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時期改定で注目したい
感染症対策と外来機能の再編

24年度改定では病床機能報告と診療報酬がリンクする可能性あり
外来機能報告の行方を注視するとともに病床機能の戦略的な見直しも考える必要がある

感染対策向上加算で理想的な感染症体制の構築

2022年度診療報酬改定の個別改定項目(短冊)が発表された。本誌面ですべての内容を扱うことは難しいが、筆者が注目している2つを取り上げる。
1つは重点課題になっている「感染対策」についてである。執筆時点では点数がわかっていないため、どのくらいの収益インパクトになるかは不明だが、かなり大きな枠組みの変更が打ち出されている。その代表となる点数が「感染対策向上加算」である。
これまでの感染防止対策加算に代わる点数であるが、その中身はコロナ禍で経験した“大変だった”ことを点数で解決させてしまう、といったものとなっている。
同加算は診療所を対象とした外来感染対策向上加算と、病院を対象とした感染対策向上加算に分かれており、病院は加算1を最上位として加算3まである。

まずは最も要件が厳しい加算1を見てみる。加算1の病院を中心とし、加算2・3の病院に加え、外来感染対策向上加算の診療所に対して、感染症の発生状況や抗菌薬の使用状況等を管理することが求められている。
改定前の点数でも求められていた、現地調査や定期的なカンファレンスはもちろん、さらに新興感染症の発生等を想定した訓練の開催も要件化された。つまり、日常の抗菌薬の使用だけではなく、今回の新型コロナのような新興感染症に関することも加算1の病院には管理が求められる。
おそらく加算を取得できる病院は、地域の基幹となる病院であり、それなりの規模があるところになる。その基幹病院との連携先が、病院だけならまだしも診療所もとなると、かなり多くの医療機関が含まれることになる。
それらをすべて巻き込んでカンファレンスを行ったり、調査したりできるのだろうか。手を挙げる一部の医療機関に選別されてしまうと、体制を整えたいのに管理する加算1の病院がない、ということにもなりかねない。
管理の方法として地元医師会との連携も記載されており、地域によっては医師会が中心となることも考えられる。病院を併設している医師会ならともかく、規模が小さいところも多数ある。そうしたところでは、運営するための人材や財源が必要になってくるだろう。診療報酬では担保されてないので、地域医療介護総合確保基金等で補てんされるのだろうか。
また、コロナ禍では、国や県が依頼する形で、検査や診療、入院を受けてくれる医療機関を大慌てで探しまわった。しかし、この加算ができたことで、対象となる医療機関は新興感染症患者の受け入れが求められる。
さらに受け入れ体制を有していることをホームページなどに公開することも要件となっている。この加算が機能し始めれば、今回のような新興感染症の発生が起こると、医療機関に受け入れを指示するだけで済むようになる。施設基準なので、受け入れを拒否するようなことがあれば、基準違反で返還を命じられることも考えられる。まさに国にとって都合のいい、理想的な体制を本加算によって実現できる。

ちなみに、加算1では感染症患者の受け入れが求められており、加算2では疑い患者の受け入れでも可、加算3と診療所は発熱患者の診療等の実施でも可となっている。それぞれの医療機関には年に複数回以上のカンファレンスが求められているので、医療機関同士が日常的密に連携していることが前提となる。そうすれば、突発的なことが起こっても加算1の病院を筆頭にうまく連携されるという算段であろう。

外来機能報告制度が診療報酬に影響する

今回の改定で、もう一つ大きな変化だと思われるのが、外来機能報告制度と診療報酬が結びついたことである。これまでの病床機能報告制度においては、報告している病床機能が高度急性期であろうと、急性期であろうと診療報酬にはなにも結びついていなかった。そのため、ある意味、どの病床機能に該当していても、実際の収益には影響がなかったと言える。
しかし、今回「紹介受診重点医療機関入院診療加算」をはじめいくつかの項目で、要件に「紹介受診重点医療機関」であることが明記された。つまり、外来機能報告制度において当該医療機関になれれば算定でき診療報酬が初めてできたわけである。
外来機能報告制度はNDBデータをもとに、重症な外来患者を診ているかどうかで紹介受診重点医療機関を決め、今後、対象病院のリストが提示される予定である。そのうえで、地域ごとの協議の場で検討し、紹介受診重点医療機関を決めていくことになる。

データ分析の結果、紹介受診重点医療機関の対象となる医療機関は問題なく認められるであろう。しかし、基幹病院を自負する急性期病院で、データの結果から対象とならない病院は、協議の場で訴えることも考えられる。もし、そこでこのような病院も認められるようになると、その病院は診療報酬上の加算等も算定できるようになる。このような枠組みが初めて導入された、ということが大きな変化である。
こうした前例ができたので、病床機能報告制度を診療報酬に絡めることも現実味が増してきたといえよう。たとえば、高度急性期があるところでないとICUを持てない、などという制度変更があり得るかもしれない。そうなると現在報告している機能をより戦略的に見直すところも相次ぐであろう。また、協議の場がそれだけの権限を持つことにもなるわけだ。

今回の改定の内容が、外来機能報告だけにとどまるのか、病床にまで広がるのか、今後の外来機能報告がどのようになっていくのだろうか。注目していきたい。(『月刊医療経営士』2022年3月号)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

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