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24年からの新しい医療計画
目玉は感染対策と外来機能報告

医療計画とは地域医療の課題でありすなわちニーズである
経営分析と戦略に活用せよ

医療法と医療計画

医療機関にかかわる法律のなかでも影響が大きいものが医療法である。そもそも病院や診療所といった医療機関の定義や設置に関する基準も医療法で規定されている。その医療法において、都道府県が地域の実情を踏まえて医療を整備する「医療計画」を策定し推進していくこととなっている。計画には医療圏や基準病床数等が定められている。
最初に医療計画が始まったのが1985年の医療法改正で、当時は5年おきに計画を見直すことになっていた。現在は6年おきとなり、今回基本方針が示されたのが第8次の医療計画である。2023年度中に計画を策定し、24年度~29年度に実施される予定である。08年の第5次医療計画において、図表1にある4疾病・5事業の医療提供体制の整備を進めることになり、13年の第6次医療計画からは精神疾患および在宅医療が追加された。
そして新型コロナウイルスの経験を経た今回の第8次医療計画からは「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加された。

図表1 医療計画に反映させる内容の変遷

第8次医療計画の基本方針

今回示された基本方針では、追加項目となった「新興感染症等の感染拡大時における医療」については、検討会で協議を続け別途まとめることとなっているが、2月2日に開催された検討会で一定の方向性が示された。感染症の流行初期の段階から入院医療に対応する医療機関を、全国で500機関程度を目安に設けるとされた。入院患者約1.5万人(うち重症者約1500人)を受け入れることを想定している。
これらの医療機関は平時から都道府県と協定を締結し、感染症の流行初期から地域で基幹的な役割を果たすことが求められる。初期段階では、医療の提供やマンパワーの配置がどれだけ必要かを見極めるのが難しいため、減収分を補償するという。
現行の新型コロナウイルスでの想定ではなく、今後発生し得る未知のウイルスがパンデミックを起こした場合の想定である。今後、2回目、3回目とコロナ同等のパンデミックに直面すると課題は残るのであろうが、今回の経験を踏まえて想定されたことが施策とし打ち出された。

ちなみに、22年度の診療報酬改定で新設された感染対策向上加算1の全国の届出数は1575件(22年7月)、感染症病床を有する医療機関は350件であり、こうした基幹となる医療機関が事前に都道府県と協定を結ぶ先の候補となるであろう。未知な環境下で対応していくため経営的な担保がないと、特に民間医療機関では意思決定がしにくい。
その点も、減収補償があらかじめ定められることにより、収益をひとまず脇に置き、医療提供が可能かで判断できるようになるのは望ましい。結果的に補助金などによる減収補償はされたが、コロナ初期はこうした担保が明確でなかったため、経営判断に躊躇した病院は少なくなかったであろう。

基本方針の他の事業である、救急医療、周産期医療、小児医療においても、平時の体制整備だけではなく、「新興感染症の発生・まん延時に必要な体制の整備」が追加された。
その他の項目では、災害時医療について、医療機関におけるBCPの策定や、非常用自家発電機の整備浸水対策等の防災対策を追加。へき地医療についてはオンライン診療の活用が加えられた。
外来医療については、外来機能報告を通じた外来医療の実施状況把握および協議の場での協議、紹介受診重点外来の明確化、さらには、医師の働き方改革と地域医療構想に関する取り組みの一体的推進が明記された。地域医療構想のひとまずのゴールである2025年をまたいで第8次医療計画策定されるが、地域医療構想を継続していくことが必要と示されている。

今回示された基本方針をもとに、23年度中に各都道府県で医療計画の策定が進み、計画に基づいた各種施策が24年度から実行に移されていく。これまで見てきたとおり、医療を取り巻く多くの課題が網羅されており、自院の立ち位置に合わせて、医療計画に定められる方針を確認し、経営戦略に落とし込んでいくことが求められる。(『月刊医療経営士』2023年3月号)

図表2 感染症の流行初期の段階から入院医療に対応する医療機関

出典:厚生労働省「第8次医療計画等に関する検討会」資料

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

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