実践的看護師マネジメント
第6回
現場あるある「理不尽シーン」の質問でリーダーシップがとれる中途採用者を見抜く

就職後に実際に起こり得る場面を想定した質問を投げかけることで、相手の反応を見ることも必要だ。その際、現場の実態を隠し立てすると、かえって相手に見透かされるというのが奥山美奈代表の考えだ。質問のねらいと求める答えも念頭に置くことも求められるという。

指導をどうとらえて環境に適応する人物か見抜く

前回に続いて、優秀な看護師を採用するための「質問文」をご紹介します。どんな回答をする人物が皆さんの組織で必要なのかを考えながら読み進めてください。

③就職後、業務を教えてくれる先輩や上司の「やり方」がそれぞれの人でかなり違うというとき、どんなふうに解決しますか 

④就職後、業務を教えてくれる先輩や上司の「物の言い方や指導の仕方が、かなりキツイ」と思ったとき、どんなふうにとらえたり、どんなことを自分に言い聞かせたりしますか

この2つは新卒者にも有効です。
中途採用者向けの質問として

⑤就職した初日に休憩室で「なんでこんな病院に来ちゃったの?」と先輩に声をかけられたとしたら、どんなふうにそのことをとらえ、改善していこうと思いますか

というものもあります。

これらの質問は、新人が就職後によく体験する「あるある事例」をどうとらえて解決しようとするかを引き出す投影的な質問です。上記3つの状況のとき、「どんなふうにとらえてどんなふうに動く人を採用したいのか」が、これらの質問の答えになります。

私は、院長とともに、コンサルタントとして採用面接に同席することがあります。その際には、③の「業務のやり方が違う」場合、「ひととおり、いろんなやり方を教えてもらった後で教育担当者に相談し、指導の標準化ができるように動く」というのが、私の求める答えです。

④、⑤では、提示する先輩や上司を「反面教師」としてとらえ、自分はそうならないために気をつける──というのが求められる基本姿勢です。
④で「褒め方・叱り方やフィードバックの仕方等を学ぶ機会があるのですか?」など質問してくるなら逸材で、即、採用レベル。
⑤に関しては師長、その他の「教育担当者に報告して改善したいです」というのが、私の求める答えですが、皆さんはいかがでしょうか。

組織の課題を隠さず一緒に改善できるかを問う

こんな質問をすると、「『そういう悪いスタッフがいる』ことを伝えることになってしまう」と懸念する方もいらっしゃるでしょうが、実際に、現場にはこういうスタッフはよくいます。実際にあるにもかかわらず、「そんなことがあるとは言えない」ということになれば、これは、軽い隠ぺいになってしまいす。

中途採用の看護師はそこまで子どもではありません。実際にこの質問に回答して採用したスタッフに、後日、感想を聞いてみると「ここの人事担当者は看護部の内部のことまできちんと知ってるんだ、すごいなと思った」「そういう言動をとる人がいて、そこを問題視して変えていけるようなスタッフを求めているんだなと思った」といった答えが返ってきます。
人は嘘で固められるより、今がどうであれ、未来に希望を感じられれば「頑張ろう」という意欲が湧いてきます。これを「未来傾斜原理」といいます。

実際に私が、中途採用の看護師の紹介に成功している病院は、建物も決して新しくもなく、魅力的な科を標榜しているわけでもなく、看護部の人間関係が良好などの「売り」もあまりないのですが、こんなふうに現状を正直に伝え、「今後、一緒に変えていってほしい」と願いを伝えるということをやっています(ただし、年収は絶対に下げない、少しでもいいから上げることが重要です)。

良くない部分を隠すより、正直に課題を伝えて協力を仰ぐと、「正直」で、改善していく力がある看護師を採用することができます。そのためには、まずは、採用面接をするこちら側が正直にならないといけません。

建物は新しいのに人が定着しない──。こういうところはたくさんあります。「美人は3日で飽きる」とはよくいったもので、人は期待値が上がると、下がるのも急速なのです(ロス効果)。
組織の課題を正直に話すというこのやり方は、最初に期待値を下げておいて徐々に上げていく「ゲイン効果」を狙う、実は戦略的なやり方なのです。

これまで2回にわたって採用面接の文言、質問に関して5つの質問の具体例をお伝えしてきました。人を採用するとき、組織、部署で病院の理念に照らし合わせ、「どんな人物を採用したいのか、どんな言動をとる人に仲間になってほしいのか」を明確にしたうえで、質問の狙いと答えを設定することが大切です。

それぞれの組織にそれぞれの特徴があるので、それぞれの現場で本当に起こったこと、必要とされるマインドは当然、異なってきます。「事件は現場で起こっている」のですから。
これらの考え方や実際の質問等をぜひ参考にしていただいて、狙いどおりの人材を確保できるような文言集を作成していただけたらと思います。

奥山美奈(TNサクセスコーチング株式会社代表取締役)
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。