実践的看護師マネジメント
第2回
外罰的看護師を見抜くには採用面接の質問が肝心
場の雰囲気を悪化させ、ひいては優秀な人材の流出を招きかねない外罰的看護師。理想的な対応は「面接の段階で見抜く」こと。ただ、それには「自分で描く将来像は」「趣味は」といった一般的な質問ではなく、戦略的に練り込んだ質問が求められる。
「辞めた病院のその後は気になる」
前回、「前に辞めた看護師が他の病院を回った後に戻ってくるケースがある」と述べましたが、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。この現象について、少し触れます。
まず、看護師にとって、退職した職場のその後というものはとても気になるので、辞めた看護師(Nさんとしましょう)は昔の同僚に会ったとき、「その後、病棟どう? ○さんや△さんたち(外罰的看護師)、相変わらずでしょ?」と聞いてきます。そのとき、「○さんはB病棟に異動。△さんは看護部長に呼び出されてキツく言われ、今はおとなしい。結構人も入ってきて変わってきたよ」という話を聞くと、Nさんは辞めたことを後悔し始めます。
「別に○さん、△さんたちが嫌だっただけで、他のスタッフや病院の方針自体はいいんだよね」と思いはじめ、心が揺れてくることがあります。
そこへ、元同僚が「Nさん、戻っておいでよ。私、師長に言ってあげるから、また一緒に頑張ろうよ!」と多少のきっかけが与えられると、本当に戻ってくることがあるのです。女性は待遇より「調和」を重んじるからです。
こうしたやりとりを偶然に任せるのではなく、戦略的にするには、退職したNと仲の良かったスタッフに「Nさん、その後どう? 元気にしている? 『病棟も雰囲気が変わってきたから戻っておいでって、師長が言っているよ』と声かけておいてね」と師長から伝えさせるようにします。
多くの看護師は事を荒げたくないので、退職の際、表向きな理由を言って辞めていくものですが、「実は○さん、△さんがいなくなればいい部署なのに……」というのは、案外、本音なのです。こうした気持ちで退職したスタッフには、折に触れて連絡を取ることで出戻りを促すことができます。「出戻りのスタッフ」でプロジェクトチームを編成し、「組織のよいところを再認識させる」という取り組みを活発に行っているところもあります。
採用面接は最初の「キャリアコーチング」
ただやはり、採用面接時に「外罰的看護師」を見分けることができればそれに越したことはありません。これには、採用面接時における質問事項も練っておきます。採用面接官の「質問の質を上げる」必要があるのです。
先日、私は、ある看護師さんの採用面接に同席しました。面接官はどこかでコーチングの基礎的なことを学んだようで、終始「5年後どうなりたいか」「どのようなキャリアを積みたいのか」「あなたの強みはどこか」などを聞いていましたが、このような質問を時間の限られた採用面接の場では非効率で、むしろ、エントリーシートの質問項目に盛り込んでおき、求職者に事前に記入し持参させるほうがお互いにとって効率的なのです。
このような質問は「オープン質問」といいますが、答えを考えるのにとても時間がかかりますし、また「5年後どうなりたいか、どのようなキャリアを積みたいのか、あなたの強みはどこか」などの質問への答えは、今後の人生も踏まえてもしっかりと考えをまとめておくべきものです。
事前に十分に時間をかけて面接に臨ませることは「面接の心構え」をつけてもらう効果もありますし、紙面上で「キャリアコーチング」をすることにもなるので、一石二鳥なのです。
外罰的な看護師を採用面接で見抜くには
そもそも、このような一般的な質問では、実際に本人にストレスがかかった際に外罰的規制を使うかどうかは判断できません。それを引き出すような質問でなければ、意味がないのです。「休みの日は何をしているか」「趣味は何か」「愛読書は何か」──。
こうした質問をしても、ストレスフルなときに他人や環境のせいにするなどの外罰的な反応は引き出せません。こうしたことを引き出すには、ストレス場面を想定したうえで、「そこであなたはどう考え、どう対処しますか?」を問えばいいのです。
ほかには、「文句を言う、他人や環境のせいにする傾向が強いかどうか」を診断する、ストローク分析というツールもオススメです。
私はこのストローク分析を、コンサルティング先での管理職や指導職のフィードバックに活用しています。70問の質問に答えると一瞬で自動的に棒グラフができ、ポジティブストロークとネガティブストロークの割合などがわかります。
この診断で「ネガティブストロークを与える」という項目が高く、逆に「ネガティブストロークを与えるのを拒む」という項目が低ければ、まずはその人は外罰的傾向が強いと言えます。
こういった診断を参考にするのも、一手でしょう
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。