実践的看護師マネジメント
第5回
採用面接でどんな回答をする人を採用しないほうがいいのか
採用面接にあたっては、いわゆる「マニュアル本」が横行して模範解答を頭に叩き込んだ応募者が次々に訪れる。それらを見抜くのは初歩的ステップ。組織に貢献できる人材か否かを見抜く手法を解説する。
筆者の体験に照らし合わせ、優秀な看護師を採用するための「質問文」をいくつか紹介し、質問の意図と狙いをお伝えします。
①これまで上司に指摘されて直せたことは何ですか
思いつくだけ教えてください
素直に注意されたことを受け止め改善してきた人なら、この質問に関して、「どうしても仕事を抱えてしまい、『報・連・相(報告・連絡・相談)』が少ないと注意されたので、今は『業務の進捗状況や抱えている仕事に関して』、そのつど、報告するようになりました」など、すぐに答えが返ってきます。
この質問からは、「他者からのネガティブ・フィードバックをどう受け取るか」を引き出すことができます。人からできないことを指摘されることはたいてい、嬉しいことではなく、一種のストレスを受けた状態になります。この質問は、目の前の人がこうしたストレス状況にどんな防衛機制を使うかを知ることにもつながります。
前号でご紹介した「外罰的機制」(責任を外部に転嫁する機制)を多用する人は、「自分が悪いのでそう指摘を受けた」ととらえられず、「そんなふうに指摘するのは相手がおかしい」とか、「こんなに忙しい状況なんだから仕方ない」など、自分以外の外部に責任を転嫁してしまうので、質問の「注意されて直せたこと」をすぐには答えられません。
採用面接でよく「あなたの短所はどんなところですか?」などと質問しますが、こうした面接の攻略本などに出ている使い古された質問には、面接を受ける側もしっかりと答えを準備してきますので、その人の本当のパーソナリティーを引き出すことにはならないことがほとんどです。
少しだけ考える時間を与えて、複数の「直せたこと」が答えられる人は、自分の足りない部分に関して向き合い改善することができ、今後も成長が見込める人です。
逆に、この質問はあまり長く考える時間を与えないほうが本音を引き出せます。時間の限られた面接を有効にするには、事前に十分考えさせたほうがよい質問と、負荷を与えて答える様子も観察するのがよい質問とがあるのです。
また、この質問は「過去の成功体験を引き出す」というコーチングの質問テクニックでもあり、面接を受ける求職者の不必要な緊張を解き、リラックスさせる効果もあります。
②養育者(両親や祖母など)から教育(躾)されたことで、今でもよく思い出す言葉は何ですか
例を挙げると「中途半端にするなら、いっそやらないほうがいい」「時間は待ってくれない」「時間に遅れる人間は信頼を失う」「人様に迷惑をかけるのは最低だ」「自分のことばかり優先する人間はダメ人間」──などです。
これは、過支配な家庭で育ち、思考のゆがみ(完璧主義、~すべき)が強く残っているかどうかを見極める質問です。
「~すべき思考」が強いと、勤務中に当人の思ったとおりに周りのスタッフが動かないと、過支配になることが多々あります。「中途半端にするくらいならやらないほうがいい」などの思考が強いと完璧主義的な傾向が出てきて、目標管理で順調に目標達成に向かえないと途中で投げ出してしまったり、「この病棟はレベルが低い」「この病院は全然ダメだ」「遅れている」などの二元論的な発言で、周囲のスタッフのやる気をそいでしまったりすることもあります。
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。