経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第9回
医療の質、報酬面でも注目度高まる
薬剤部門の算定動向を確認しよう

新型コロナウイルス感染症の感染拡大のなか、医療機関の皆様におかれましてはワクチン接種等、新たな対応に追われていることとお察しいたします。緊急事態宣言下で行動が制限され、積極的な営業活動(=集患対策)ができなくなっている現況で、入院単価を確実に上げていく取り組みは必須です。今回は、薬剤部門に関係する加算について紹介します。

改定、働き方改革でも薬剤師のかかわりに注目

薬剤部門は、前回紹介した栄養部門と同様、医療機関では人数の少ない医療専門職で構成されています。しかし、医療安全対策や多剤併用対策など医療の質を高めるうえでなくてはならない組織であることは言うまでもありません。

診療報酬改定の流れを見ると、「病棟薬剤業務実施加算」が新設された2012年度改定から、薬剤師が積極的に病棟業務にかかわることによる医療安全の向上が重要視されるようになりました。直近の改定では、医師や看護師のタスク・シフティングの一つとして薬剤師のかかわりが注目され、薬剤部門の活躍の場が増えてきました。

しかし、限られた人数で調剤や混合、化学療法、医薬品の情報収集や薬品管理、そして薬剤指導等の加算につながる業務を行わなければなりません。
役割が増えているということは、今までの業務整理を見直し、薬剤部門が収入を上げられる部門となるように環境を整える視点が重要です。

薬剤指導は十分に行えているか

薬剤部門が算定できる主な加算に「薬剤管理指導料」があります。薬剤部門の目標管理の数値として把握されている医療機関が多いと思います。薬剤管理指導料は「1」「2」および麻薬管理指導加算があり、医療機関ごとのケースミックスにより算定できる件数や割合は異なりますが、確実に実施した指導について漏れなく算定していくことが大切です。ケースミックスのほか、勤務している薬剤師数も算定可能件数に影響を及ぼします。

20年12月に新しいNDBオープンデータ(年度別レセプト集計および特定健診情報)が公開されましたが、それによると、①薬剤師数は多いほど指導件数は多くなる傾向にある、②同じような人員配置でも、都道府県により実施件数は異なっている――の2点が読み取れます。病院は、専門職がそれぞれ活躍することで収入が上がる構造です。
つまり、十分な人材がいなければ収入は上がりません。少子高齢化の日本において採用と定着は病院の中長期的な課題です。今の人員で可能な算定件数はどれくらいでそれに達しているかどうか、業務を精査するとともに必要な人についても見直す機会にしていただきたいと思います。

新しい加算に目を向けよう

20年度診療報酬改定に、いくつ薬剤部門に関する内容がありました。2つ紹介しましょう。

薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)対策としてあった薬剤総合評価調整加算が見直され、病院が多剤併用について検討する機会を増やせるよう、処方内容の見直しを多職種で行った場合に100点、さらに、退院時に処方する内服薬または抗精神病薬が2種類以上削滅した場合に150点という、2段階の加算に見直されました。
新設された「連携充実加算150点」は質の高い外来化学療法に対する評価で地域の薬局との連携も要件に含まれています。

いずれも薬剤部門だけでなく、医師はもちろん、病院全体を巻き込んだ対応を行わないと算定件数が伸びない加算です。特に算定しやすくなった薬剤総合評価調整加算は疑義解釈が出され、「内服薬の削減又は追加」についても「処方の内容の変更」に該当すると明記されました(20年3月31日疑義解釈その1)。薬剤総合評価調整加算は処方薬剤が減るという検討でなければ算定できないわけではなく、増える場合でも算定できます。

加算に対する知識を正しく共有することで、算定機会を増やしていきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2021年3月号)

まとめ

  • 新型コロナウイルス禍では増患対策よりも単価アップにより重きを置こう
  • 適切な指導が行えるよう業務内容を見直し、必要に応じて人数も見直そう
  • 改定された「旧:薬剤総合評価調整加算250点」→「薬剤総合評価調整加算100点」「薬剤調整加算150点」、新しい加算「連携充実加算150点」にも目を向けよう!特に薬剤総合評価調整加算100点は薬剤の追加の検討でも算定可能
上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。