実践的看護師マネジメント
第13回
説明や指導時に気をつけたい4つのこと

看護師は立場上、年上や子ども、豊富な知識を持った人、そうでない人とさまざまな人に対して「指導」しなければならない。しかし、その伝え方を誤ると、真意が伝わらないばかりか、クレームという形になって返ってきてしまう。相手に「伝わる」説明・指導をするうえで避けたい4つのポイントを解説する。

看護師は、病状説明や退院指導など、患者さんやご家族に指導する機会がたくさんあります。なかには、看護師の指導が「威圧的で怖かった」「一方的に意見を押しつけられた」というクレームにつながったこともあるでしょう。また、指導者や管理者となればスタッフ指導をする場面も増えます。
人に説明したり指導したりするということは、とても難しいものです。今回は、人に説明や指導をするときに注意したいことを紹介します。

小馬鹿にしながら教える

「こんなことも知らないの?」という、本音が出てしまう人、確かにいます。これは「自分は人よりも優秀だ」という自己認識を持つ人の言動ですが、でも、それは誰かと比べて自分がほんのちょっとだけ優秀ということがほとんどです。本当にすごい人は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉どおり、謙虚です。指導する側に立つようになったら、自己研さんに励み、自身の指導に対してアンケート聴取をするなどフィードバックを受ける機会をつくり、謙虚な姿勢を保ち続けることが大切です。

専門用語ばかりを使う

先日、私の会社にホームページをつくる業者の営業担当者が訪ねてきて、「LPをつくってプロダクトローンチやれば完璧ですよ」とまくしたてました。LPというのは「商品ページ」、プロダクトローンチとは「商品を売り出す前から見込み客を集めて爆発的に売るマーケティング手法」を意味するそうですが、私には何のことだかさっぱりわかりませんでした。何を言っているのかがわからない人からは、商品を買うことなんてできません。ここで、その人も「自分のセールスの何が悪かったのか?」と振り返ることがなければ、ずっと「売れない理由」はわかりません。指導する立場になったら「アンケート聴取が大切」と書きましたが、こうした理由からも、フィードバックを受ける機会をつくることは非常に大事なのです。

相手に伝わらなかったということは、そのとき使った表現や言葉が「一般的ではなかった」という証です。相手の属する世界でこの言葉は「通じるかどうか」を考え、「わかる言葉で説明や指導ができる」という人は「一般化する能力」に長けている人です。褥瘡は「床ずれ」と表現するなどが「一般化」です。人は理解できていなくても、説明している相手に気を使って「うん、うん」とうなずいて聞くことも多いので、説明後の理解度を確認することが大切です。「伝わったことが伝えたこと」というあり方を、看護師に持たせることが重要です。

子ども扱いした言葉や表現を多用する

専門用語の多用は相手の理解を阻みます。説明や指導の際にはよく「10歳の子どもでもわかるように説明せよ」言いますが、私はこの言葉の意味を誤解すると、逆に相手を不快にしてしまうので気をつけないといけないと思っています。上記の表現は「それだけわかりやすく伝えよ」と言っているのであって、「幼稚な言葉を使え」という意味ではありません。

私の顧問先で認知症の患者さんの痰を吸引するとき、「ゴロゴロ治しましょうね~」と声をかけたり、食事を全量摂取したときも「全部食べれてよかったでしゅね」などと言う看護師がいてとても気になるので注意してほしいと他の看護師から依頼されたことがありました。嘘のようなホントの話ですが、本当にこんな人もいます。ご家族からクレームを受ける前に改善が必要です。

相手の話を否定し自分の意見を押しつける

私が新人看護師だったころ、先輩の看護師が、糖尿病で血糖コントロールができずに教育入院となった患者さんへ退院指導をする場面がありました。先輩がひとしきり指導を終えたあとで患者さんが「でも仕事で営業だから飲みにいく機会は減らせない。血糖コントロールができるかわからない」と言いました。するとその先輩は声を荒げて「そんなこと言っていると本当に死んじゃいますよ、いいんですね」と言いました。そのとき、患者さんはその先輩看護師にそれ以上は何も言い返さず退院しましたが、半年後に高血糖で再入院してきました。結局、この先輩の退院指導は、自分の意見を通しただけのものとなりました。

私たち医療者には、自己陶酔や自己満足の指導になっていないか俯瞰する能力が必要です。退院指導は、患者さんの生活を最大限に尊重しながら「何をどうしていくか」「どうできるか」を正直にディスカッションできる場でなければなりません。医療者は、患者さんはとても遠慮をしているものだということを、あらためて認識しておく必要があります。(『最新医療経営PHASE3』2021年1月号)

奥山美奈
TNサクセスコーチング株式会社代表取締役
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。