Dr.相澤の医事放談
第18回
「かかりつけ医」としての役割を
果たすために必要な研修と経験の場とは

診療報酬や医療計画、「骨太の方針」でも登場する「かかりつけ医」だが、そのイメージは十人十色。厚生労働省は「健康に関することを何でも相談でき、必要なときは専門医療機関を紹介してくれる身近で頼りになる医師」とするが、資格要件などはない。医療政策に位置づけるなら「明確な条件づけが必要」と相澤孝夫先生は語る。

「かかりつけ医」に抱くイメージとは

――外来医療計画とともに、「かかりつけ医」の役割が改めてクローズアップされそうです。

診療報酬の要件や医療政策全般、あるいはそれらを議論する場でも「かかりつけ医」という言葉が用いられています。しかし「かかりつけ医」がどんなことをする医師かということについて認識が共有されているとは言えません。日本病院会で提言してはどうかとの意見が出ましたが、かなり難しいとの見解も目立ちます。そのくらい、「かかりつけ医像」はバラバラなのです。
もちろん、漠然としたイメージはあります。自分の専門領域からの視点だけでなく「全人的」に診療できる医師というのが一般的なものではないでしょうか。「全人的」をさらに細かく見ると、本人の生活や仕事、コミュニティ、家族といったものを踏まえて診療に活かしていくことが含まれるでしょう。患者さんのバックグラウンドを考え、「療養するには家庭環境が悪そうだが、どう解決したらいいだろう」「歩けないと言っているが、家ではどう暮らしているんだろう」ということにも関心を寄せるような医師を思い描く人が多いのではないでしょうか。

ここで注意したいのは、あくまで「かかりつけ医」とは、その医師の持つ機能だという点です。何となく「開業医=かかりつけ医」というイメージを描きがちですが、私は、医療機関としての機能と、そこにいる医師の機能は分けて考えるべきだと思っています。実際、眼科専門、整形外科専門の診療所の医師が「かかりつけ医」かというと、ちょっと違う気がします。
ただし、眼科や整形外科の医師が「かかりつけ医」になれないかといえばそれも違います。たとえば、地域密着型の病院にはさまざまな患者さんが来ます。そこで診療するなかで、外科医であっても内科の肺炎や糖尿病、高血圧にもかかわらないといけないし、退院の際には在宅療養にどういう支援が必要かをケアマネジャーや訪問看護師と相談して決めるケースもあるでしょう。そういう医師は専門領域が「外科」で「病院勤務医」でも、「かかりつけ医」と考えるのが自然です。
整形外科医でも、「自分は骨と関節を診ようと思っていたけれど、来る患者さんは『頭も痛い』『息も苦しい』と訴える人ばかりだ。これは勉強しないといけないぞ」と考える人はいるでしょう。

診療での必要性から「かかりつけ医」になる

――「総合診療専門医」が誕生しますが、少しイメージが違いますね。

総合診療専門医のめざす方向性が間違っているとは思いませんが、若い医師にそういう学び方をしてもらうのが適切かどうかは考えなければいけません。
むしろ、多くの医師がたどってきた道筋のほうが「かかりつけ医」のなり方としては自然な気がします。初めは専門医として診てきたが、専門だけを突き詰めるだけでは患者さんの悩みに応えきれないと関心を広げていろいろな人生経験も積んで「全人的」に診られる素養を身につけるというものです。
先ほど外科医の話をしましたが、自分で開業したり手術件数がほとんどない病院に勤務したりすると、おのずと専門医としての要件を満たさなくなり、専門医を継続することが難しくなるそうです。それは専門医のあり方として正しいと思います。

ただ、「次」のキャリアパスを用意しておくこと、そして、それを何らかの形で裏づけるような仕組みは必要。研修の仕組みとしては日本医師会生涯教育でも、日本病院会の病院総合医でもいいでしょう。そうした研修と並行して専門医療では得られなかった経験を重ねていくことで「かかりつけ医」として磨かれていくと思うのです。
そこで、研修や経験に一定の目安を設けておけば、「これをクリアしたお医者さんがかかりつけ医」と定義づけできるでしょう。厚労省によると、かかりつけ医は「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」と説明していますが、診療報酬の要件にしたり、医療政策の一環に位置づけたりするのであれば、こうしたイメージだけでなく明確な目安も必要だと思います。

そもそも、そういう医師がどこにいるのかは、地域の医師仲間の間ではわかっていても、地域住民や患者にはわかりません。地域や患者さんが「あの診療所、この病院には『かかりつけ医』がいて、自分のことを生活背景も踏まえてしっかり診てくれる」とわかる表示があれば、それこそ医療への上手なかかり方にも役立つでしょう。

――ありがとうございました。(『最新医療経営PHASE3』2021年9月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング