経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第12回
自院の在院日数戦略を考えよ
3月10日の事務連絡では、2021年度の機能評価係数IIについて20年度の数値を継続して用いることが示されました。特に、病院の努力が反映される効率性係数、救急医療係数に対してDPC対象病院の皆さまは落胆されたところもあると思います。次年度がどのようになるかは中医協の議論次第ですが、だからと言って疎かにはできません。3月24日に公開されたDPCデータから自院の在院日数の適正化について今一度見直してみましょう。
効率性係数の計算式を振り返ろう
新型コロナ禍において、救急搬送や不要不急の入院が減ったことで全国的に稼働が落ち込んでいる急性期病院が少なくないなか、苦肉の策として、在院日数を延ばす検討をしているところもあるようです。確かに、大きすぎる稼働滅にはある程度在院日数とのバランスを考える必要はあると思いますが、将来的な収入の源になる効率性係数や患者満足、コンプライアンスという面も考慮したいところです。行動に移す前に、効率性係数の仕組みを振り返りましょう。
効率性係数の算出方法は以下のとおりです。つまり、全国的に症例数の多い疾患について在院日数がコントロールされていることが重要で、必ずしも自院で最も多い疾患の在院日数が短くコントロールされていれば良いということではありません。ということは、全国ではどのような疾患が多いのか、そしてどのくらいの日数でコントロールされているのかを知ることが大切です。自院の在院日数の適正化を検討するための情報源となるものが、DPC公開データです。
効率性係数の算出方法
[全DPC/PDPS対象病院の平均在院日数〕÷〔当該医療機関の患者構成が、全DPC/PDPS対象病院と同じと仮定した場合の平均在院日数]
*当該医療機関において、12症例(1症例/月)以上ある診断群分類のみを計算対象
*包括評価の対象となっている診断群分類のみを計算対象
3月24日公開の19年度DPC公開データ
DPC公開データは「DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告について」というタイトルで、ウェブ上にて公開されています。在院日数はもちろん、救急搬送や紹介・逆紹介等の入退院に関する情報が公開されており、なかには病院名が含まれているものもあります。表に、最新2019年度のDPC公開データから、DPC対象病院のデータのうち症例数の多いDPCコードの上位20位までを示しています。参考までに、18年度データも添えており、右端に在院日数の経年変化が見られるようにしました。平均在院日数は年々減少傾向が緩やかになってきており、全国的なバラつきが少なくなってきているようです。
先にお伝えしたとおり、効率性係数を向上させるには「全国で何の疾患が多く、どのくらいの平均在院日数でコントロールされているか」を知ることが重要です。公開データを活用し、自院の疾患構成と照らし合わせ、特にどの疾患に注目して在院日数をコントロールすべきか、自院の課題を検討されることをおすすめします。(『最新医療経営PHASE3』2021年6月号)
まとめ:稼働が上がりにくくなったときでも、ベッドコントロールに要注意!
- 2021年機能評価係数IIは2020年度スライドへ
- 効率性係数は全国で症例数の多い疾患に対して在院日数が適切であるかが重要であり、必ずしも自院で症例数の多い疾患の在院日数が里要ではない
- 公開データを活用し、自院のベッドコントロールに活かそう!!
株式会社メディフローラ代表取締役
うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。