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外来機能報告制度の骨子が固まる
いよいよ外来改革が本格的に始まる

医療の適正利用に向けた政策が着実に進められている
「地域医療の効率性を上げる」戦略の柱にはこの観点が重要だ

外来機能報告制度の内容

外来機能報告制度の骨格が固まった。「医療資源を重点的に活する外来」を定義し、協議の場で検討し、国民へ理解浸透させることとなった。
最も気になる医療資源を重点的に活用する外来の定義だが、①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来、②高額等の医療機器・設備を必要とする外来、③特定の領域に特化した機能を有する外来――の3つのうちいずれかの機能を有することとされた(図参照)。細部では疑問点もあるだろうが、大枠としては合意できる定義と言えよう。
病床機能報告は、病床を持つ医療機関だけだったが、外来機能報告は約9万6000ある無床診療所も対象となるので、報告方法についても簡素化の検討がなされた。
多くの項目はNDB(レセプトデータ)から分析がされることになり、改めてデータを報告する必要がなくなった。紹介率・逆紹介率や外来における人材配置など、一部報告が必要になるが、既存のデータを最大限活用することが考慮されている。この点については、外来機能報告制度に限らず、診療報酬改定の調査や各種報告についても、既存データの活用を積極的に進めてもらいたい。

協議が必要なケース

外来機能報告制度は2022年度から開始となる。病床機能報告の流れと同様に、10月末までに医療機関からの報告を受け、年内に取りまとめて、23年に協議の場を開催するとされている。
課題となるのが、①医療資源を重点的に活用する外来の基準に該当しながらも、役割を担わないという医療機関や、②逆に、基準に該当しないのに、役割を担いたいという医療機関がある場合であろう。
先行する病床機能報告において、現時点では診療報酬の施設基準等と報告される病床機能が直接リンクすることはない。
外来機能報告も同じであると考えれば、①のような基準に該当しているのに役割を担いたくないというインセンティブは生じないと考えられる。ただし、医療資源を重点的に活用する外来であると紹介状なしの定額負担が必須となるなど、診療報酬にリンクしてくると状況が変わってくるので注視したい。

②のケースは病院の“メンツ”のような話と考えられる。高度医療や基幹病院を自称しているが、実際のデータでは医療資源を重点的に活用する外来の基準に該当しなかった、というところ(その多くは病院の可能性が高い)が、該当しない理由を並べて、医療資源を重点的に活用する外来機能をもっていることを訴えてくる可能性はある。
この点についても、病床機能報告で高度急性期に該当しない報告をしても、おとがめがあるわけではなく、公に協議されるだけである。外来機能報告についても、強制的に誘導するというより、じわりじわりと自己の立ち位置を理解してもらう、というスタンスでゆっくりとした機能分化を図る制度となる可能性が高い。

実際の縛りは診療報酬

外来機能報告制度で医療機関の意見を聞きながらも、診療報酬で実態を評価していく形は変わらない。22年度の診療報酬改定でも、外来の機能分化を進めるための変更が予想される。たとえば、紹介状なしの患者からの定額負担については、最低金額を5000円から7000円に上げて、これまではその増収分は病院の収益となったが、増加分をレセプト請求金額から削減する、という仕組みが検討されている。
もし実現されると、金額が高いとクレームを受けながらも、保険による収入は減らされるという状況になりかねない。今後もこうした傾向は強くなると予想され、基幹病院の外来からかかりつけ医に逆紹介する流れは進んでいくだろう。これまでのところ、じわじわと逆紹介が進んできた感じであるが、今回の改定によるさらなる定額負担の値上げが実現されると患者動向が大きく変化するのか注視したい。

どうなるのかわからないのが、一定期間における反復使用ができるリフィル処方箋である。そもそもリフィル処方ができる患者は、本来は医療資源を重点的に活用する外来では診ずに逆紹介するべき対象ではないか。
基幹病院でもリフィル処方ができるようになると、どのような動きになるのであろうか。
また、影響が大きいと予想されているのが、診療所や小規模病院でかかりつけ医機能があるところだ。リフィル処方が外来患者の激減につながり、経営が維持できるのかといった不安の声も聞く。無限に反復使用ができるわけではないので、来院回数が減った分、患者が多すぎる時にはできない検査などをして、全身状態を把握し、かかりつけ医機能を果たしながらも、診療単価を上げていくのが望ましい姿であろう。
さらに、基幹病院から逆紹介してもらえるような活動も必要になるかもしれない。リフィル処方をしない、という選択肢もないわけではないが、近隣の医療機関でリフィル処方ができるようになると、利便性を求めた患者が流れていってしまう可能性もある。

外来機能報告制度と診療報酬の両軸で、数年先の外来機能が形づくられる。地域ごとの環境変化に応じ、外来の経営戦略を再考していきたい。(『月刊医療経営士』2022年2月号)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

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