実践的看護師マネジメント
第14回
患者・家族や連携先と関係をこじらせない
「ビジネス・マナー」習得を

患者・家族への応対だけでなく、連携先、あるいは関係業者と、看護師は役割の拡大に伴いさまざまな人たちと接する。そこでは当然、「ビジネスマナー」が求められるが、その研修、教育は後回しになりがちだ。ここでは看護師のポジションに関わらず、誰もが知っておきたい「マナー」の一例を示してもらう。

企業の場合、新人教育カリキュラムには必ずと言っていいほど「ビジネスマナー研修」が入っていますが、病院は少し状況が異なります。
私もよく病院の新人教育で接遇研修を担当しますが、2時間で講義してほしいとのご要望が多く「ビジネス・マナー」まではたどりつきません。病院でのビジネスマナーは、管理職研修などで触れることがほとんどです。本来、新人研修で習うようなことを医療者は教わらずにくるため、「看護の能力は高いのに、失礼な看護師」が誕生します。

しかし、地域連携や多職種協働が叫ばれている昨今、管理職に限らず、看護師は地域の勉強会や研修会、退院調整と、異なる組織の方々と接する機会は増えています。
そこで本稿では、患者・家族への接遇時や多職種との連携時に必要な看護師のビジネスマナーを取り上げます。

挨拶は「語先後礼」と角度が重要

「受け持ち看護師の奥山美奈と申します。よろしくお願い致します」。正式な挨拶では、セリフを言い切ってからお辞儀をする「語先後礼」が求められます。相手の目を見て言葉を言い切ってから、そしてお辞儀。また、通常の挨拶は笑顔でするものですが、医療現場では笑顔がふさわしくない場面も多々あります。患者さんが急変転院なさるときや死亡退院等のときのご挨拶には、真摯な態度が求められます。表情の管理も大切なマナーとなります。看護師のなかには、忙しさをあえて表情に出す人も多いので、その場合は表情の管理をするように指導が必要です。

「物の指し示し」

「すみません、5D病棟ってどう行くんですか」「検査室ってどう行きますか」と、患者さんやご家族に尋ねられることがあります。このときも、正しい「指し示し」があります。
ご案内する相手と向かい合い、胸襟を開いて(背中を見せないこと)指先を揃え、めざす方向を腕と手を用いて指し示します。近い場所なら腕の角度を小さくつけて、遠い場所を示すなら角度はつけずに腕を伸ばして示します。「こちらに掛けてお待ちください」などの案内なら、すぐに座れるようにいすを引いてさしあげます。尿検査の紙コップなどをお渡しするときは「こちらをお使いください」などと、「指し示し」+「言葉がけ」で、より丁寧な感じを相手に与えることができます。

「物の授受」「名刺交換」のマナー

「ちょっとカルテ取って」「そこの資料一部回して」と、物を相手に渡したり受け取ったりすることもあります。これら「物の授受」のルールは、腰よりも上の高さで、両手で言葉を添えて行うというもの。名刺交換のときも、基本的にはこの「物の授受」の法則で行います。基本は、相手が差し出した名刺を両手で受け取るようにしますが、こちらも名刺を持っていて同時に交換するようなときも出てきます。そのときは、相手の名刺入れの上にこちらの名刺を差し出し、こちらの名刺入れの上に相手にお名刺をいただくようにします。

電話対応

医療者と企業人のマナーで一番の差があるのは、電話対応だと私は思っています。病棟等で働いていると内線電話が多いので、たいていは「はい。2階です」と、いきなり部署名から切り出しても通じます。でもそれが癖になってしまうと、外線電話に対しても同じように答えて相手を驚かせてしまいます。また、ワンコールではなく、2コールで取りましょう。顔が見えないぶん、忙しさを感じさせない応対が必要です。

メール文書はユーザビリティを意識する

病院や施設だけで働いていると、対外的にメールでやり取りすることは少ないでしょう。そのため、看護師からのメールはしばしば、件名が入っていなかったり署名がなかったり、重要な人を「CC」に入れていなかったりとマナーが悪いことがあります。

公文書と違って、メール文書の場合は流行のようなものもあるので、一概に「正しい作法」は示せませんが、読みやすく15文字程度で改行したり、読むことのストレスを減らすために文脈ごとに数行の空間を入れたりと、いろいろと進化します。パソコンで相手がメールを読むのかスマートフォンで読むのかによって改行を変えたりする人もいます。根底にあるのは「ユーザビリティ」。相手が読みやすいようにという工夫をすることを「ユーザビリティ」と言います。

地域医療構想を実現していくためには、在宅医療を行っている組織や介護施設、地域の事業者ともますます連携していかなければなりません。かかわっていく相手の大事にしているマナーをこちらも大切にするという姿勢が、多職種や地域と協働していくうえでは大切になってきます。
看護師や医療職のマナーがクレームにつながることがないよう、マナー教育を充実させていきましょう。(『最新医療経営PHASE3』2021年2月号)

奥山美奈
TNサクセスコーチング株式会社代表取締役
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。