これから始める病院原価計算
第7回
新型コロナ感染拡大による経営への影響調査から病棟機能転換の検討を開始

新型コロナウイルス感染症では感染対策コスト増、患者減少により病院経営に大きな影響が及んでいる。毎月の医業収益、医業費用のチェックはもちろんのこと、原価計算分析を行うことで、診療体制の見直しが図られ、経営悪化を食い止めることが可能だ。

新型コロナ感染拡大が病院経営に与えた影響

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が実施したアンケートの結果によって、全国の病院における4月の医業利益率が、前年比で10・1ポイント下落していたことがわかりました。

2019年11月に公開された医療経済実態調査の結果をみると、利益率が10%を超えている病院は8・3%しか存在していなかったため、単純計算すると、9割以上の病院が赤字だったことになります。
実際には、病院所在地や感染者の受け入れ有無などによって偏りがあると考えられますが、新型コロナの感染拡大が病院経営に大きな影響を与えていることがわかります。

病院全体の損益から科目ごとの前年比を確認

ここからは、近畿地方の新型コロナ感染患者受け入れ病院において、4月の経営状況を前年と比較した結果(図1)を紹介します。
まず、同院における4月の医業収益をみると、入院収益が14・2ポイント、外来収益が17・3ポイント減少し、全体では14・9ポイントのマイナスになっていました。

新型コロナ受入れ病院

次に、医業費用をみると、診療材料費は19・3ポイント減っていましたが、医薬品費は4・6ポイントしか減少しておらず、給与費は2・3ポイント増加していました。その他の費用を含めた合計は2・1ポイント減にとどまっており、医業収益と比べると、減少幅が小さかったことがわかります。

原価計算の結果からみた診療科による影響の違い

同院において診療科別の原価計算を実施したところ、病院全体のトレンドとは一致しない動きをしている診療科がありました。
診療収益と直課費用(=医薬品費・診療材料費・医師給与費の合計)の前年比較をした結果(図2)をみると、内科は診療収益が下がっているにもかかわらず直課費用は増えており、整形外科はその真逆の状況になっていることがわかります。
その他の診療科は病院全体と同じ傾向を示していますが、影響の度合いは診療科ごとに異なっていることが確認できます。

各診療科の診療収益・直課費用の前年比較

詳細な分析結果をもとに病棟機能転換の検討を開始

さらに詳しく分析したところ、内科は、予定入院延期による患者数の減少と、多くの化学療法を外来に切り替えた影響で収益が下がっていました。
しかし、化学療法の件数は横ばいだったため医薬品費は減っておらず、4月の医師増員に伴い直課費用は増えていました。

入院日数別限界利益

整形外科では、手術が2割減少したことに伴う材料費の低下により直課費用が減っていましたが、転院を断られたことに起因する入院の長期化が延べ患者数の増加につながり、診療収益が増えていました。
図3を見るとわかるとおり、入院日数の延長は、1入院当たりの限界利益(診療収益─医薬品費・診療材料費)を向上させます。
同院では、これを機に1入院患者当たりの収益性を高める方針を掲げ、稼働率の低い急性期病棟を回復期リハビリ病棟に切り替えるための計画を策定しています。

このように、経営状況のみえる化は病院経営に大きな変化をもたらすことがあります。抜本的な改革が必要なときこそ、地道な分析を心がけましょう。(『最新医療経営 PHASE3』7月号)

小川陽平(株式会社メハーゲン医療経営支援課)
おがわ・ようへい●2012年10月、株式会社メハーゲン入社。IT企画開発部に配属。自社開発の原価計算システムZEROのパッケージ化を推進。14年6月、R&D事業部に異動。15年11月、WEBサイト「上昇病院.com」開設。1年で会員数200人突破。16年9月、医療経営支援課に異動。17年10月、大手ITベンダーと販売代理店契約締結。18年、原価計算システムZEROの年間導入数10病院達成