MMS Woman Lab
Vol.112
働き方に対する価値観のギャップを
埋めるコミュニケーションのあり方
<今月のお悩み>上長である総務部長に“昭和的な働き方”を強要されています。予定のある日に残業を命じられて断ったところ、「自分も残業するから一緒に頑張れ」「仕事と家庭どっちが大事なんだ」と言われたこともあります。残業の時に「苦労をともにすれば団結力のある職場になる」と言われるのも理解できません。計画性がなく、期限ぎりぎりで動き出すことが残業の原因で、仕事の仕方にも疑問を持っています。どうしたら良いでしょうか。
働き方に対する考えには
世代間で大きなギャップがある
最近、世代間ギャップに関する相談事が増えてきています。「常識が通用しない」「注意しても響いていない」「言われていることの意味がわからない」など、双方が悩んでいるように感じます。特に、働き方への考え方には大きなギャップがあるようですね。
60代現役の総務部長に、働き方改革が進む今の時代に合わない働き方を強要され、働きにくさを感じているという相談ですね。一例として挙げられているのは、プライベートな予定がある日に急な残業を指示され、「自分も残業するから一緒に頑張れ」と言われ、帰してもらえなかったということですね。「仕事と家庭、どっちが大事なんだ」と言われても、比較する対象ではないですよね。
システムトラブルや事故対応などその日のうちに対応しなければならない事態が起こっているのであれば、仕事の責任を果たす必要があります。残業もやむを得ないケースもあるでしょう。しかし、そもそも計画性がなく、ぎりぎりになってエンジンがかかるので間に合わなくなり、ラストスパートで無理をして頑張るというのは、世代関係なく、「改善」しなければいけない仕事の進め方でしょう。
そのような事態がたびたび起こり、過去の「徹夜作業」のことなどを「あの時は大変だったよなぁ」と懐かしく思い返し、苦労をともにした仲間という一体感を感じ、「それが団結力のある職場だ」と言われてしまうと、ちょっと感覚が合わないと感じてしまいますね。そもそも、苦労をともにすることだけが一体感を醸成するわけではありません。
昭和時代、日本は経済の発展に伴って長時間労働が一般的で、従順さや忍耐強さが重要視されていました。しかし今は、柔軟性、個性、ワークライフバランス、創造性が尊重され、テクノロジーの進化によって効率性を重視する新たな働き方に変わってきています。それを、「関係が希薄」「手間をかけていない」と感じ、昭和的な価値観にこだわる方々が職場に存在することも事実です。
仕事の進め方に関する
建設的な対話が問題解決の第一歩
上長ですから真っ向から「価値観の違い」と言って戦ってしまうことはできませんが、価値観に合わない、働き方についていけないからといって諦めたりしないようにしましょう。仕事の進め方での建設的な対話が、問題解決の第一歩です。初めはなかなか意見を聞いてもらえないかもしれませんが、自分の考えや価値観を説明し、相手に理解してもらう努力も必要です。
一方で、自分の心のケアも大切にしてください。職場でのストレスやプレッシャーは、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があ能性があります。自己ケアを怠らず、ストレスを軽減する方法を見つけましょう。高圧的な言葉で仕事を指示される、提案や意見を聞いてもらえず仕事の進め方を変えられないといった状況でストレスを感じたら、総務課のほかのメンバーと話し合ったり、他部署の方にも相談するのも良いと思います。
以前からのやり方や考え方を変えられない人にとって、「自分から変わる」のはなかなか難しいでしょう。無理な働き方は病院として「改善」すべきものですから、部署の現状を周囲に知っていただき、他部署からも働きかけてもらいましょう。
昭和的な感覚のすべてが悪いわけではないと思いますが、どれだけ職場にいるか、プライベートを犠牲にしているかで「忠誠心」を評価するのは、今の働き方には合わないと感じます。もちろん、仕事での「成果」は求められます。
総務の仕事が終わっていなければ職員にも患者さんにも迷惑がかかります。正確に期日どおりに仕上げなければならない作業もたくさんあるはずです。「時間内にできる分だけやって帰る」という考えでは困りますので、しっかりと計画を立て効率良く進めて、気持ち良く働ける職場にしていきましょう。
〈石井先生の回答〉
長時間労働が一般的で従順さや忍耐強さが重要視された昭和世代と、柔軟性や個性などが尊重されて効率性を重視する若手の価値観は、「宇宙人と原始人」くらい違うもの。だからこそ「価値観の違い」で終わらせず、仕事の進め方に関して建設的な対話を図ることを大切にしてください。(『月刊医療経営士』2023年11月号)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか