感じます。医療機関の届け出ている施設基準や人員配置等の制限はありますが、皆様は今回の改定を受けてどの新設加算を検討されていますか。

動きの早い医療機関では、昨年夏以降の改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を傍観し、人員確保から教育体制まで中長期的に準備(管理栄養士のリクルート活動や認定看護師の研修実施者の選定など)を進めていたところもあります。少子高齢化が進む日本において、「当院は地域性で人が集まらないから……」と求人を出す前に諦めるのではなく、人材確保に向けた試行錯誤が重要であることは言うまでもありません。

表 メディカルスタッフに関連する主な改定内容まとめ

2022年度診療報酬改定内容から筆者が抜粋

やはり重要視された急性期における栄養管理

21年度介護報酬改定で重要度が増した栄養管理ですが、22年度診療報酬改定では、急性期医療における栄養管理の重要性がうたわれる内容になっています。先に挙げた表のなかを見ても、栄養管理にかかわる項目が多いことがわかります。
特に注目は、急性期病院の高度な実績に対する加算である「急性充実体制加算」、または、総合的な診療体制を評価した「総合入院体制加算」のいずれかを算定している病院でないと算定できない新設の「周術期栄養管理実施加算(270点・1手術につき1回)」と、特定機能病院における病棟栄養管理に対する評価である、同じく新設の「入院栄養管理体制加算(270点・入院初日および退院時)」です。
いずれも、急性期における栄養管理の重要性がうかがえる高い点数設計になっていると言えます。
現時点では、規模が大きく、特定機能病院といった高度急性期を担う体制がある病院に対する加算になっていますが、今回の改定では、それ以外の病院に対しても中長期的に十分な栄養管理の体制を整えるよう訴えているように見えてなりません。

また、20年度改定で新設された摂食機能療法の「摂食嚥下支援加算」というチームによるケアを評価する加算についても、チームメンバーの精査が行われた結果、医師と看護師、言語聴覚士とともに、管理栄養士が要件として残りました。外来化学療法患者に対して専門的な知識を持つ管理栄養士(実績と研修修了が要件)が行う栄養指導に対しては、260点(月1回)という点数も新設されています。
急性期として専門的な知識と実践力を有する管理栄養士の確保・育成は、今から中長期的に計画すべきものと考えます。

24年度以降の診療報酬改定を見据えたチーム体制の強化を

チーム医療が正しく機能するためには、病院全体がメディカルスタッフの役割を正しく知り、協力し合える体制が必要です。何といっても、メディカルスタッフの多くは病院内で少数派であり、発言力や影響力が小さいことがほとんどです。メディカルスタッフの声に耳を傾けると、病院経営に対するさまざまな改善案が出てくるのですが、声が小さいために、経営層にまで届くことはあまりないように思います。

診療報酬が背中を押す形となったメディカルスタッフの活躍が実現するためには、病院全体でその役割を理解し、協力体制をつくり上げることが不可欠です。残念ながら、いまだに「メディカルスタッフは医師ではないから」と、発言が病院運営に重要視されないと嘆く声を聞くこともあります。
先のケースも参考に、どうぞ、院内のメディカルスタッフの皆様が活躍できる環境づくりをめざしていただきたいと切に願っています。

※文中にある新設加算等について、詳しくは最新の改定情報をお確かめください。

コラム 現場で何が起こっているの!?

ここでは今回とりあげたテーマについて実際に現場で起こっている問題を提起します(特定を避けるため、実際のケースを加工しています)。

ケース:よりよくなる病院の思考回路と、そうでない病院の思考回路

300床ほどの地域密着型のケアミックス病院であるA病院とB病院のお話です。A病院はコロナ禍にあっても組織一丸となって改善活動に取り組んでいるため、経営状態がよい病院です。一方、B病院はコロナ禍患者数が減少したことで病床稼働が下がったが、感染対策など目の前のことに精一杯となったために集患が行えず、職員も離れていっている病院です。この2つの病院における診療報酬対応(術後疼痛管理チーム加算)が特徴的でした。

A病院では、コロナ禍であっても非常に高い稼働を維持しており、忙しい日々ではありましたが、スキルアップを希望する職員の情報を適時更新し、診療報酬で評価されなくても希望に応じて快く研修に出していました。スキルアップについて個人任せにするだけではなく、新しい研修の情報が出たら適時職員に開示することで、世の中の動きを共有することも欠かしません。そうすることで「診療報酬が後からついてくることを実感しています」とは、A病院の看護部長の言葉。その言葉を裏づけるように、前回改定でも20年4月から新設された加算を算定できる体制が整っていました。A病院では、22年度改定で「術後疼痛管理チーム加算」を算定する準備を進めています。
「この加算は、点数自体は小さいのですが、病院収入に関係なく急性期病院としての医療の質の観点から取り組みましょう。もしも薬剤師の研修要件がクリアできていなかったとしても、4月からチームとしての取り組みを始めましょう」と、2月に行われた手術室委員会で決定し、それぞれの職種が役割を決めて準備が進められています。きっと、A病院は新年度も多くの患者でにぎわうでしょう。

B病院では、コロナ禍で稼働が落ち込むと職員のモチベーションも低下してしまいました。一時期よりも患者数は戻ったとはいえ、以前とはほど遠い稼働であっても、「忙しい」と訴える職員の声に管理職層は弊しています。管理職層は患者・職員のコロナ対応に日々追われており、経営的な数値の把握や職員との十分な対話に時間を割くことができません。職員は人がいないなかで、「スキルアップのために研修に行きたいです」とは、とても言い出せない状況。そのようななか、22年度改正の内容が示されました。
「この状況ではとても改定の準備なんてできません。収入が落ち込んでしまっているので、何とか改定で収入アップになるものがないか探しているのですが……。術後疼痛管理チーム加算の大切さはわかっているのですが、研修に出さないといけないですし、あまり点数も高くないので、もう少し後でも良いと思っています」とは、B病院の看護部長。一方、B病院の薬剤部長は手術室の質の改善の必要性を感じ、この新加算取得に対し前向きに検討したいと考えていました。しかし、当然のことながら、看護部門の協力がなければ算定できないため、薬剤部長の思いは宙ぶらりんに。「この病院では改善したいという気持ちがあっても話し合いすらできず、結果的につぶされてしまう」と、薬剤部長の心はB病院から離れてきています。

どちらの状況も職員の気持ちもよく理解できます。皆様はこの2つ病院の事例から、何を考えますか。(『最新医療経営PHASE3』2022年5月号)

まとめ

  • 2022年度診療報酬改定でメディカルスタッフはますます重要視されている!
  • メディカルスタッフに関係する改定項目は多数ある!計画的な人員確保と教育が必要
  • メディカルスタッフの多くは病院内では少数派!24年度以降の診療報酬改定を見据えて、
    院内全体でメディカルスタッフに対する理解と協力体制をつくり上げよう
上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。

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