実践・医師の働き方改革
第7回
短時間のコミュニケーションが
個人、組織にいい変化をもたらす

コーチングで実現!病院・地域をいきいき活性化する

10月にコーチ・エイ社が提供している医療従事者限定の「3分間コーチワークショップ」を受講しました。
一般的に、1on1のコーチングを行う時は、5~30分程度のまとまった時間と場所等を確保したうえで行います。しかし、医療者同士の場合、そのようなまとまった時間や場所を確保することは難しい場合も多いと思われます。

「3分間コーチワークショップ」は2日間、計7時間で修了するプログラムです。「3分間でも双方向の対話ができることを体感」「参加者同士の相互理解」ができるということで近年、多くの企業で続々と実施され始めています。

このワークショップの特徴は、コミュニケーションが変わる「体験」をめざしています。自分自身のコミュニケーション傾向を棚卸しする目的で、Webでのアンケートを事前に行います。同社が過去に調査した管理職リーダーのデータを基に、スコアを算出。コミュニケーションの強みと弱みを把握したうえでワークショップを行うので、自分のコミュニケーション上の課題克服に役立ちます。ワークショップ後には、部下とのコミュニケーションに役立つコラムの配信があり、継続した学習を促してくれます。

ワークショップはZoomを用いたオンライン形式で行われました。2人ずつのペアになり、3分という非常に短い時間で行うロールプレイ(ブレイクアウトセッション)を、お互いにコーチ役とクライアント役を交代しながら、幾度となく行っていきます。1on1の相手はランダムに振り分けられ、且つ「今後どのように病院運営をしていけばよいか」といったお題を直前に出されるため、ぶっつけ本番です。

参加者全員が医療従事者であったため、初対面であってもお互いに気心が知れるところがあり、医療関係のお題が出されても、スムーズにロールプレイが行えます。また、病院長も多くおられ、病院経営の難しさや日頃ご苦労なさっているところを垣間見ることもでき、大変勉強になりました。

医療者が取り組みやすい短時間型のコーチング

時間を確保したなかで行われる、病院経営者向けのExecutive Coachingは「エグゼクティブ自身が変革の起点となる」ために、そして経営者が幹部向けに行うコーチングも「次のリーダーを創る」ために、もちろんこれからも必要です。ただ忙しくて時間がかけられない状況では、短時間でも十分に有効なコミュニケーションをとることが可能であるという体験は、医療従事者にとっても希望となり得ます。

「3分間コーチ」という短時間型のコーチングを頻回に行うことによって、部下との日々のコミュニケーションやかかわり方が少し変わるだけで、スタッフの病院運営に対する理解や考え方に変化が起こり、みんながやりがいをもってイキイキと活躍できるようになる可能性が芽生えます。

実は私自身が静岡病院で勤めていた時代に、医療スタッフに対して行ったコーチング・スタイルこそが、まさに「短時間型コーチングの多用」でした。医師と医療スタッフが会議室などで面談をすると、立場の違いから医療スタッフが萎縮してしまいがちです。そこで、廊下や階段などですれ違った時にさりげなく、「そういえば、○○についてはどうすればよいと思いますか」などと質問を1つ、2つ投げかけていました。そうすると、あまり肩肘張った状況ではないため、「ああ、それは△△するのがよいと思います」などと、率直なフィードバックを返してくれることが多くありました。

「3分間コーチ」は、コミュニケーションに対する解釈や捉え方による変化をもたらします(図、表)。食わず嫌いにならず、多くの病院経営者の先生方が先頭に立って、院内のコミュニケーション環境を積極的に整えていくことが「令和の時代」には強く求められているのではないかと考えます。(『最新医療経営PHASE3』2021年1月号)

佐藤文彦(Fumihiko Sato)
Basical Health産業医事務所 代表
1998年、順天堂大学医学部卒業。2006年、同大学大学院内科・代謝内分泌学卒業。12年、同大学内科・代謝内分泌学准教授。順天堂大学付属静岡病院糖尿病・内分泌内科長など、糖尿病の足の最先端分野での診療・研究を長年行っていた。16年、日本IBM株式会社専属産業医を経て、18年より現職。日本糖尿病学会研修指導医、日本コーチ協会認定メディカルコーチ。