経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第8回
医療専門職の加算を振り返ろう
~栄養部門

新型コロナウイルス感染拡大の第3波が到来しているといわれるなか、予測が立てにくい患者の受療行動に頭を悩ませている医療機関は多くあります。2020年春頃のような大幅な減収をできるかぎり防ぐために、増患対策よりも必要なケアを確実に行うことで単価を高めていくことに重きを置くことが大切です。本連載でお伝えしてきた「入退院関連の加算」や「認知症ケア加算の身体拘束抑制」以外にも、医療専門職が活躍する加算も重要です。本稿では特に栄養部門が主にかかわる加算について振り返っていきましょう。

医療専門職の活躍は病院収入に紐づいているか

いわゆる「不要不急な患者」が減り、多くのケアが必要な患者の入院割合が高まったと感じる医療機関が多いようです。さらに、新型コロナウイルス以外の感染症や循環器系疾患で入院される高齢者が増える季節となっています。高齢者は入院契機となる疾患のほか、基礎疾患をいくつか抱えているケースが少なくありません。特に栄養は生活習慣病予防等、ADLの質向上を図るうえで重要な要素ですが、多くの医療機関では、栄養部門にかかわる人員は他部門に比べて限られています。

栄養部門の場合、医療機関によっては病院食や職員食堂の献立づくりや調理スタッフの管理など、栄養指導等の患者支援以外の業務に多くの時間を費やしているケースもあるため、病院収入に紐づくことが困難なケースも少なくありません。まず、栄養士として患者満足と病院収入向上のために活躍できる環境を整える(献立作成は委託先の調理業者にお願いする、委託できる業務について整理を行うなど)という視点が重要です。

栄養指導の必要な患者をまずは抽出しよう

栄養部門が関係する加算というと、第一に「栄養指導」が挙げられます。病院における栄養指導は表にあるとおりですが、皆さまの医療機関ではどのような算定ルールのもと、指導が行われているでしょうか。

先に述べたとおり、栄養指導にどのくらいの時間を割けるかによって、実施可能な算定件数は異なります。そのため、一般論として「このくらい算定すべき」と目安を定めるのは難しいですが、独自に算定可能な目標を設定し、実施していくことはできると思います。目標達成に向けて積極的に栄養指導の対象となる患者を抽出することが、その第一歩になります。

ある医療機関の部門別ミーティングで、特別食が算定されている患者に対する指導件数の話題になりました。その際、栄養部門から「どの患者が特別食を出されているのか把握できない」という発言がありました。これは近年、栄養部門のスタッフが総入れ替えしたため、栄養部門で電子カルテを活用できる人がいなかったこと、そして、そのことを経営管理部門も把握していなかったことが要因でした。

情報収集に便利なツールがあっても、使いこなせているかどうかは別問題です。必要な患者に必要なケアを提供できるシステムの使い方を共有し、改善行動に移せる環境を整えましょう。

「栄養情報提供加算50点」など新しい加算に目を向けよう

2020年度診療報酬改定で新設された栄養情報提供加算は、算定しているでしょうか。「入院時栄養食事指導料を算定している患者について、退院後の栄養・食事管理について指導するとともに、入院中の栄養管理に関する情報を示す文章を用いて患者に説明し、これを他の医療機関や介護老人福祉施設等の医師、または管理栄養士と共有した場合に入院中1回に限り栄養情報提供加算として50点を所定の点数に加算する」というものです。

近年の改定では、医療専門職の働きを評価する加算が増えています。栄養状態を連携して把握することは再入院の防止にも役立つだけではなく、後方施設との連携強化にもつながります。実際、徐々に当該算定件数が伸びている医療機関が増えています。皆さまの医療機関の算定件数を、ぜひご確認ください。(『最新医療経営PHASE3』2021年2月号)

まとめ

  • 新型コロナウイルス禍では増患対策よりも単価アップにより重きを置こう
  • 栄養指導の必要な患者の抽出は確実に行えている?
  • 必要な患者に必要なケアを行える環境を整えよう
  • 新しい加算「栄養情報提供加算」にも目を向けよう
上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。