実践・医師の働き方改革
第6回
コロナ禍にこそ求められる
組織活性化のためのアクション

コーチングで実現!病院・地域をいきいき活性化する

新型コロナウイルス感染症(COVID-19:以下コロナ)が全国の医療機関に多大な影響を及ぼしたことは、ご存じの通りです。ただ、このコロナ禍において、上手く乗り切ろうとしている医療機関とそうでないところと、予想以上に二極化したと言えるかもしれません。上手く乗り切れそうな医療機関では、ある一定の割合において、「病院内の多職種間のコミュニケーションが円滑かつ活発」を理由として挙げています。

これは、株式会社コーチ・エィ(https://www.coacha.com/)が今年6月、医療者を対象に実施したアンケート調査からわかったことです。質問内容については、私と同社で打ち合わせを行ったうえで決め、インターネットを通じて実施。同社のコーチング・プログラムに参加した135人の方々から回答をいただきました。医師38%、看護師25%と、医療現場の主たる医療職が6割以上を占めていました。役職は経営幹部21%、医局長・科長クラス27%、師長クラス12%と、こちらも6割以上が医療機関の中核を担う方々でした。

コロナによって自分達の医療現場が影響を受けているかを質問したところ、「大きく影響を受けている」「多少受けている」と合わせると97%以上が、何らかの影響を受けていました。そこで、コロナ禍において、コーチングが役立ったか否かを尋ねたところ、図1の通り、56%もの医療者が、コーチングが役に立ったと回答しました。

急性期の状況ではスタッフに対して、ティーチングのほうがよいのではないか、上意下達の連絡事項のほうがスムーズではないかということもあると思います。しかし緊急時だからこそ、多職種同士が積極的にコミュニケーションをとりあうことが大切であり、コーチングが非常に役立っていると実感している医療者が多いことが、この結果から推察されます。コロナの影響が長期化することによって、医療者への心理的負荷も大きくなっています。そういった対応においても、コーチングを活用していくことが有益であると言えるのではないでしょうか。

モチベーションやチーム医療 働き方改革にも効果

同時に、「医師の働き方改革」についても聞いています(図2)。
5割近くの医療者が「とても進んでいる」「やや進んでいる」と回答しています。しかも図3の通り、医師以外についても半数以上が「とても進んでいる」「やや進んでいる」と回答。一般企業での働き方改革は昨年から始まっていますが、コーチングを取り入れている医療機関では積極的に取り組んでいることがうかがえます。

具体的にどんな効果があるのかを質問したところ、いずれの項目でも、予想以上にコーチングが役立っているという回答に、少々驚きを隠せません(図4)。特に、「他職種とのコミュニケーション」「職員のモチベーション向上」は9割以上が、「チーム医療」「管理職の意識改革」でも9割近くが有用と回答しています。他にも、「医師の定着率の向上」でYesと答えた割合の高さも、他のアンケート調査では見られないレベルになっていると思います。

このアンケートでは、ある程度のバイアスがかかっていることは否めませんが、それを差し引いても、これから「医師の働き方改革」や医師・看護師の確保をどのようにすればよいかを考える際に、コーチングを積極的に取り入れ、組織の活性化を図ることも有用な一手と考えられます。今回の調査は、これからの医療機関の方向性を示すうえでインパクトがある結果だと、私は考えます。(『最新医療経営PHASE3』2020年12月号)

佐藤文彦(Fumihiko Sato)
Basical Health産業医事務所 代表
1998年、順天堂大学医学部卒業。2006年、同大学大学院内科・代謝内分泌学卒業。12年、同大学内科・代謝内分泌学准教授。順天堂大学付属静岡病院糖尿病・内分泌内科長など、糖尿病の足の最先端分野での診療・研究を長年行っていた。16年、日本IBM株式会社専属産業医を経て、18年より現職。日本糖尿病学会研修指導医、日本コーチ協会認定メディカルコーチ。

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