経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
第5回
医師以外が算定可能な指導料や加算を見直そう!

9月10日に3病院団体(一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会)から出された「新型コロナウイルス感染拡大による2020年7月分病院経営状況調査」によると、今年7月も医療機関における全国的な経営難は続いている状況が明らかになりました。9月に入っても依然として厳しい状態だと訴える医療機関もあれば、(医療機関数等の地域ごとの事情はありますが)入外ともに患者数や収入が新型コロナ禍以前に戻りつつある医療機関も出てきているようです。今回は、元気を取り戻している医療機関の事例から、今どういう改善思考が必要か考えていきましょう。

加算や指導料を見直そう!――在宅療養指導料

新型コロナ禍で経営改善に向かっている病院では、売上増のために「医師以外が取り組むことができる加算や指導料の算定を見直した」という話をうかがいます。例として紹介する指導料は、看護師による在宅療養の指導を評価する「在宅療養指導料」です。
昨今の診療報酬改定では、医師や医療従事者の負担軽減のため、必要な指導をするための手順が効率的になってきている加算・指導料関係が増えてきています。この在宅療養指導料も2020年度の診療報酬改定により、医師の指示書が不要になりました。この加算は、在宅療養指導管理料を算定している患者について、看護師・助産師・保健師が30分以上の療養指導を行った場合、退院時、または外来来院時に算定できるものです。

昨今では「看護師外来」として、予約制で在宅療養指導を行っているところも増えてきました。しかし、外来に医師事務作業補助者等を十分に配置していない医療機関では指導できる看護師数が足りない等の課題があり、全国的に十分に算定が広がっているとは言えず、病院によって取り組み状況にはバラつきがみられます。

継続看護で加算算定できる!――看護師たちの本音の本音

ある地方都市にある、中規模急性期病院の事例を紹介しましょう。もともと、ストマ装着患者に対する在宅療養指導料は外来で算定していましたが、月に0~3件という程度でした。新型コロナウイルス禍において加算を見直していると、「認定看護師でなくても指導ができるとは知らなかった」「この加算はもっと算定できるのではないか」という声が病棟看護師から上がりました。

「ストマのみならず、糖尿病や在宅酸素を必要とする患者(在宅療養指導管理料に該当する患者)は多く退院している」「(新型コロナウイルス以前は)外来患者に病棟まで上がっていただき病棟看護師が指導をしていたこともあったが、在宅療養指導料として算定していなかった」といった声もあがっています。
これを受けて外来看護師からは「指導できる患者がたくさんいるのはわかった。ただ、すべての患者に対応するとなると、外来看護師の数が足りない」との意見が出ました。
そこで病棟看護師は、「予約制であれば病棟のシフトをコントロールすることで病棟看護師が応援を行うことも可能。何より、私たちは入院から外来の継続看護を行いたかった。今までは継続看護を行うにあたり適当な評価がないと考えていたが、在宅療養指導料を算定すれば継続看護が実施できるだけでなく、病院収入にもつながる。無理することはないから、できるところから行っていきませんか」との発言があり、外来看護師は領かざるを得ませんでした。
この後、経営トップが在宅療養指導料の算定件数アップを目標に掲げ、具体的に看護師のシフトの調整や指導する部屋の確保等が行われ、徐々に算定件数が増えています。

「患者のために」という思いと病院経営がリンク!

新型コロナ禍のみならず、少子高齢化や日本経済の行く末等、医療現場を取り巻く環境はさまざま不確定要素であふれています。確かに変化は痛みを伴うものですが、中長期的により良い働く環境をつくり上げていくためには避けて通れません。
しかし「変化」ということを強調しすぎてしまうと抵抗も大きくなるもの。変化しないといけないから行動するのではなく、医療従事者として「患者のためにできることを行う」という大前提から行動を起こすことを肝に銘じましょう。

今回紹介した病院の例も、病棟看護師がずっと行いたいと思っていた継続看護を、「病院収入のためになるならば何を迷うことがあるか」と変化に対する抵抗を押し切って導入したケースと言えます。経営トップは、職員があるべき姿を実現できるよう、目標値を掲げて院内で共有するなど、職員が患者のために行動を起こせる環境を整えましょう。(『最新医療経営PHASE3』2020年11月号)

まとめ

  • 厳しいときこそ原点に戻れ!
  • 視野が狭くなりがちなときこそ医療従事者としてのあるべき姿である「患者のために何ができるか」を考え、行動を起こそう。
上村久子
株式会社メディフローラ代表取締役

うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。