経営トップが知っておきたい病棟マネジメントと診療報酬
経営戦略に活かすために 新看護必要度の理解を深めよう!

はじめまして! 病院経営のアドバイザーとして全国の医療機関でお話しさせていただきます上村久子と申します。この連載では経営者としてぜひ把握していただきたい「人が動く」マネジメント方法について、データ分析の見方や院内にどのように伝えていくとより効果的かということをお伝えしていきます。第1回は「マイナー改定」と言われた2020年度診療報酬改定のなかで、一部の医療機関に多大なる影響(特に「急性期一般入院料1」算定病院)を与えた「重症度、医療・看護必要度」についてお話しします。

重症度割合は看護部門だけで
コントロールできない

「重症度、医療・看護必要度」は、もともと2008年度診療報酬改定で「重症度・看護必要度」という名称で始まったことから、院内では看護部門が管理をすべきものとして扱われている病院がいまだあります。本来、重症度割合は施設基準という病院収入の多くを占めるものであるにもかかわらず、リーダーの理解が進まないという声も耳にします。特に重症度割合が下がると看護部が責められるという事態はさらなる改善を鈍化させることになるため、避けなければなりません。重症度割合の対策は、病院全体としての行動変容が必要となります。

重症度割合は自院の(制度上の)急性期度合いを測るためのツールです。診療報酬改定は、評価者(主に看護部門)のスキルが関係していた「重症度、医療・看護必要度㈵」の時代から、算定される診療行為と紐づいた「重症度、医療・看護必要度㈼」の時代にシフトしています。このことは、看護部門が重症度割合をコントロールできるものではなくなっており、自院が急性期症例を正しく集患し、適切な在院日数のコントロールが出来ているかどうかが、そのまま重症度割合に反映される制度に変化しつつあることを意味しています。「重症度、医療・看護必要度㈵」の時代は「重症度割合が下がっている!」と院内で号令が出たら不自然に重症度割合が上がっていくということがあり得たのですが、そうはいかなくなったということです。

自院のめざすべき病院像に
即した対策が必要

「重症度、医療・看護必要度」を考えるうえで「入院料における重症度の基準を超え続ける」ことと「データ精度を上げること」は、それぞれ対策が異なりますので、分けて考える必要があります。実際のところ、看護部主導で改善できるのは「データ精度」であり、「重症度割合を上げる」ためにはベッドコントロールと入退院支援、集患対策が必要となり病院全体を巻き込んだ対策が必要になります。「重症度、医療・看護必要度」における自院の課題を考える際には、表1を参考にこの2つの視点を分けて考えていきましょう。

重症度割合の成り立ちを把握し
具体的な改善行動を考えよう!

「重症度、医療・看護必要度」の全体像を理解したら、次に理解したいことは「重症度、医療・看護必要度」のデータに対する理解と2020年度改定の変更点です(表2)。重症度割合がどのように成り立っているのか、注意すべき点を把握することで自院の改善点を把握しましょう。25年の地域包括ケアシステムの確立に向けて、今後ますます急性期一般入院料1に対する要求基準が高まっていくことが予想されています。また、18年度改定の新基準(A1点・B3点以上+認知症の2項目いずれかあり)の影響で重症度割合が大きく上がった急性期一般入院料1以外の病院も、注意が必要です。「重症度、医療・看護必要度」としてどのような病院が急性期として評価されるのか把握することで院内の受け入れ態勢を整え、中長期的な対策を行っていきましょう。

上村久子(株式会社メディフローラ代表取締役)
うえむら・ひさこ●東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。

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