実践的看護師マネジメント
第4回
外罰的なスタッフを成長させるにはこちらの愛情が必要

スタッフの落ち度まで自ら背負い込む先輩は一見、「頼もしい人」と思われがちだが、組織運営の観点で言うと、むしろ組織崩壊を招く要因ともなり得る。「言うべきときは言う」姿勢は、スタッフの育成、定着の観点からも不可欠なのだ。

高校教諭時代に実感したこと

私は高校教諭のとき、6年半にわたって生徒指導課という部署にいました。生徒指導課とは、カンニングや万引、暴力などの問題行動を起こした生徒を更生させるところで、停学や謹慎で反省を促しクラスに戻すという役回りの部署です。

停学や謹慎となった直後には、まだ生徒には反省の様子もありません。「なぜ、○△さんも同じことやっているのに、自分だけが言われるのか」という被害者意識があったりもします。そこからさまざまなことを教えたり、本を読ませて公共心を養ったりしながらとことん向き合っていきます。

こうした生徒を数多く見てきて、今改めて思うことは、たった1回の謹慎処分でも生徒のほとんどは深く反省するものだということです。こう考えると、謹慎処分とは、お仕置きという意味合いよりも、「これ以上、悪いことをさせない」ための、成長の機会になり得るとも言えるでしょう。

病院の悪口は「改善点」に昇華させる

人間はストレスに弱い、脆弱な生き物です。時に、いい大人であるわれわれも、易きに流れてしまうことが多々あります。そこに、「よくないことはよくない。止めなさい」と、ビシッと向き合う姿勢の管理職がいると、ふとわれに返ることができます。
病院の悪口や他のスタッフへの不平不満を表に出すのがなぜ悪いのかというと、「公共の福祉に反する」から。そんなことを聞いて楽しく思う人は、とても不幸な人か、よほど心がやさぐれている人しかいません。

ただ、外罰的なスタッフに「発言するな」というのもフラストレーションがたまるでしょうから、悪口、不平不満でとどまらせずに、そのときは改善点に昇華させて発言するように導くのも有効です。

組織診断チェックシート

図は、私がコンサルティング先で活用している「停滞組織診断シート」ですが、あてはまると思うよくない項目に○をつけてもらい、さらにどう改善していくかを記入していくものです。多くは管理職研修で用いるものですが、病院に不満をもつスタッフの多い部署には、休憩室の壁に貼っておいてもらうこともあります。それは「不平不満がある→ではどう改善するか」という思考パターンを習慣化するときに役に立つからです。

外罰的なスタッフでも、元は看護師。ホントは優しいとか真面目だとか、正義感が強くて情に厚いとか、よいところもたくさんあることでしょう。そのよい部分を引き出していくのも愛情です。
スタッフを傷つけるようで注意ができないという管理職の方々は、一方でそのスタッフへの愛が不足しているのではないか、そんな見方をしてみることも大切です。

時に、人は良くない言動を取るものですが、またいくつになっても成長する存在でもあります。外罰的スタッフもビシッと注意されるとことで、自分を振り返るチャンスを得ることができるのです。内罰的な人は「嫌われたくない」と、自分にばかり意識を集中させず、本当の意味で相手に向けていくことが大切です。

注意するということは「相手のよいところを引き出すための方便なのだ」と自分に言い聞かせ、上司としての役割をきちんと全うすると、良いスタッフは「うちの管理職はしっかりと悪い人を注意してくれる」と安心して定着するようになります。外罰的スタッフをしっかりたしなめ、良いスタッフに希望を与えると、次第に良い風土ができてくるのです。

奥山美奈(TNサクセスコーチング株式会社代表取締役)
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。