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入院患者は減少傾向にある
今まで以上に病診連携に注力せよ

患者調査はマーケット予測だ
調査結果を分析していけば、自院がとるべき今後の戦略はみえてくるはずだ

厚生労働省が3年おきに実施している患者調査の2020年の結果が発表された。医療に関するさまざまな調査が実施されているが、なかには回答数が少なく、全体を反映できていないような調査も少なくない。しかし、患者調査は、調査対象病院6284施設のうち、6185施設(98.4%)が回答と、かなり高い回答数を誇る。ただし、対象施設自体は全体の76%程度で、定点のある日の患者数、ある期間の在院日数なので、100%網羅された結果ではない。

入院患者数の動向

病院にとって最も大きい、入院患者の動向からみていく。
推計入院患者数は減少の一途をたどっており、前回調査より7.7%減少(図表1参照)した。そもそも人口自体が減少しており、前回調査(17年)の1億2670万人から1億2614万人と56万人も減っている。ちなみに、人口が最も少ない都道府県は鳥取県で、その人口は55万人である。
さらに、受療率(人口10万人当たりの患者数)も減少しており、これも過去から変わっていない。今回の調査で一つだけ過去の傾向と変わったのが、平均在院日数の推移だ。1990年の調査開始以来、短縮し続けてきたが、今回は32.33日と、前回(29.3日)、前々(31.9日)よりも伸びている(図表2参照)。
今後平均在院日数は横ばいになっていくのか。それとも今回が一時的な動きで、短縮の傾向は続いていくのか、次回調査が興味深い。

先述の受療率は定点(ある日)の患者数だが、在院日数が短くなると、その日に入院している患者数も減るため、受療率は下がる。しかし、今回は平均在院日数が伸びたにもかかわらず、受療率は下がった。
疾病別の受療率を見ても、ほぼすべての疾病で下がっている。伸びたのは「筋骨格系および結合組織の疾患」「腎尿路生殖器系の疾患」くらいだ。
在院日数が下げ止まっても、受療率が低下し続けると患者数は減少していく。さらに、総人口が減少し続けるため、入院患者の減少はトレンドとも言えよう。人口動態や受療率は地域による差も大きく、全国どこでも減っていくわけではないが、全体の動向を把握しつつ、自院の状況に応じたマーケット分析をしていきたい。

図表1 推計入院患者数

出典:令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(厚生労働省)

図表2 退院患者の平均退院日数

出典:令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(厚生労働省)

外来と在宅患者の動向

外来と在宅についても傾向だけは確認しておきたい。
入院と違って、外来患者数はほぼ横ばいを維持している(図表3参照)。
ただ、病院の外来は微減傾向にある。それに対して診療所は少しずつ増えている。
診療所の数自体が年々増えており、それに伴って患者数も増えているのだろう。入院患者の入院経路をみると87%は家庭からだが、このなかには診療所通院のケースも多分に含まれるだろう。減っていく入院患者の確保という視点からも、診療所との連携は欠かせない。

政策誘導の一つとして、在宅医療の推進もある。2005年以来、在宅患者数は増えてきたが、今回の調査では前回を下回った(図表4参照)。診療報酬改定が影響しているのか、定期的な訪問診療の患者数が減っている。一方、患者の求めに応じて訪問する往診の件数は伸びている。

改定での締め付けがあったとはいえ、高齢者が今後もまだ増え続け、その受け皿として在宅医療が推進されることは間違いないだろう。将来的に患者数としては横ばいになるのか、一時的な踊り場で増え続けるのか、次回調査に注目したい。(『月刊医療経営士』2022年9月号)

図表3 推計外来患者数

出典:令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(厚生労働省)

図表4 在宅医療を受けた推計外来患者数

出典:令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(厚生労働省)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

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