Dr.相澤の医事放談
第10回
病院外来の問題解決に不可欠な
「救急初診」と「再診の滞留」

厚生労働省の医療政策で話題になっているものの1つが「外来機能の分化」だ。「一般外来」と「専門外来」の線引きが議論の中心になっているが、相澤孝夫先生は「初診救急」「再診」の検討が必要と訴える。いずれも病院単独の解決は難しく、地域の診療所との体制整備が不可欠とも強調する。

専門外来を紹介状なしで受診する例は少ない

――2019年11月に全世代型社会保障改革会議で外来機能の再検討が提起され、現在、厚生労働省の検討会でも外来機能の分化が話題になっています。一連の議論をどう見ますか。

現在国で議論されている内容は、現場ではすでにほぼ実現されていると思います。一般外来と専門外来の線をどこで引くかなどが話題になっていますが、そもそも、「一般」「専門」の線引きはそう簡単ではありません。それに、多くの人が「専門外来」と言われてイメージするのは、がん治療の化学療法や、がんが疑われるのでCTで撮影するといった際にかかる医療機関でしょう。今や、7割がかかりつけ医を持っていることを踏まえるならば、こうした医療機関にはたいてい紹介状を持参してくると考えられます。飛び込みで「CT撮影をしてください」と来るケースはほとんどないはずで、かかりつけ医を持たない3割の人がそういう受診をするのかもしれないけれど、そのために地域の医療体制をここまでかき回す必要があるのか、疑問です。

夜間休日の急変時に地域でどう対応するか

――一方で、病院の外来を現状のまま続けることは病院の医師の疲弊につながるとの指摘もあります。

病院の医師にとって、負担になっている外来問題は大きく2つです。
1つは、初診患者の対応です。紹介状を持たずに病院に来る患者の大半はウォークインの救急受診で、しかも、夜間・休日です。こうした患者さんの多くは、日中ならばかかりつけ医に診てもらい、病院の受診が必要なら紹介状を持参する流れになっています。しかし、かかりつけ医が休診日だったり夜間は応対できなかったりすると、患者さんは病院に駆け込むことになります。病院としては「紹介状を持ってきてください」と追い返すわけにはいきませんから、この問題を解決するなら、夜間・休日の体制を地域の診療所間で整備していただく必要があります。それなしに「大きな病院にかかったので選定療養費を徴収」というのは、いかがなものかと思います。

外来の再診患者を診療所に送り出すには

――もう1つは何でしょうか。

外来の再診患者さんがそのままいついてしまうことです。背景には、診療のあり方と患者負担もあると思っています。一刻一秒を争う疾患ではなく、たとえば高血圧で地域医療支援病院と診療所のどちらに行くかとなった場合、患者さんはどう考えるか。前者では医師も自分の負担を軽くしたいこともあって月1回の受診を勧め、長期処方を出すでしょう。一方、診療所は週1回の受診を勧めるというのが一般的な診療スタイルではないでしょうか。「血圧も変動するし、調整も必要だから1週間に1度来てください」と言われたら、患者さんはそうせざるを得ません。でも、実際にはちょっと様子を見て処方せんを出すだけで、そのたびに窓口負担を強いられたら、患者さんの足は病院に向くでしょう。実際、当院でも「先生、せっかく診療所をご紹介いただいたのに申し訳ないけれど、病院に戻ってきていいですか」と言われることがあります。

これを解決するには、紹介状なしの来院に選定療養費を課すより、もっと患者が納得してかかれる仕組みを用意すべきです。私が提案しているのは「外来診療計画書」の作成です。外来診療を続ける必要があると認めた患者さんについては、あらかじめ診療計画を作成して示してもらえれば、患者も納得するはずです。実際、放射線治療や化学療法はそうしているし、JCIでは認定の際、半年に1回外来サマリーを作成することを求めています。私は病院がまず作成してもいいのではないかと思っていますし、外来診療の質を向上させるうえでも有用でしょう。

――いずれも、病院単独で解決できる課題ではなさそうです。

初診患者の紹介状なし受診を減らすなら、医療機関間の連携を整備して患者さんが病院を受診しなくても安心できる体制を構築する必要がありますし、再診患者を地域に戻すなら、逆紹介をもっと後押しするような仕掛けが必要でしょう。

本誌12月号でも言いましたが、現在は「かかりつけ医」につなげようとしても、どこにかかりつけ医がいるのか、病院の若い医師は知らないこともあります。それは病院が支援する必要があると思いますが、「うちは安心してかかってもらえますよ」という診療所が、わかりやすいように手を挙げていただけると一層、逆紹介も進むと思います。

――ありがとうございました。(『最新医療経営PHASE3』2021年1月号)

相澤孝夫
社会医療法人財団慈泉会理事長
相澤病院最高経営責任者
一般社団法人 日本病院会 会長
あいざわ・たかお●1947年5月、長野県松本市生まれ。73年3月、東京慈恵会医科大学を卒業。同年5月、信州大学医学部第二内科入局。94年10月、特定医療法人慈泉会理事長。現在、社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。2010年、日本病院会副会長。17年5月より日本病院会会長。