MMS Woman Lab
Vol.101
経営企画部門は経営者にあらず
経営者と現場をつなぐことが役割

<今月のお悩み>今年4月に総務課から経営企画室に異動しました。経営企画室の主な役割は事業計画の進捗管理で、毎月の経営会議でKPIの進捗状況などをモニタリングしています。会議で室長がKPI未達成の部門に改善策を出すように指示したり、未達成が続いている部門長の責任を問うような発言をしていることに違和感を持っています。経営企画室の役割は指導や管理ではないと思うのですが、このままで良いのでしょうか。

院内の企画部門の位置づけは病院の狙いによって異なる

企業と同じように企画部門を持つ病院が増えてきたのはとても喜ばしいことですね。医療経営士の活躍の場として、企画部門はとても適した役割の一つだと思います。
経営企画部門の組織内での位置づけとしては、本部機能として設置されている場合や、理事長や病院長の直轄部門の場合、事務部門のなかの一つの課として位置づけられている場合など、病院によっさまざまだと思います。ただ、組織図上どこに配置されているとしても、おそらく求められている役割は同じでしょう。
それは、「経営者の意思決定をサポートする」という役割です。その役割を果たすために行う業務は、院内および院外情報の一元管理やマーケティング、事業計画の立案、実績管理、新規事業の企画プロジェクト管理、人材育成、研修など幅広くなっています。このうち、どの部分に注力することを求められているかによって、経営企画部門の位置づけが変わると言えます。

私自身が経営企画を担当していた時は中長期的な事業計画立案や病院全体の経営管理にかかわることが多かったので、本部機能としての位置づけが多かったのですが、診療報酬に関する情報収集と診療機能の強化に力を入れている場合には、医事企画のような位置づけになる場合もあると思います。
ご相談者の病院では事業計画の進捗管理などを行っている経営企画室ということですので、全体の経営管理の役割を期待されている部門でしょう。その具体的な業務ですが、お話を聞いた限りでは「経営管理」という言葉の一面だけを実行しているように思えます。
病院としてはKPIの設定もできているようですから、しっかりとした事業計画が立てられているのでしょう。それに基づいて各部門が取り組みを進めていることと思います。ただ、毎月の経営会議でそのKPIのモニタリング結果を報告し、未達成の部門に対して改善策を出すように、経営企画室長が指示を出しているとのこと。さらに、3カ月間KPI未達成が続いている部門の責任者に対して経営責任を問うようなコメントもされているようなので少し視点がずれているのかもしれませんね。

全体最適の視点から経営者の意思決定のサポートを

まず、事業計画の進捗管理ですが、これはもちろん経営企画部門が情報収集を行い、現状分析を実施するものです。ここで重要なのは、報告先は「経営企画室」ではなく、経営者、つまり理事長や病院長などの「経営責任者」だということです。企画部門は、現場の実績を把握し、もし進捗が遅れているものがあれば、その要因を現場とともに分析し、対策を検討し、どのように事業計画達成のために取り組んでいくかを報告するのが仕事です。
勘違いしてはいけないのは、経営企画部門は「経営者の参謀」であって、「経営者」ではないということです。経営者の指示を伝達し、現場が動けるように支援したり、育成するのが参謀の役割です。
つまり、経営方針をわかりやすく具体的な言葉で現場に伝え、各部門が事業計画を達成できるアクションプランをともに考え、その実行支援と進捗管理を行うのです。

事業計画の実績管理を行うなかで、全体の情報を収集しているからこそ見えてくる要因もあります。各部門は自部署の業務に視点があり、部分最適な実行計画は立てられても全体最適の視点はなかなか持てないものです。そこを担うのが、企画部門なのです。
山の頂上からしか見えない景色があるように、全体を俯瞰しなければ、全体最適を考えることはできません。一方で草木の様子、土の中の根の状態にまで気を配ってこそ、緑豊かな山を維持することができるのも事実です。そのための情報収集と分析を行い、経営者が意思決定できるようなサポートを行うことが企画部門には期待されているのです。
高みの見物ではなく、現場視点と経営者視点を持って、現場と経営者の間を埋めてい役割を果たしてほしいと思います。

〈石井先生の回答〉

経営企画室は「経営者の参謀」であって、「経営者」ではありません。経営者であるトップの意向を現場に伝えること、そして各部門がどう動けばよいのかを全体最適の視点からともに考えていくことが、経営企画室の役割です。現場視点と経営者視点の両方を持って取り組んでいただきたいと思います。(『月刊医療経営士』2022年12月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『医療経営士中級テキスト専門講座第2巻「広報/ブランディング/マーケティング」』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか

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