経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第10回
入院時に関する加算算定に向け
21年度介護報酬改定の確認を!
新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなか、2021年度の介護報酬改定の答申が1月18日に示されました。介護報酬が始まって21年目となる今回の改正は、医療機関にとっても地域包括ケアシステムを円滑に推進するために注目すべき項目が含まれます。今回の連載では、特に入退院に係る内容について共有したいと思います。
退院当日の訪問看護 主治医の指示で算定可能
退院後に訪問看護サービスを使う場合、退院日に担当する訪問看護師が来院されたことはないでしょうか。地域や病院により、該当患者は必ず退院日に訪問看護師が来院することにしているところもあると聞きます。今まで収入につながらなかった退院日の訪問看護ですが、2021年度の介護報酬改定で「主治医が認める場合」において算定可能になりました。つまり、入院から在宅へのよりスムーズな移行が報酬でも後押しされる形になります。今までは算定できなかったために積極的な来院がなかった訪問看護ステーションからも、退院日に合わせて来院することが増えると予想されます。
退院直後の訪問リハビリテーションが充実
病院で入院期間が短縮されているなかで、退院後の自立支援・重度化防止のためのリハビリテーションの重要性は、言うまでもありません。週6回までを限度としていた訪問リハビリテーションが、医師の指示に基づき継続したリハビリテーションを行う場合に、退院日から3カ月は週12回まで算定可能となりました。早期に在宅での生活を安心して過ごせるよう退院直後のリハビリが重点的に行えるようになったことは、急性期病院にとっても、スムーズな入退院支援のための材料になります。
診察時にケアマネが同行し情報交換した場合の加算が新設
外来診療にケアマネジャーが同行しているケースは散見されると思います。今までは相当する加算がなかったのですが、「利用者が医師の診察を受ける際に同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報提供を行い、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けたうえで居宅サービス計画(ケアプラン)に記録した場合」について、月に1回を上限とした「通院時情報連携加算50「単位/月」という加算が新設されます。この加算の新設によって、病院ヘケアマネが来院する機会が増えることが予想されます。
病院の算定機会にもなる入退院支援関連加算
これらの変化は、単に介護の報酬機会が増えたということではなく、病院と介護の連携する場面が増えることを意味しています。つまり、病院の皆様にとっては、入退院支援加算や介護支援等連携指導料等といった後方支援機関との連携による算定機会が増えるということです。この改定により、医療と介護がWin-Winの関係性になるためには、お互いに収入となる加算の条件を把握しておき、そのために自院ではどのような対応が可能か検討することが重要です。
たとえば、利用者の診察に同行したケアマネが自院の別の入院患者の担当である場合、可能であれば、その入院患者の情報共有も行うことで介護支援等連携指導料等の算定の可能性も出てきます(算定可能な病棟に入院している場合に限る)。
現状の算定状況を把握し、次年度の入退院支援関連の加算算定強化に向けて取り組んでいきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2021年4月号)
まとめ:介護との連携の機会が増える可能性大!改定内容を押さえよう
- 訪問看護ステーションとの連携強化の可能性:退院日に訪問看護の算定可能(主治医が認めた場合)
- 退院後リハビリ強化=より効果的な退院支援:退院後のリハビリについて退院後3カ月は週に12回まで算定可能
- ケアマネとの連携強化の可能性:診療時に利用者とケアマネが同席した場合情報交換を行った内容をケアプランに記録するという加算が新設
株式会社メディフローラ代表取締役
うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。