MMS Woman Lab
Vol.108
シニアも活躍できる職場づくりは
誰もが働きやすい環境づくり

<今月のお悩み>当院では高齢者の中途採用が増えており、私が課長を務める医事課でも70代男性職員が外来の案内係のローテーションに入っています。まじめな仕事ぶりでこれまで問題なかったのですが、先日、職員専用エリアに入ろうとした患者さんに声をかけたところ言い返されて、怒鳴り合いに発展。慌てて駆けつけ患者さんに謝罪しその場は収まったのですが、当の職員は納得がいかない様子です。父親より年上の職員にどう話せば良いでしょうか。

70代の新入職員も当たり前
トラブルの形も変わる?

「一億総活躍社会」とも表現され、年齢も性別もさまざまな個性も活かしつつ、あらゆる場所で、誰もが活躍できるような全員参加型の社会になりつつあります。特に年齢の多様性はあらゆる場面で感じることができます。先日遊びに行ったテーマパークでも、お客さんを迎えるキャストの多くがシニアの男性でした。70代、80代でも本人に気持ちがあれば、社会で活躍することができる環境が整いつつありますね。
病院でも職員の募集を行うと70代の方々の応募者が増えてきているようです。もちろん採用試験は同じように受けていただきますので、採用されたら年代などにかかわらず「新入職員」としてお迎えすることになります。それ以前にどのような立場で仕事をされていたとしても、「病院の事務職員としての役割」を担っていただくことになります。

ご相談者の病院では、70代の新人男性職員も医事課のメンバーの一員として、外来でのご案内係のローテーションに入っているということですね。次々に訪れる患者さんやご家族への挨拶、タクシーからの降車のサポートや車いすの準備をしながら、行きたい場所の問い合わせやちょっとした苦言への対応まで、しなければならないことはたくさんありますから、ご案内係はめまぐるしく動くことになります。

そんななかで、職員専用エリアへのドアを開けそうになっていた患者さんに70代新人男性職員が気づき、慌てて駆け寄って「どこに行くのですか?」と声をかけたことから、患者さんと言い争いになったとのこと。「あやしいと思ってあとをつけてきたのか?」という患者さんの過敏な反応に対して「立ち入り禁止って書いてあるだろう!」と返してしまい、年齢的にも近い男性同士だったこともあり、注意された患者さんの「恥ずかしさ」もあったと思いますが、双方どんどん声が大きくなり、周囲か騒然となる言い争いになったということですね。
相談者さんが急いで駆けつけ、患者さんへのお声かけの仕方に配慮が足りなかったことをお詫びされ、お気持ちを静められたとのこと。一方で、医事課の責任者としては、やはり気分を害している職員に対しても話をしないといけないですね。

言うべきことはしっかりと
でも年長者への配慮は忘れずに

患者さんは、痛みや不快感があり、「いつもと違う」心の状態で病院に来ています。そういう状態の時は注意が散漫になっていることもありますし、時には職員の言葉や対応に過敏に反応することもあります。そのような状況にあることを理解したうえでの心配りが必要になることを丁寧に説明していきましょう。
一方で、このシニア職員が職員専用エリアに入ろうしていた患者さんに気づいたということは、多くの患者さんが行き交うなかで一人ひとりの動きをしっかり見ていたということですし、危険への予測が的確にできていて、しかも即行動に移せたということでもあります。この方のこれまでの豊富な経験と職場での価値観、業務への真摯さから出た行動は、若い方々のお手本になるのではないでしょうか。
もちろん、患者さんへの声のかけ方、過敏な反応をされた場合の応対、患者さんの感情への配慮などには課題がありますが、「行動した」からこそ課題が見えたと考えましょう。そして、医事課長としては、今回のことをしっかり「事例」として整理して、良かったところ、悪かったところ、今後どうすべきかについて、丁寧に説明をしていきましょう。

ご自身の父親よりも年上の方とのことですから「言いにくい」と感じてしまうのも理解はできますが、これは職場での課長としての「役割」です。ただ、言葉遣いは丁寧に、敬意を払う表現で話をしたほうが、相手も受け入れやすくなると思います。遠慮ではなく、ここも「配慮が必要」ということですね。

〈石井先生の回答〉

年齢が上だからと言って遠慮してしまうと、職員にとって良い環境とは言えません。もちろん敬意を払い、配慮することは必要ですが、言うべきことはしっかり伝えましょう。年齢に関係なく同じ職場で働く仲間として接することが、誰にとっても働きやすい環境と言えるのではないでしょうか。(『月刊医療経営士』2023年7月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング