経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第11回
介護報酬でも重視されている!
摂食機能療法に注目しよう

3月10日、新型コロナウイルス感染症に対応すべく、2020年度診療報酬改定の際にとられた経過措置の延長について事務連絡が出ました。21年度も病院経営に対する新型コロナの影響は小さくないでしょう。一方で、医療の質を上げるための取り組みで、診療報酬を得られるものについては確実に点数化したいものです。その一つに、介護報酬改定でも重視されている口腔ケアがあります。

今次改定では口腔ケアと栄養マネジメントは「当たり前」

高齢者のADLの維持・向上のため、口腔ケアと栄養マネジメントの重要性は言うまでもありません。2021年度の介護報酬改定ではこの考え方がとりわけ強く反映されました。施設系サービスの共通変更項目として、口腔衛生管理と栄養管理の強化が示されました。

今まであった口腔衛生管理体制加算(30単位/月)と栄養マネジメント加算(14単位/月)が廃止され、これらの取り組みを基本サービスとして実施しなければならないものになりました。特に栄養ケア・マネジメントは、未実施の場合に減算(14単位/日)が新設されています(経過措置3年)。これらは介護報酬の話ではありますが、当然、急性期・回復期治療においてこれらのケアがしっかり行われていたほうが、よりADL低下を防ぐことができます。

慢性期、在宅介護領域に携わる医療従事者から、「急性期治療の現場では『病気の治療』に焦点が向きすぎており、その後のことを考えたケアが疎かになっていると感じることがある」という声を耳にします。たとえば、誤嚥性肺炎で入院となった高齢者が再入院とならないためには、口腔ケアや個別性が考慮された食事介助を行うことが重要ですが、退院先となる在宅や介護施設等に必要な情報が申し送られず、再入院となってしまうことは珍しくありません。
そこで今回は、診療報酬にある口腔ケアに対する「摂食機能療法」について注目します。

2種類ある摂食機能療法

診療報酬上で摂食機能療法として認められている加算は、2種類あります。言語聴覚士が主として実施している病院もあると思いますが、やはり、リハビリセラピストはリハビリセラピストしか算定することができない疾患別リハを中心に担い、看護師でも算定可能な摂食機能療法は、リハビリセラピスト以外が積極的に実施するようにしたいものです。そうすることで病院収入が増えるだけではなく、患者にとっても、ケアの機会が増えることになります。

全国的に摂食機能療法の算定には差がある

以前、同じような疾患構成で同じ入院料にもかかわらず、200床に満たないA病院では摂食機能療法の算定件数が100件超/月、300床を超えるB病院では30件/月という対照的な病院がありました。B病院の課題を掘り下げると、①医師が非協力的(嚥下内視鏡検査、嚥下造影の実施)、②複雑すぎる記録ルール、③看護師をはじめとする医療職の知識不足――の3点があり、改善に取り組んだ結果、半年を過ぎた現在はで、約150件/月となっています。
病院を訪問すると、せっかく口腔ケアを実施しているにもかかわらず算定につながっていないケースが多いように感じています。ぜひ、積極的に算定件数を伸ばしていただきたいと思います。(『最新医療経営PHASE3』2021年5月号)

まとめ:看護師を中心に摂食機能療法の積極的な算定をしよう

  • 2021年介護報酬改定で注目されている口腔ケアは急性期でも必須!
  • 摂食機能療法の算定要件を踏まえて、自院の算定可能性を探ろう
  • 急性期病院で口腔ケアがしっかり行われていると後方施設からの評価も上がる可能性大!
上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。

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