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かかりつけ医制度の整備や
医療法人改革が足元の課題

全世代型社会保障の論点整理
「足元の課題」を提示

政府の全世代型社会保障構築会議(座長=清家篤・日本赤十字社社長)は12月7日の会合で、全世代型社会保障の構築に向けた各分野における改革の方向性(論点整理)について議論した。今回はこれまでの案をベースとして、今後の改革の工程として、「足元の課題」「来年、早急に具現化を進めるべき項目」などを示している。
論点整理では、「医療・介護制度の改革」に向けて取り組むべき課題として、①医療保険制度(出産育児一時金の増額、後期高齢者医療制度の保険料負担のあり方の見直し、被用者保険者間の格差是正)、②医療提供体制(サービス提供体制の改革に向けた主な課題、かかりつけ医機能が発揮され制度整備)、③介護(地域包括ケアシステムの深化・推進、介護現場の生産性向上と働く環境の改善、介護保険の持続可能性の確保)、④医療・介護分野におけるDX(医療・介護分野の関連データの積極的な利活用の推進、医療DXの推進)――を掲げている。
医療・介護制度の改革において最も優先すべき「足元の課題」として挙げられたのは、▽前述の①医療保険制度において記載された項目、▽かかりつけ医機能を発揮するための制度整備、▽医療法人改革の推進、医療介護間での情報連携――の3項目だ。
このうち、かかりつけ医機能を発揮するための制度整備については、今後の高齢者人口の増加を見据えれば不可欠の制度であり、早急な実現に向けて、必要な措置を講ずるべきであるとしている。

論点整理では、かかりつけ医機能の定義について、医療法施行規則に規定されている「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースに検討すべきとし、この機能の一つとして日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うことが考えられると指摘。そのほかの例として、休日・夜間の対応、他医療機関への紹介・逆紹介、在宅医療、介護施設との連携などを挙げた。さらに、これらの機能を一つの医療機関で担うのではなく、複数の医療機関が緊密に連携して実施すること、地域医療連携推進法人の枠組みを活用することにも言及した。
かかりつけ医機能の活用については、医療機関、患者双方の手挙げ方式とし、患者がかかりつけ医機能を担う医療機関を選択できる方式とすることが考えられるとした。そのための患者や自治体への情報提供などの仕組みを構築することを盛り込んでいる。加えて、地域全体で必要な医療が必要な時に提供できる体制を構築するた自治体が把握した情報に基づいて、地域の関係者が、かかりつけ医機能に対する改善点を協議する仕組みを導入すべきであるとしている。

さらに厚生労働省はこの日、かかりつけ医機能を発揮するための制度整備の骨子案を提示(図)。制度整備として「かかりつけ医機能報告制度の創設による機能の充実・強化」と「医療機能情報提供制度の拡充」の2つを示し、期待される効果などを明らかにした。

出典:12月7日「全世代型社会保障構築会議」厚生労働省提供資料

医療法人改革の推進も重要事項に位置づけられる

また、医療法人改革の推進も足元の課題に位置づけられている。厚労省ではこれに関連して、医療法人の経営情報データベースの構築について説明。同データベースの構築により、▽国民に対して医療が置かれている現状・実態の理解の促進、▽効率的かつ持続可能な医療提供体制の構築のための政策の検討、▽経営への影響を踏まえた的確な支援策の検討、▽医療従事者等の処遇の適正化に向けた検討、▽医療経済実態調査の補完――といった目的で活用できるとした。病床機能報告や外来機能報と連携させる方針だ。
対象となるのは、原則としてすべての医療法人。病院および診療所における収益および費用、職種別の給与(給料、賞与)、その人数などの経営情報を収集する。必要な法制上の措置が前提となるものの、23年度の可能な範囲で早期に実施するとしており、施行後に決算期を迎える医療法人から対象となる見込みだ。また、施設別損益計算書を作成していない医療法人があり、その準備などのために、提出期限の延長といった経過措置を設けるとしている。
このほか「来年、早急に検討を進めるべき項目」として、▽更なる医療制度改革、▽医療・介護DXの推進、介護職員の働く環境の改善、▽次期介護保険事業計画に向けた具体的な改革――を挙げた。(『月刊医療経営士』2023年1月号)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

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