実践的看護師マネジメント
第1回
辞めてもらったほうがいい「外罰看護師」の特徴

病院内で最大の陣容を占める看護部。院内の風土づくりや医療の質向上の面でも看護部の運営・管理は重要なテーマだが、「看護部長任せ」になりがちだ。そこで本稿では、自身が看護師出身で教壇に立ったこともあるTNサクセスコーチング株式会社の奥山美奈代表取締役に、看護師のマネジメントを解説してもらう。

組織の要になる看護師とジプシー看護師の違い

私は、一般病院の看護師として5年、看護学校の教員を8年務め、現在は教育コンサルタントとして起業し、病院や介護施設や看護学校等の教育支援と、人材確保のお手伝いなどをしています。職業柄、たくさんの看護師とかかわりますが、看護現場のマネジメントという観点に立つと、大きく2つのタイプに分けられます。

まず、組織の要としてバリバリ活躍している人たちです。時に「全然人が足りない、時間外が多すぎる」と組織の不満も口にしますが、たいていは、自己効力感によりキラキラと輝いて仕事をされています。こうした人は「患者中心の看護がしたい」という理想と現実のギャップを何とか小さくしようと行動します。
一方、組織に定着しない人もいます。理想と現実のギャップを埋めようとはせず、病院の悪口を吐き続ける行動を取ります。そして、「本当の看護」を探し求めて病院を転々とし「ジプシー化」していくのです。

両者の違いはどこにあるのでしょうか。組織の要としてギャップを埋める行動を取る人が「問題は自分の範ちゅうにあり、解決できるもの」と考えるのに対し、ジプシー看護師は「問題は自分の外側にあって解決できないもの」と考える傾向があります。「問題は自分の外側にある」と考えれば、「自分にはどうすることもできない」ので、何も行動しません。

ジプシー看護師は、その組織に偶然来てしまった自分が不憫でならないので、同じように「不幸な仲間」を探そうと、病院の悪口をしきりに言います。すると「不幸な仲間」が見つかって「やっぱりこの病院がおかしいんだよね(私たちはおかしくないよね)」と盛り上がり、「自分だけが不幸じゃなくてよかった」と、最低限の調和を得て安心するのです。

人間の心には、ストレスから身を守るために「防衛機制」というものが標準装備されていますが、「自分は悪くない」「自分の外側に原因(罪)があるのだ」とする防衛機制は「外罰」と定義されます。その人たちによれば、自分以外の何者かが悪いのですから、その人たちの立ち位置は一瞬にして「被害者」となります。つまり、「自分は悪くない」といった外罰的な考えを持つ看護師は、理想と合わない組織と思ったときに辞めていくわけです。

外罰的な看護師は早めに辞めてもらう

組織の課題を自分ごとととらえて改善しようと頑張るスタッフを揃えたいと思えば、本当は、外罰的な人には早く辞めてもらっていい──というのが、私の結論です。
実際には、管理職は「人がいなくて今、こんな人でも辞められたら勤務が回らない」と思い、退職を思いとどまらせるのではないでしょうか。引き止められた外罰看護師は、自分を肯定されたと勘違いし、その後も声高らかに「被害」を訴え続けます。すると「被害者」のメンバーはどんどん多くなります。

「被害者の会」の人口が増えるとどうなるでしょうか。「被害者の会」のメンバー(外罰的看護師ら)と一緒に悪口を言わないと「あんたは病院側だもんね」となり、その場に居づらくなります。詰め所で被害者の会の面々が盛り上がって話しているときに悪口を言わない人が入ってくると、一瞬で「シーン」となったり、「やめよ、やめよ。病院側が来たから」と軽い仲間外し*のようなことが起こったりします。
そうして、外罰的看護師らと「最低限の調和」をするために、日常会話が悪口となり、病院の不平不満が飛び交う風土ができあがっていきます。

*仲間外しは、厚生労働省の「パワーハラスメントの定義」では、行為類型3のパワハラにあたります

外罰的な言動は「管理職が注意する」

一番よくないのは、外罰的な言動を取る人を管理職が注意しないことです。これが続くとどうなるでしょうか。「こんな人を注意しないなんて、もっとここは悪くなっていくだろう」と部署に希望を失い、「よいスタッフが辞めていく」という最悪のことが起こります。人は、未来に希望を失ったときに辞めていきます。

現在、病院の各部署に外罰的な人は皆無というところはないでしょう。まずは、外罰的言動をしっかりと注意し、そのスタッフに言動の改善を求めることが必須です。そうした取り組みを通じて「よい人材が希望を失って辞める」のを防ぎながら、外罰的な防衛をしないかどうかを見抜く採用面接をして、「組織の課題を自分事として改善できる人」を採用し、自発的な人を増やすのです。
そうしているうちに、前に辞めた看護師がさまざまな病院を転々とし、「青い鳥は近くにあった」と心を入れ替えて戻ってきたりして、結果として人が増えていったりします。これについては次回、述べたいと思います。

奥山美奈(TNサクセスコーチング株式会社代表取締役)
おくやま・みな●教育コンサルタントとして管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチ・接遇トレーナーの認定を行う。病院、介護施設のコンサルティングの他、全国各地の病院、看護協会等で講演も行う。