Dr.相澤の医事放談
第13回
ワクチン接種体制や後方病床
第3波の経営への影響など課題山積

新型コロナウイルス感染症は昨年末から2021年1月にかけて「第3波」と言われる拡大状況が生まれた。第3波では特に重症患者の増加が目立ち、病床ひっ迫も伝えられ、病院経営への影響も懸念される。一方でワクチン接種も始まったが、体制整備の進め方などで議論が起きている。相澤孝夫先生の見解を聞いた。

接種の準備は進めるが青写真は必要

――新型コロナウイルスワクチンの接種が医療従事者から始まりました。

前回、「感染患者の受け入れ体制については国が青写真を描き、それに基づいて医療機関にそれぞれの役割を果たすよう求めるのがあるべき順序」というお話をしましたが、ワクチン接種についても同様の考えを持っています。地域の体制を整備するにしても、やはり国から「いつまでに何本、確保するので、それを踏まえた接種体制を整えてほしい」というメッセージを発信していただくべきだと思います。

もちろん、現場レベルでは体制づくりは進んでいます。たとえば相澤病院の所在する松本平地域では、医療者が約1万7000人いるそうですが、当院ともう2つの病院が「基本型接種施設」として医療者の接種を担当することになっています。業務の流れは、毎年実施しているインフルエンザ予防接種の進め方が活用できると思っています。当院の場合、職員約2000人に対して2、3日で接種させていますから、この方法を用いれば、自院の職員に対しては4日あれば対応できるでしょう。他施設の医療者に対しても同じ体制が考えられます。実際には土日に集団接種することになるでしょうから、だいたい3週間で3000人に対応するイメージです。

一般市民に対しては、長野県松本市では集団接種を想定しており、医療チーム派遣の依頼を受けています。医師1人、看護師4人、事務員2人で1チーム、これを2チーム程度派遣する予定です。

「後方病床」はまず院内で整備すべき

――第3波では、重症患者数の増加と、感染患者の状態が安定した後の「後方病床」の問題がクローズアップされました。受け入れ先が見つからず、新規患者を受け入れられない事態があったと言われましたが、どのようなご見解を持っていますか。

後方病床については、新型コロナというより”病棟マネジメント”の問題だと考えています。つまり、通常の医療の流れと同様に対処すればいいだけの話なのに、それができていないのです。そもそも、脳卒中や心筋梗塞の患者さんが集中治療室に搬送された場合、状態が落ち着いたからといって、いきなり退院させたり他院へ転院したりすることはありません。自院の一般病棟に転棟し、そこから退院する流れが一般的です。それが、なぜ新型コロナだけは集中治療室から退院させる、あるいは他院へ移さなければならないのでしょうか。様子を診る必要があるのなら、自院の一般病棟で診ればいいだけのことなのです。

総合病院では、集中治療科は自科の一般病棟を持っておらず、他科の一般病棟に移したくても「集中治療室で診ればいいだろう」と断られることがあります。新型コロナの患者の受け入れでも同じ事態が起きたなら、それは院内連携と病床管理の問題であって、少なくとも、他院に押しつけるべき話ではではありません。「陰性判定が2回出たけれど心配」との声があるならば、病院が責任を持って証明すればいい。だいいち、自院の一般病棟が「心配だから」といって断る患者を他院に委ねるというのは、病院の姿勢としておかしいと言わざるを得ません。

1~2月期の経営状態落ち込みが懸念される

――日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会による「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査2020年度第3四半期」が発表されました。20年10~12月期も病院経営が依然厳しい様子がうかがえます。

私はそれ以上に、21年1~2月、つまり第3波が山場となった時期における経営の落ち込みのほうが深刻ではないかと心配しています。
まず、患者数が減っていることは間違いありません。感染患者の受け入れ増による一般診療への影響が考えられますし、1月7日の緊急事態宣言以降は、交通外傷や転倒によるケガなども例年より減っていると想定できますし、健診事業の減収も目立ちます。1~2月は例年、インフルエンザ感染患者が多く来院しますが、今年はそれもありません。このこと自体は喜ばしいのですが、経営への影響は否めません。

また、20年度第1~3次補正予算では医療機関への支援金が用意されましたが、それも12月分までで1~2月の事態は念頭に置かれていません。そもそも、これらの措置は第1、2波の影響を考慮したものです。第3波に関しては別途病院団体として新たに調査し、要望していく必要があるでしょう。

――ありがとうございました。(『最新医療経営PHASE3』2021年4月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。